人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

文字の大きさ
上 下
121 / 187
16章 想いの行方

4

しおりを挟む
ディリオンが言う。
「ひとまず、賠償金の支払い延期の手続きをしたが、それが払えないとなった場合、シャーロット殿下に王位を一時継承してもらう。これから、国王とセリーヌ王女に王位を放棄してもらうための理由を探そう」

不貞腐れていたギルバートが、復活して話に加わる。
「シャーロットのことだが、もう公に出してしまったのだ。このまま、というわけにもいかんだろう。離宮から、本宮へ居住を移すべきだと考えるが?」
「オレもそう思って、ディリオンに言ったんだけど、却下されたんだよ」

ギリっとディリオンがオレを睨む。
「貴様の隣はダメだと言っただけだ。本宮に移るのは構わない」
「それなら、わたしの母上の部屋はどうだろう。王弟である父上が亡くなって、母上は実家に帰っているが、部屋はすぐにでも使えるようになっているし、王弟一家の居住エリアは護衛もそれなりだぞ」

「そうだね。それが一番いいかもね。王子の隣は、離縁する時の障害になるかもしれないし」
フレッドが軽い調子で言う。
「なんで離縁前提なんだよ」
オレは突然出てきた離縁という言葉に反応した。

「だってさ、王子は正妃を娶るだろ? シャーロットちゃんはボナールを共和制にして返したら、もうランバラルドで側妃をやる必要はないんだし、そうしたらシャーロットちゃんの幸せのためには、離縁して、ちゃんと愛し愛されるところへ再婚するのが一番いいと思うよ?」
「だからって、離縁するとは限らないじゃないか。これから芽生えるものもあるかもしれないし」
「芽生えなかったら、後で困るのはシャーロットちゃんなんだよ。だから、寝室を一度も共にしない、白い結婚であることはアピールしとかないと」

がーん…。

人妻ではなく、オレの妻だったことがわかって、オレはちょっと浮き足立っていた。
それが、一気に冷水を浴びたようになった。

まだ、ちゃんと結婚もしていないのに、離縁……。

がっくりと、オレがうなだれている間に、シャーロットのこれからが決まっていった。

シャーロットには、本宮に移ってもらう。
ジュディの他に、専属侍女を付けるという話にはなった時に、真っ先に手を上げたのは、マリーだった。
どうしても城でシャーロットの世話をしたいと。
おまけに、専属護衛騎士を付ける話が出ると、今度はアーサーが名乗りを上げる。

最初は戦争当時に戦っていたことを気にしていたが、やはりシャーロットを護れるのは自分だと思い立ったそうだ。

パルフェはどうするのかと言うと、店じまいをするという。
オーナーのギルバートも、それで構わないと言っている。
店はまた戻ることもあるかもしれないので、建物は売らないことにした。
ただ、引越し準備や、城で雇う際の試験などを受けてもらうため、アーサーとマリーの登城は来週以降になりそうだ。
シャーロットの本宮への引越しもそれくらいを目処におこなうことにする。
来週なら、帰る来賓も多いので、なんとかなりそうだ。

そこまで話が纏まり、離宮からは解散となる。

みんなを外へ出し、最後に残ったオレはシャーロットに話しかける。
「シャーロット、シャーロットはみんなの意見に反論はなかったの? 無理してるところはない?」
シャーロットは心ここに在らずと言ったところか。
ぽーっと、みんなの後ろ姿を見ていた。
「シャーロット、大丈夫? 何か、今日決まったことで、嫌なことがあった?」
「あ、申し訳ありません。殿下。自分のことなのに、何かポンポンと決まってしまって、茫然としていました」
シャーロットはドアの内側から、畑の方を見る。
「もう、畑の世話もできませんのね」
「そうだね。もう、メイド服も着れなくなるね」
寂しそうにしている彼女に、かけられる言葉はなかった。

「でも、落ち着いたら、畑の方まで来れるようにはするから。他に何かあればいつでも言って」
「……ありがとうございます。ライリー殿下」

シャーロットは、寂しそうに少し笑った。



*****************

すみません。ちょっとモタモタする話が続きました。
明日からはシャーロット視点に移ります。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する

ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。 その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。 シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。 皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。 やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。 愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。 今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。 シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す― 一部タイトルを変更しました。

「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!

友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください。 そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。 政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。 しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。 それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。 よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。 泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。 もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。 全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。 そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。

辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。 隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。 私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。 辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。 本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。 辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。 辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。 それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか? そんな望みを抱いてしまいます。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定はゆるいです。  (言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)  ❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。  (出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈 
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので 結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

たとえ番でないとしても

豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」 「違います!」 私は叫ばずにはいられませんでした。 「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」 ──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。 ※1/4、短編→長編に変更しました。

処理中です...