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16章 想いの行方
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ディリオンが言う。
「ひとまず、賠償金の支払い延期の手続きをしたが、それが払えないとなった場合、シャーロット殿下に王位を一時継承してもらう。これから、国王とセリーヌ王女に王位を放棄してもらうための理由を探そう」
不貞腐れていたギルバートが、復活して話に加わる。
「シャーロットのことだが、もう公に出してしまったのだ。このまま、というわけにもいかんだろう。離宮から、本宮へ居住を移すべきだと考えるが?」
「オレもそう思って、ディリオンに言ったんだけど、却下されたんだよ」
ギリっとディリオンがオレを睨む。
「貴様の隣はダメだと言っただけだ。本宮に移るのは構わない」
「それなら、わたしの母上の部屋はどうだろう。王弟である父上が亡くなって、母上は実家に帰っているが、部屋はすぐにでも使えるようになっているし、王弟一家の居住エリアは護衛もそれなりだぞ」
「そうだね。それが一番いいかもね。王子の隣は、離縁する時の障害になるかもしれないし」
フレッドが軽い調子で言う。
「なんで離縁前提なんだよ」
オレは突然出てきた離縁という言葉に反応した。
「だってさ、王子は正妃を娶るだろ? シャーロットちゃんはボナールを共和制にして返したら、もうランバラルドで側妃をやる必要はないんだし、そうしたらシャーロットちゃんの幸せのためには、離縁して、ちゃんと愛し愛されるところへ再婚するのが一番いいと思うよ?」
「だからって、離縁するとは限らないじゃないか。これから芽生えるものもあるかもしれないし」
「芽生えなかったら、後で困るのはシャーロットちゃんなんだよ。だから、寝室を一度も共にしない、白い結婚であることはアピールしとかないと」
がーん…。
人妻ではなく、オレの妻だったことがわかって、オレはちょっと浮き足立っていた。
それが、一気に冷水を浴びたようになった。
まだ、ちゃんと結婚もしていないのに、離縁……。
がっくりと、オレがうなだれている間に、シャーロットのこれからが決まっていった。
シャーロットには、本宮に移ってもらう。
ジュディの他に、専属侍女を付けるという話にはなった時に、真っ先に手を上げたのは、マリーだった。
どうしても城でシャーロットの世話をしたいと。
おまけに、専属護衛騎士を付ける話が出ると、今度はアーサーが名乗りを上げる。
最初は戦争当時に戦っていたことを気にしていたが、やはりシャーロットを護れるのは自分だと思い立ったそうだ。
パルフェはどうするのかと言うと、店じまいをするという。
オーナーのギルバートも、それで構わないと言っている。
店はまた戻ることもあるかもしれないので、建物は売らないことにした。
ただ、引越し準備や、城で雇う際の試験などを受けてもらうため、アーサーとマリーの登城は来週以降になりそうだ。
シャーロットの本宮への引越しもそれくらいを目処におこなうことにする。
来週なら、帰る来賓も多いので、なんとかなりそうだ。
そこまで話が纏まり、離宮からは解散となる。
みんなを外へ出し、最後に残ったオレはシャーロットに話しかける。
「シャーロット、シャーロットはみんなの意見に反論はなかったの? 無理してるところはない?」
シャーロットは心ここに在らずと言ったところか。
ぽーっと、みんなの後ろ姿を見ていた。
「シャーロット、大丈夫? 何か、今日決まったことで、嫌なことがあった?」
「あ、申し訳ありません。殿下。自分のことなのに、何かポンポンと決まってしまって、茫然としていました」
シャーロットはドアの内側から、畑の方を見る。
「もう、畑の世話もできませんのね」
「そうだね。もう、メイド服も着れなくなるね」
寂しそうにしている彼女に、かけられる言葉はなかった。
「でも、落ち着いたら、畑の方まで来れるようにはするから。他に何かあればいつでも言って」
「……ありがとうございます。ライリー殿下」
シャーロットは、寂しそうに少し笑った。
*****************
すみません。ちょっとモタモタする話が続きました。
明日からはシャーロット視点に移ります。
「ひとまず、賠償金の支払い延期の手続きをしたが、それが払えないとなった場合、シャーロット殿下に王位を一時継承してもらう。これから、国王とセリーヌ王女に王位を放棄してもらうための理由を探そう」
不貞腐れていたギルバートが、復活して話に加わる。
「シャーロットのことだが、もう公に出してしまったのだ。このまま、というわけにもいかんだろう。離宮から、本宮へ居住を移すべきだと考えるが?」
「オレもそう思って、ディリオンに言ったんだけど、却下されたんだよ」
ギリっとディリオンがオレを睨む。
「貴様の隣はダメだと言っただけだ。本宮に移るのは構わない」
「それなら、わたしの母上の部屋はどうだろう。王弟である父上が亡くなって、母上は実家に帰っているが、部屋はすぐにでも使えるようになっているし、王弟一家の居住エリアは護衛もそれなりだぞ」
「そうだね。それが一番いいかもね。王子の隣は、離縁する時の障害になるかもしれないし」
フレッドが軽い調子で言う。
「なんで離縁前提なんだよ」
オレは突然出てきた離縁という言葉に反応した。
「だってさ、王子は正妃を娶るだろ? シャーロットちゃんはボナールを共和制にして返したら、もうランバラルドで側妃をやる必要はないんだし、そうしたらシャーロットちゃんの幸せのためには、離縁して、ちゃんと愛し愛されるところへ再婚するのが一番いいと思うよ?」
「だからって、離縁するとは限らないじゃないか。これから芽生えるものもあるかもしれないし」
「芽生えなかったら、後で困るのはシャーロットちゃんなんだよ。だから、寝室を一度も共にしない、白い結婚であることはアピールしとかないと」
がーん…。
人妻ではなく、オレの妻だったことがわかって、オレはちょっと浮き足立っていた。
それが、一気に冷水を浴びたようになった。
まだ、ちゃんと結婚もしていないのに、離縁……。
がっくりと、オレがうなだれている間に、シャーロットのこれからが決まっていった。
シャーロットには、本宮に移ってもらう。
ジュディの他に、専属侍女を付けるという話にはなった時に、真っ先に手を上げたのは、マリーだった。
どうしても城でシャーロットの世話をしたいと。
おまけに、専属護衛騎士を付ける話が出ると、今度はアーサーが名乗りを上げる。
最初は戦争当時に戦っていたことを気にしていたが、やはりシャーロットを護れるのは自分だと思い立ったそうだ。
パルフェはどうするのかと言うと、店じまいをするという。
オーナーのギルバートも、それで構わないと言っている。
店はまた戻ることもあるかもしれないので、建物は売らないことにした。
ただ、引越し準備や、城で雇う際の試験などを受けてもらうため、アーサーとマリーの登城は来週以降になりそうだ。
シャーロットの本宮への引越しもそれくらいを目処におこなうことにする。
来週なら、帰る来賓も多いので、なんとかなりそうだ。
そこまで話が纏まり、離宮からは解散となる。
みんなを外へ出し、最後に残ったオレはシャーロットに話しかける。
「シャーロット、シャーロットはみんなの意見に反論はなかったの? 無理してるところはない?」
シャーロットは心ここに在らずと言ったところか。
ぽーっと、みんなの後ろ姿を見ていた。
「シャーロット、大丈夫? 何か、今日決まったことで、嫌なことがあった?」
「あ、申し訳ありません。殿下。自分のことなのに、何かポンポンと決まってしまって、茫然としていました」
シャーロットはドアの内側から、畑の方を見る。
「もう、畑の世話もできませんのね」
「そうだね。もう、メイド服も着れなくなるね」
寂しそうにしている彼女に、かけられる言葉はなかった。
「でも、落ち着いたら、畑の方まで来れるようにはするから。他に何かあればいつでも言って」
「……ありがとうございます。ライリー殿下」
シャーロットは、寂しそうに少し笑った。
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すみません。ちょっとモタモタする話が続きました。
明日からはシャーロット視点に移ります。
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