98 / 187
13章 告白
3
しおりを挟む
支配人さんが出て行って、2人きりになったところで、私はライに言った。
「ライ、申し訳ないけれど、帰ってもいいかしら?持ち合わせがないの。こんなところでお食事なんてできるような金額は持っていないのよ」
ライは目を大きくしてこちらを見る。
「何言ってんだ?ロッテに払わせる訳がないじゃないか。頼むから帰るなんて言わないでくれよ」
「だって、こんな高いところ…。それに、ごちそうになる理由がないわ」
「えぇー…。フレッドのやつ、女の子は奢られたり物を買ってもらうのが好きだって言ってたのに…」
「え?何?聞こえないわ」
「いや、オレが誘って付き合ってもらってるんだから、ロッテからお金をもらおうとは思ってないよ」
「そんなこと言われても…」
「この間、パウンドケーキをもらったろ?そのお礼だと思ってくれればいいから」
パウンドケーキは1050ランで売っているものなのよ…。こんなところの食事と釣り合うわけがないのだけれど、ひとまず、お言葉に甘えることにした。
だって、お金持っていないんですもの。
そして、前菜から始まり、スープ、サラダとコース料理が始まった。
「ところでさ、ロッテからもらったパウンドケーキ、最近仕事場で見たんだけど、パルフェでもう売ってるの?」
「ええ。持って行ける時に3本だけ卸しているの。すぐ売れちゃうみたいだから、あんまり買えないって言われているけれど」
「そうなんだ。友人が無理を言って仕事場の女の子からもらったみたいでね、買って返したい、あわよくば自分ももう一度食べたいって言ってるんだけど、そんなに少ないんじゃ無理かな」
「でしたら、また焼きますよ?」
「ほんと?あいつも喜ぶよ」
和やかに食事は進んでいく。
「ロッテは、出身はどこなの?アーサーと同じ、ボナール?」
くっ、と咽せそうになるが、なんとか持ち堪える。
「どうして、ボナールだと思うの?」
「んー、オレたちが会った森って、ボナールとの国境だろ?なんとなく、あの日に国境を越えて移住してきたのかなって思って」
大丈夫。アーサーも言っていたわ。
入国許可証はちゃんとした物だから、心配することないって。
「ええ、そうよ。ボナールから移住してきたの」
「この厳しい時期に、よく入国できたね」
「お、お店を出すつもりで許可を取っていたから、かしらね」
「ああ、そんなにずっと前からこっちにくる予定だったのか」
「ええ、そうなのよ」
こくんとスープが喉を通るけど、全然味がしない。
「ボナールでは、何をやっていたの?」
「え、えっと、お城で働いていたわ」
「マリーとジュディはお城の侍女っぽいよね。ロッテもなの?でも、マリーと家族って訳じゃないよね?」
今日はライはどうしたんだろう。
根掘り葉掘り聞かれて…。動揺は隠せているかしら。
「私は両親が早くに亡くなったので、マリーに育てられたの。たから、血の繋がりはなくてもマリーは家族よ。アーサーはいいお兄さんだし、ジュディはいいお姉さんだわ」
「………そっか」
ライはお皿から顔を上げて、にっこりと笑う。
料理はメインまで食べ終わっていた。
「ロッテはすごく綺麗に食事をするね。まるで貴族のお姫様みたいだ」
「ライ、申し訳ないけれど、帰ってもいいかしら?持ち合わせがないの。こんなところでお食事なんてできるような金額は持っていないのよ」
ライは目を大きくしてこちらを見る。
「何言ってんだ?ロッテに払わせる訳がないじゃないか。頼むから帰るなんて言わないでくれよ」
「だって、こんな高いところ…。それに、ごちそうになる理由がないわ」
「えぇー…。フレッドのやつ、女の子は奢られたり物を買ってもらうのが好きだって言ってたのに…」
「え?何?聞こえないわ」
「いや、オレが誘って付き合ってもらってるんだから、ロッテからお金をもらおうとは思ってないよ」
「そんなこと言われても…」
「この間、パウンドケーキをもらったろ?そのお礼だと思ってくれればいいから」
パウンドケーキは1050ランで売っているものなのよ…。こんなところの食事と釣り合うわけがないのだけれど、ひとまず、お言葉に甘えることにした。
だって、お金持っていないんですもの。
そして、前菜から始まり、スープ、サラダとコース料理が始まった。
「ところでさ、ロッテからもらったパウンドケーキ、最近仕事場で見たんだけど、パルフェでもう売ってるの?」
「ええ。持って行ける時に3本だけ卸しているの。すぐ売れちゃうみたいだから、あんまり買えないって言われているけれど」
「そうなんだ。友人が無理を言って仕事場の女の子からもらったみたいでね、買って返したい、あわよくば自分ももう一度食べたいって言ってるんだけど、そんなに少ないんじゃ無理かな」
「でしたら、また焼きますよ?」
「ほんと?あいつも喜ぶよ」
和やかに食事は進んでいく。
「ロッテは、出身はどこなの?アーサーと同じ、ボナール?」
くっ、と咽せそうになるが、なんとか持ち堪える。
「どうして、ボナールだと思うの?」
「んー、オレたちが会った森って、ボナールとの国境だろ?なんとなく、あの日に国境を越えて移住してきたのかなって思って」
大丈夫。アーサーも言っていたわ。
入国許可証はちゃんとした物だから、心配することないって。
「ええ、そうよ。ボナールから移住してきたの」
「この厳しい時期に、よく入国できたね」
「お、お店を出すつもりで許可を取っていたから、かしらね」
「ああ、そんなにずっと前からこっちにくる予定だったのか」
「ええ、そうなのよ」
こくんとスープが喉を通るけど、全然味がしない。
「ボナールでは、何をやっていたの?」
「え、えっと、お城で働いていたわ」
「マリーとジュディはお城の侍女っぽいよね。ロッテもなの?でも、マリーと家族って訳じゃないよね?」
今日はライはどうしたんだろう。
根掘り葉掘り聞かれて…。動揺は隠せているかしら。
「私は両親が早くに亡くなったので、マリーに育てられたの。たから、血の繋がりはなくてもマリーは家族よ。アーサーはいいお兄さんだし、ジュディはいいお姉さんだわ」
「………そっか」
ライはお皿から顔を上げて、にっこりと笑う。
料理はメインまで食べ終わっていた。
「ロッテはすごく綺麗に食事をするね。まるで貴族のお姫様みたいだ」
10
お気に入りに追加
3,463
あなたにおすすめの小説
誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。
salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。
6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。
*なろう・pixivにも掲載しています。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
お飾り王妃の受難〜陛下からの溺愛?!ちょっと意味がわからないのですが〜
湊未来
恋愛
王に見捨てられた王妃。それが、貴族社会の認識だった。
二脚並べられた玉座に座る王と王妃は、微笑み合う事も、会話を交わす事もなければ、目を合わす事すらしない。そんな二人の様子に王妃ティアナは、いつしか『お飾り王妃』と呼ばれるようになっていた。
そんな中、暗躍する貴族達。彼らの行動は徐々にエスカレートして行き、王妃が参加する夜会であろうとお構いなしに娘を王に、けしかける。
王の周りに沢山の美しい蝶が群がる様子を見つめ、ティアナは考えていた。
『よっしゃ‼︎ お飾り王妃なら、何したって良いわよね。だって、私の存在は空気みたいなものだから………』
1年後……
王宮で働く侍女達の間で囁かれるある噂。
『王妃の間には恋のキューピッドがいる』
王妃付き侍女の間に届けられる大量の手紙を前に侍女頭は頭を抱えていた。
「ティアナ様!この手紙の山どうするんですか⁈ 流石に、さばききれませんよ‼︎」
「まぁまぁ。そんなに怒らないの。皆様、色々とお悩みがあるようだし、昔も今も恋愛事は有益な情報を得る糧よ。あと、ここでは王妃ティアナではなく新人侍女ティナでしょ」
……あら?
この筆跡、陛下のものではなくって?
まさかね……
一通の手紙から始まる恋物語。いや、違う……
お飾り王妃による無自覚プチざまぁが始まる。
愛しい王妃を前にすると無口になってしまう王と、お飾り王妃と勘違いしたティアナのすれ違いラブコメディ&ミステリー
【完結】わたしはお飾りの妻らしい。 〜16歳で継母になりました〜
たろ
恋愛
結婚して半年。
わたしはこの家には必要がない。
政略結婚。
愛は何処にもない。
要らないわたしを家から追い出したくて無理矢理結婚させたお義母様。
お義母様のご機嫌を悪くさせたくなくて、わたしを嫁に出したお父様。
とりあえず「嫁」という立場が欲しかった旦那様。
そうしてわたしは旦那様の「嫁」になった。
旦那様には愛する人がいる。
わたしはお飾りの妻。
せっかくのんびり暮らすのだから、好きなことだけさせてもらいますね。
愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる