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12章 告白への道のり
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「ところで、ロッテちゃん。次に町に来るのはいつ?」
ごちそうさまをしたところで、ロジャーさんが私に問いかけた。
「そうですね。今日は帰ってからではクッキーを焼けないので、明日焼いて明後日ですかね」
「そう。ライにも言っておくよ。これからパルフェでしょ?気をつけて行ってらっしゃい」
笑顔でそう言ってくれるロジャーさんにランチ代を払う。
クッキーをもらったからお代はいらないと言うロジャーさんに、自分で働いたお金だからきちんと払いたいと言って、ちゃんとお金を受け取ってもらった。
その後、パルフェに行くとアーサーとマリーは忙しそうにしていて、私もがんばってお手伝いをした。
午後のお茶の時間が終わると、やっと一息つける。
パンの残りもわずかとなったので、アーサーにレジを任せて、私とマリーは住居の方に移動してダイニングで2人でお茶を飲むことにした。
私はクッキーの他にパウンドケーキも焼いて来ていて、それを切り分けて2人分をテーブルに置く。
「残りはアーサーと、明日来るジュディの分よ」
「アーサーも喜びます。姫様の作るものをいただくと、元気になれますわ。姫様の思いが籠っているこらですかねぇ」
マリーが入れてくれた紅茶を飲むと、ふーっと息を吐いた。
「マリーの紅茶も私にとっては元気の源よ」
私がそう言うと、マリーは嬉しそうに笑った。
「こんなこと言ってはいけないのでしょうが、マリーは幸せでございます。姫様がこんなに笑っていてくださって。本当はボナールのお城で、こんな風に笑っていただけたら良かったのですが…」
「いいのよ。ランバラルドに来て、人質生活は辛いものになると思っていたけれど、みんな親切で、本当に幸せだわ」
最近、マリーは私が働くことに文句を言わなくなった。
私がくるくると店内を忙しそうに回っていても、微笑ましく見ているだけだ。
「私の娘はジュディだけで、姫様は大事な主人のはずですのに、もう一人娘ができて、みんなで一緒に暮らしているような、そんな幸せな錯覚をしてしまいます。姫様の侍女としては、王宮での地位を確立させるよう、頑張らねばいけないところなのに」
「もう、そんなことは考えないで。王女として過ごすより、この方が私も幸せだわ。そうそう。フレッド様から聞いた話なのだけれど、ボナールが共和制になるかもしれないんですって。それならば、遅かれ早かれ王女ではなくなっていたはずだから、たいした違いはないわ」
「…共和制に…」
マリーは眉をひそめて手元のカップを見つめた。
「まあ、でもまだ決まったわけじゃないのよ?ボナールとランバラルドでいろいろな取り決めをしないといけないようだし」
マリーの様子に、慌てて言い訳をした。
だって、何かを考えこんでしまっているようだったから…。
マリーは私の目を見て、真剣な表情で言う。
「姫様、まだマリーはお城に上がれないんですかね。早く姫様のお側についていたいのですが…」
「ふふ。マリーは心配性ね。大丈夫よ、私は。それに共和制になったら、私が人質でいる必要がなくなるかもしれないの。そうしたら、町で一緒に暮らしましょう。それもきっと楽しいわ」
「…そうですね。平和に王制が廃止されれば、そんな未来もありますわね。でも、姫様」
「ん?なあに?」
私がマリーの方を向くと、マリーは私の目を見つめ、私の両手を自分の手で包んだ。
「何があっても、マリーは姫様の味方です。いざという時には必ず駆けつけます。ですから、姫様は何かお困りのことがございましたら、些細なことでもマリーにご相談ください。いいですか?些細なことでも」ですよ。
「大丈夫よ、マリー。必ずマリーを頼るから」
そう言って、私もマリーの手を握り返した。
ごちそうさまをしたところで、ロジャーさんが私に問いかけた。
「そうですね。今日は帰ってからではクッキーを焼けないので、明日焼いて明後日ですかね」
「そう。ライにも言っておくよ。これからパルフェでしょ?気をつけて行ってらっしゃい」
笑顔でそう言ってくれるロジャーさんにランチ代を払う。
クッキーをもらったからお代はいらないと言うロジャーさんに、自分で働いたお金だからきちんと払いたいと言って、ちゃんとお金を受け取ってもらった。
その後、パルフェに行くとアーサーとマリーは忙しそうにしていて、私もがんばってお手伝いをした。
午後のお茶の時間が終わると、やっと一息つける。
パンの残りもわずかとなったので、アーサーにレジを任せて、私とマリーは住居の方に移動してダイニングで2人でお茶を飲むことにした。
私はクッキーの他にパウンドケーキも焼いて来ていて、それを切り分けて2人分をテーブルに置く。
「残りはアーサーと、明日来るジュディの分よ」
「アーサーも喜びます。姫様の作るものをいただくと、元気になれますわ。姫様の思いが籠っているこらですかねぇ」
マリーが入れてくれた紅茶を飲むと、ふーっと息を吐いた。
「マリーの紅茶も私にとっては元気の源よ」
私がそう言うと、マリーは嬉しそうに笑った。
「こんなこと言ってはいけないのでしょうが、マリーは幸せでございます。姫様がこんなに笑っていてくださって。本当はボナールのお城で、こんな風に笑っていただけたら良かったのですが…」
「いいのよ。ランバラルドに来て、人質生活は辛いものになると思っていたけれど、みんな親切で、本当に幸せだわ」
最近、マリーは私が働くことに文句を言わなくなった。
私がくるくると店内を忙しそうに回っていても、微笑ましく見ているだけだ。
「私の娘はジュディだけで、姫様は大事な主人のはずですのに、もう一人娘ができて、みんなで一緒に暮らしているような、そんな幸せな錯覚をしてしまいます。姫様の侍女としては、王宮での地位を確立させるよう、頑張らねばいけないところなのに」
「もう、そんなことは考えないで。王女として過ごすより、この方が私も幸せだわ。そうそう。フレッド様から聞いた話なのだけれど、ボナールが共和制になるかもしれないんですって。それならば、遅かれ早かれ王女ではなくなっていたはずだから、たいした違いはないわ」
「…共和制に…」
マリーは眉をひそめて手元のカップを見つめた。
「まあ、でもまだ決まったわけじゃないのよ?ボナールとランバラルドでいろいろな取り決めをしないといけないようだし」
マリーの様子に、慌てて言い訳をした。
だって、何かを考えこんでしまっているようだったから…。
マリーは私の目を見て、真剣な表情で言う。
「姫様、まだマリーはお城に上がれないんですかね。早く姫様のお側についていたいのですが…」
「ふふ。マリーは心配性ね。大丈夫よ、私は。それに共和制になったら、私が人質でいる必要がなくなるかもしれないの。そうしたら、町で一緒に暮らしましょう。それもきっと楽しいわ」
「…そうですね。平和に王制が廃止されれば、そんな未来もありますわね。でも、姫様」
「ん?なあに?」
私がマリーの方を向くと、マリーは私の目を見つめ、私の両手を自分の手で包んだ。
「何があっても、マリーは姫様の味方です。いざという時には必ず駆けつけます。ですから、姫様は何かお困りのことがございましたら、些細なことでもマリーにご相談ください。いいですか?些細なことでも」ですよ。
「大丈夫よ、マリー。必ずマリーを頼るから」
そう言って、私もマリーの手を握り返した。
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