48 / 187
7章 人質姫のもう一つの生活
6
しおりを挟む
「えっ、本当ですか!?」
私は立ち上がった。
だって、外ですよ?
あんなに焦がれた外出ですよ?
興奮しないわけがない。
あ、でも…。
「ダメです。ギルバート様。お気持ちは有り難いですが、私は人質なので勝手に出歩けません…」
しょんぼりと言うと、ギルバート様は眉根を寄せた。
「お前に逃げる気はないのだろう。それなら問題ない。きちんとここに戻ってくると約束するなら出してやろう。だいたい、お前がいなくなったらわたしが困る。誰が私の茶菓子を作るのだ」
そこまで私が作るお菓子を気に入っていただけて嬉しいです。
「姫様っ!!」
いつもは口を出さずに控えていたジュディが、私に抱きついた。
「よかったですね、いつもあんなに外に出たいと言っていた、あの外に出られるなんて…!」
そしてギルバート様の足元へ跪く。
ジュディがギルバート様に触れることは許されない。
だから、ギルバート様の目の前で跪き、こうべを垂れる。
「ギルバート様、お声をお掛けすることをお許しください。姫様をお気遣いくださり、ありがとうございます。いつも離宮にきて、姫様に声をかけていただき、以前の姫様は大変お寂しいようでした。ギルバート様がきてお話相手になってくださって、本当に感謝しています…!」
いつも一緒にいるジュディは知っていたんだろう。
私が思っていたことを。
ずっと、外に出たかった。
自由に歩き回りたかった。
塔の上から眺める外は、とても楽しそうで、でも私の手には届かなくて。
諦めるしかなかった自由。
「よい。ジュディ、顔を上げてくれ。わたしは自分のしたいようにしているだけだ。だから、何も気にする必要はない」
ギルバート様は屈んでジュディの手を取ってくれた。
「ジュディ。わたしの友であるシャーロットに心から仕えてくれてありがとう。わたしからも礼を言う」
王位継承権第二位にある、高貴なお方が私のことを思って、侍女であるジュディの手を取る。
それは、本当に特別な意味のあることだった。
「シャーロット、お前も泣くな。お前の味方はちゃんといる。安心して過ごすとよい」
その言葉を聞いて自分の目に手をあてると、目元が濡れていた。
あんまり嬉しくて、知らぬうちに涙が溢れてきたようだった。
「ギルバート様、ジュディ、私はお二人のような方と知り合えて、本当に幸せです」
次々に涙が溢れ出てきたけれど、私は二人に微笑んだ。
「それで、シャーロットはどこへ行きたいのだ?」
「町です!お買い物がしてみたいです!!」
ぐっと握りこぶしを作って、私は熱く語る。
「かわいい小物や甘いお菓子。新鮮な果物にお花屋さん。興味は尽きません」
「町か。どこでもいいのなら明日にでもいけるぞ。すぐそこ、城下町ならあっという間に着く。では、明日、お昼過ぎに迎えに来る準備をして待っておけ」
「はいっ!」
楽しみで楽しみで、私は元気に返事をしたが…。
「でも、ギルバート様。町には何を着て行ったらいいのでしょうか?」
「こっちで用意してやる。いつものメイド服で来い」
「メイド服ですか…」
ジュディと顔を見合わせる。
その様子に気分を悪くしたギルバート様が言う。
「ちゃんと用意してやると言ったであろう。わたしと一緒に城から出るのに、ドレスを着せたら目立つし、町民の服装だとどうして平民が城から出てくるのか門番に疑われる。わたし付きの侍女として行くのがちょうどいい」
ギルバート様の言葉に不安になる。
「抜け出すのは人質としてどうでしょうか…」
「わたしが知っているのだから、抜け出すわけではない。王位継承権第二位のわたしが許可を出している。それでも不安なら、きちんと公爵としての書簡を発行するぞ。公爵印章付きの外出許可証を」
結局、ギルバート様がご不在の時に何かあった場合のことを考えて、書簡は発行してもらうことにした。
日帰りであれば、国内どこに外出してもいいという公爵お墨付きの書簡だ。
ギルバート様は、明日、書簡を発行してから、離宮へ迎えに来てくれるという。
とても楽しみ。
私は立ち上がった。
だって、外ですよ?
あんなに焦がれた外出ですよ?
興奮しないわけがない。
あ、でも…。
「ダメです。ギルバート様。お気持ちは有り難いですが、私は人質なので勝手に出歩けません…」
しょんぼりと言うと、ギルバート様は眉根を寄せた。
「お前に逃げる気はないのだろう。それなら問題ない。きちんとここに戻ってくると約束するなら出してやろう。だいたい、お前がいなくなったらわたしが困る。誰が私の茶菓子を作るのだ」
そこまで私が作るお菓子を気に入っていただけて嬉しいです。
「姫様っ!!」
いつもは口を出さずに控えていたジュディが、私に抱きついた。
「よかったですね、いつもあんなに外に出たいと言っていた、あの外に出られるなんて…!」
そしてギルバート様の足元へ跪く。
ジュディがギルバート様に触れることは許されない。
だから、ギルバート様の目の前で跪き、こうべを垂れる。
「ギルバート様、お声をお掛けすることをお許しください。姫様をお気遣いくださり、ありがとうございます。いつも離宮にきて、姫様に声をかけていただき、以前の姫様は大変お寂しいようでした。ギルバート様がきてお話相手になってくださって、本当に感謝しています…!」
いつも一緒にいるジュディは知っていたんだろう。
私が思っていたことを。
ずっと、外に出たかった。
自由に歩き回りたかった。
塔の上から眺める外は、とても楽しそうで、でも私の手には届かなくて。
諦めるしかなかった自由。
「よい。ジュディ、顔を上げてくれ。わたしは自分のしたいようにしているだけだ。だから、何も気にする必要はない」
ギルバート様は屈んでジュディの手を取ってくれた。
「ジュディ。わたしの友であるシャーロットに心から仕えてくれてありがとう。わたしからも礼を言う」
王位継承権第二位にある、高貴なお方が私のことを思って、侍女であるジュディの手を取る。
それは、本当に特別な意味のあることだった。
「シャーロット、お前も泣くな。お前の味方はちゃんといる。安心して過ごすとよい」
その言葉を聞いて自分の目に手をあてると、目元が濡れていた。
あんまり嬉しくて、知らぬうちに涙が溢れてきたようだった。
「ギルバート様、ジュディ、私はお二人のような方と知り合えて、本当に幸せです」
次々に涙が溢れ出てきたけれど、私は二人に微笑んだ。
「それで、シャーロットはどこへ行きたいのだ?」
「町です!お買い物がしてみたいです!!」
ぐっと握りこぶしを作って、私は熱く語る。
「かわいい小物や甘いお菓子。新鮮な果物にお花屋さん。興味は尽きません」
「町か。どこでもいいのなら明日にでもいけるぞ。すぐそこ、城下町ならあっという間に着く。では、明日、お昼過ぎに迎えに来る準備をして待っておけ」
「はいっ!」
楽しみで楽しみで、私は元気に返事をしたが…。
「でも、ギルバート様。町には何を着て行ったらいいのでしょうか?」
「こっちで用意してやる。いつものメイド服で来い」
「メイド服ですか…」
ジュディと顔を見合わせる。
その様子に気分を悪くしたギルバート様が言う。
「ちゃんと用意してやると言ったであろう。わたしと一緒に城から出るのに、ドレスを着せたら目立つし、町民の服装だとどうして平民が城から出てくるのか門番に疑われる。わたし付きの侍女として行くのがちょうどいい」
ギルバート様の言葉に不安になる。
「抜け出すのは人質としてどうでしょうか…」
「わたしが知っているのだから、抜け出すわけではない。王位継承権第二位のわたしが許可を出している。それでも不安なら、きちんと公爵としての書簡を発行するぞ。公爵印章付きの外出許可証を」
結局、ギルバート様がご不在の時に何かあった場合のことを考えて、書簡は発行してもらうことにした。
日帰りであれば、国内どこに外出してもいいという公爵お墨付きの書簡だ。
ギルバート様は、明日、書簡を発行してから、離宮へ迎えに来てくれるという。
とても楽しみ。
10
お気に入りに追加
3,464
あなたにおすすめの小説
追放聖女と元英雄のはぐれ旅 ~国、家族、仲間、全てを失った二人はどこへ行く?~
日之影ソラ
恋愛
小説家になろうにて先行配信中!
緑豊かな自然に囲まれたエストワール王国。
様々な種族が共存するこの国では、光の精霊の契約者を『聖女』と呼んでいた。
聖女となるのは王族の家系。
母親から引き継ぎ、新たな聖女となった王女ユイノアは、冒険譚に憧れる女の子だった。
いつか大きくなったら、自分も世界中を旅してみたい。
そんな夢を抱いていた彼女は、旅人のユーレアスと出会い、旅への憧れを強くする。
しかし、彼女に与えられた運命は残酷だった。
母の死によって変わってしまった父と、それを良しとしなかった国民。
クーデターにより国は崩壊し、彼女は一人ぼっちになってしまう。
そして彼女は再び彼と出会った。
全てを失った少女と、かつて世界を救った英雄。
一人と一人が交わり始まった二人旅は、はたしてどこへたどり着くのだろうか?
書籍約一冊分のボリュームです。
第一部完結まで予約投稿済み。
ぜひぜひ読んで楽しんでくださいね。
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
辺境伯へ嫁ぎます。
アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。
隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。
私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。
辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。
本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。
辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。
辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。
それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか?
そんな望みを抱いてしまいます。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 設定はゆるいです。
(言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)
❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。
(出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
真実の愛は、誰のもの?
ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」
妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。
だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。
ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。
「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」
「……ロマンチック、ですか……?」
「そう。二人ともに、想い出に残るような」
それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる