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第3章 帝都へ
絡まれるのはお約束
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モヤモヤしたまま2日間。
夜は野宿をして次の町を目指していた。
相変わらず二人は歩きながら話している。
たまに私にもアンナさんが話しかけてくれるけど、生返事を返してしまうので話が続かなかった。
3日目の昼前、次の町に着く。
「おー、変わらないね!この町も」
ダラムの町では、少し商売をしていきたいとのことだったので、今日はここで泊まることになった。
商売をしようと歩き出そうとしたアンナさんが、すぐに足を止める。
「んー、どうしようかな」
「どうした?」
「いや、そのロランに預けている袋を手放したく無いんだよね‥‥かと言って一緒に来てもらうのも‥‥」
確かに商品だから手放せないよね。
だったら私の収納魔法の中に入れてしまえば、私が攫われない限り安全なんだけど。
そう言うべきかどうかで悩んでいると、ロランがこう話しかけた。
「いや。俺が着いていこう。セリーはそれでも良いか?」
「‥‥はい」
ロランが着いていくと言うのなら、従うまでだ。
私まで着いていくとお邪魔になりそうなので、宿を取る事を伝える。
「ありがとう、セリーちゃん!宿屋は今から行くところの近くにあるから、案内するね!」
いつのまにかちゃん付けで呼ばれていることに気がつく。
が、それには触れず、私はお礼を言って宿屋まで案内をしてもらった。
宿屋はシャルモンの街と同じく、一階が食堂で二階以上が客室だった。
無事に客室は3つ取れたので、私は食堂の一角に腰を下ろした。
昼前なので、ちらほらお客の入りが多くなってくる。
ただ座っているのは悪いな、と思ったので、ここの名産と言われているお茶を頼んだ。
値段を見ずに頼んだのが悪かったのか、目の前にはティーポットとカップが置かれる。
それをちびちび飲みながら、騒がしくなり始めた食堂や通り道を見つめていた。その時。
「そこの嬢ちゃん、暇してるのか?」
どこからか声が聞こえた気がしたが、私の事では無いだろう。
もし人を呼ぶなら、前に来て顔を見せて呼ぶはずだ。
「おい、嬢ちゃん。聞いてるのか!?」
まだ「嬢ちゃん」と呼ばれている人は、返事をしていないらしい。
知り合いなら早く返事をしてあげた方が良いと思うのだけど。
そう思った瞬間、いきなり肩を掴まれた。
驚いた私が振り返ると、目の前にはガタイの大きい、けれども見たことのない人がいる。
魔物相手なら躊躇しない私も、流石に人相手に暴力を振ることはない。
だからこうした時にどうしたら良いか分からず、固まってしまった。
「嬢ちゃん、見た所一人だろ。暇なら俺たちと遊びに行こうぜ」
私の意見を聞くこともなく、その男は私の腕を掴む。
そして気づくと、男の後ろには何人もガタイのいい男たちがおり、その顔には浅ましさが垣間見える。
着いて行ってはいけない、私の頭の中ではそう判断できるが、どう対処すれば良いのか分からない。
周りを見ても、皆心配そうな顔をしてくれてはいるけれども、見て見ぬふりをしている。
お兄様が言っていた。世の中には善い人と悪い人と普通の人がいる。
普通の人は誰かが困っていても素通りできる人、もしくは助けたいけど力がない人‥‥こう言う人が大半だよ。
きっと今がその状態だ。ここには悪い人と普通の人しかいない。
怖くて涙が出そうになる。涙を堪えていると、腕を掴んでいる男が腕に力を込めて私を引っ張り上げる。
その勢いで私の顔は上へ持ち上がり、すぐに男の空いている手が私の顔を掴んだ。
気づいた時には、男の顔が目の前にある。
「おうおう、こりゃ美人だな。おい、てめえら。この嬢ちゃんは遊びがいがあるぜ」
後ろで騒ぎ出す仲間たち。
この状態だと殴るにも殴れない。
そして男が私から顔を離し、立たせようと腕を引っ張る。
その瞬間、私を捕まえていた手が離れ、私は思わず床にへたり込んだ。
夜は野宿をして次の町を目指していた。
相変わらず二人は歩きながら話している。
たまに私にもアンナさんが話しかけてくれるけど、生返事を返してしまうので話が続かなかった。
3日目の昼前、次の町に着く。
「おー、変わらないね!この町も」
ダラムの町では、少し商売をしていきたいとのことだったので、今日はここで泊まることになった。
商売をしようと歩き出そうとしたアンナさんが、すぐに足を止める。
「んー、どうしようかな」
「どうした?」
「いや、そのロランに預けている袋を手放したく無いんだよね‥‥かと言って一緒に来てもらうのも‥‥」
確かに商品だから手放せないよね。
だったら私の収納魔法の中に入れてしまえば、私が攫われない限り安全なんだけど。
そう言うべきかどうかで悩んでいると、ロランがこう話しかけた。
「いや。俺が着いていこう。セリーはそれでも良いか?」
「‥‥はい」
ロランが着いていくと言うのなら、従うまでだ。
私まで着いていくとお邪魔になりそうなので、宿を取る事を伝える。
「ありがとう、セリーちゃん!宿屋は今から行くところの近くにあるから、案内するね!」
いつのまにかちゃん付けで呼ばれていることに気がつく。
が、それには触れず、私はお礼を言って宿屋まで案内をしてもらった。
宿屋はシャルモンの街と同じく、一階が食堂で二階以上が客室だった。
無事に客室は3つ取れたので、私は食堂の一角に腰を下ろした。
昼前なので、ちらほらお客の入りが多くなってくる。
ただ座っているのは悪いな、と思ったので、ここの名産と言われているお茶を頼んだ。
値段を見ずに頼んだのが悪かったのか、目の前にはティーポットとカップが置かれる。
それをちびちび飲みながら、騒がしくなり始めた食堂や通り道を見つめていた。その時。
「そこの嬢ちゃん、暇してるのか?」
どこからか声が聞こえた気がしたが、私の事では無いだろう。
もし人を呼ぶなら、前に来て顔を見せて呼ぶはずだ。
「おい、嬢ちゃん。聞いてるのか!?」
まだ「嬢ちゃん」と呼ばれている人は、返事をしていないらしい。
知り合いなら早く返事をしてあげた方が良いと思うのだけど。
そう思った瞬間、いきなり肩を掴まれた。
驚いた私が振り返ると、目の前にはガタイの大きい、けれども見たことのない人がいる。
魔物相手なら躊躇しない私も、流石に人相手に暴力を振ることはない。
だからこうした時にどうしたら良いか分からず、固まってしまった。
「嬢ちゃん、見た所一人だろ。暇なら俺たちと遊びに行こうぜ」
私の意見を聞くこともなく、その男は私の腕を掴む。
そして気づくと、男の後ろには何人もガタイのいい男たちがおり、その顔には浅ましさが垣間見える。
着いて行ってはいけない、私の頭の中ではそう判断できるが、どう対処すれば良いのか分からない。
周りを見ても、皆心配そうな顔をしてくれてはいるけれども、見て見ぬふりをしている。
お兄様が言っていた。世の中には善い人と悪い人と普通の人がいる。
普通の人は誰かが困っていても素通りできる人、もしくは助けたいけど力がない人‥‥こう言う人が大半だよ。
きっと今がその状態だ。ここには悪い人と普通の人しかいない。
怖くて涙が出そうになる。涙を堪えていると、腕を掴んでいる男が腕に力を込めて私を引っ張り上げる。
その勢いで私の顔は上へ持ち上がり、すぐに男の空いている手が私の顔を掴んだ。
気づいた時には、男の顔が目の前にある。
「おうおう、こりゃ美人だな。おい、てめえら。この嬢ちゃんは遊びがいがあるぜ」
後ろで騒ぎ出す仲間たち。
この状態だと殴るにも殴れない。
そして男が私から顔を離し、立たせようと腕を引っ張る。
その瞬間、私を捕まえていた手が離れ、私は思わず床にへたり込んだ。
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