上 下
110 / 135
ベネツィ大食い列伝

20

しおりを挟む
「どうしたのでしょう! 何が起こったのでしょう! いったいどうなるのでしょう! 配膳スタッフと選手達が広場中央にて大乱闘を巻き起こしているー! いや、違う……これは、これはぁぁぁ! 配膳スタッフが配ろうとしている揚げたての揚げ物を待ち兼ねた選手達が我先にと奪い取ろうとしているぅぅぅ!」

「なっはははは! なんだなんだ、ワイルドじゃねぇかよおい。俺もちくっと混ざってこようかな」

「まさかの出来事に配膳スタッフは揚げ物を奪われまいと必死になって選手達の荒波を躱して走り抜けていくぅぅぅ! 配膳スタッフの華麗なフットワークで置き去りにされた選手達は後を追いかける者と特設キッチンに向かう者の二手に分かれた模様です! と、私ここでようやく気付いたんですが配膳スタッフも必死になって躱さず、ここは素直に揚げ物を渡せば済む話なのではないでしょうか? これについてはどうお思いですか? ドイルさん」

「まあ、あんだけ必死に奪いにくれば誰でも逃げるわな! なっはははは!」

「なるほど。つまりあの行動はごく自然な正当防衛であると、そういう事ですね?」

「おお。よほどワイルドな奴じゃなきゃ、正面きって向かっていかねぇだろうな!」

「ふむ、達見です。さて、特設キッチンへと向かった選手、あれは工事現場で働く筋骨隆々お父さんチームですね。配られる揚げ物に脇目もふらずキッチンに向かっていったい何をすると言うのでしょうか? と、ここで実況席にも揚げ物が届けられましたので私達も試食したいと思います。では頂きましょう、ドイルさん」

「…………」

「…………」

「うん! 柔らかくしっとりとした豚肉の旨味がたまりませんね! 程よくカットされた脂身が口の中でとろけて優しい脂の甘みが口いっぱいに広がります! そしてその上で全くしつこく無く、あっさりとして何枚でも食べる事が出来そうです。私、今日家族に買って帰りたいと思います。ドイルさんはいかがでしたか?」

「うんー。まあ、食べ慣れたいつもの味だわな。しかし中に入ってたのはあれ、何なんだろうな? 歯応え的に餅だと思うんだが、ガキの頃からしょっちゅう食ってるけど未だに分かりゃしねぇ。まあ、具材がなんだか分からねえようにわざとああやって衣で包んで作ってるんだろうけどな。具材の正体がなんだか分かっちまったら店に行く必要なくなっちまうもんな! なっははははは!」

「……はい。えー、予選の状況はいかがでしょう。おっと、特設キッチンへと向かっていた筋骨隆々お父さんチームがキッチンの中へと入っていきましたが、いったい何をするつもりなのでしょうか。フライヤーを取り囲むようにして三人の屈強な男達が並びましたが……あーっと! 何という事なのでしょう! 信じられません! 筋骨隆々お父さんチームがフライヤーの中に手を突っ込んだぁぁぁ! そのまま油の中に沈む揚げ物を鷲掴みにして無理矢理に産ぶ声をあげさせーーーーだぁぁぁっとぉぉぉ! これは、産ぶ声では無い! 悲鳴だ! お父さんチームが断末魔の叫びを上げ始めたぁぁぁ! 誰もが予想していた事態に陥ってしまいました! いくら鍛え上げた筋肉があれども、煮えたぎる油は熱かったぁぁぁ! 手元に届けられる前に自ら取りに行くというスタンスは良かったが、最後の詰めを誤ってしまったようです。お父さんチームは控えていた医療スタッフによって手当てを受けます。これはもう続行不可能でしょうか。ドイルさん。筋骨隆々お父さんチームですが、かなりのワイルドっぷりだったんじゃないでしょうか?」

「あれはワイルドじゃなくて、ただの無謀だな。ただ闇雲に危険に身を投じればいいってもんじゃねえんだ。男らしく、奥ゆかしく、大胆じゃなきゃダメなのよ。そこのさじ加減がプロと素人じゃ雲泥の差なんだろうな。なっははははは!」

「……そうですか。さあ、波乱に満ちた大食い大会その予選。今後どんな展開になって行くのでしょうか⁉︎」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす
ファンタジー
テクノブレイクで死んでしまった35才独身のおっさん、カンダ・ハジメ。自分が異世界に飛ばされたと思ったが、実はそこは死後の世界だった!その死後の世界では、死んだ時の幸福度によって天国か地獄に行くかが決められる。最高に気持ちいい死に方で死んだハジメは過去最高の幸福度を叩き出してしまい、天国側と敵対する地獄側を倒すために一緒に戦ってくれと頼まれ―― そんなこんなで天国と地獄の戦に巻き込まれたハジメのセカンドライフが始まる。 小説家になろうでも同じ内容で投稿してます! https://ncode.syosetu.com/n8610es/

処理中です...