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1章
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あらあら、こんにちは。
私の本性を知る数少ない方々達。
先日、私のちょっとした油断から私の本性ーーーーというのも何とも大仰な話なのですけれど、まあとにかく、幸か不幸か私の本当の姿を知ってしまった貴方達にもう少し本当の私の姿を知って欲しいと思いましたの。
まず、私の名前はアーリシア・ガーランド。名家ガーランド家の一人娘ですわね。幼い頃より厳しい教育を受けて育ち今や立派な貴婦人として成長しました。幼い頃は望まない教育が嫌でいつも泣いてばかりでしたし、逃げ出す事もよくありました。その度にお父様に叱られ家に連れ戻されていました。それにごく稀にですが暴力を受ける事もしばしば。なので私は幼いながらに自分は色々と普通ではないのだな、と思うようになり自分の運命、というか自身を取り巻く環境を受け入れるようになっていったのですわ。それでもご存知の通り、内心は嫌で嫌で仕方ないのですが、やらなければならないので仕方なく、といった具合に。そんな時に心と身体を引き離すと楽になれますの。どんなお稽古もお茶会も身体でそつなくこなして、心で誠心誠意ダラけますのよ。そうすれば全ての事は上手くいきますし、私もそれほど辛くはない。なので私の事をズボラでダメな女と思うかもしれませんが、私なりに今まで頑張ってきたし、それに今も頑張っていますのよ?
あ、あと、勘違いしないでいただきたいのですが、私は貴婦人としての暮らし自体は大好きですの。優雅に毎日を暮らせて幸せですの。毎日、汗水垂らして働くなんてゾッとしますわ。そう、ですから私は天性のズボラ女であり、面倒くさがり屋なんですの。今気付きましたけれど、私、生まれてすぐ《面倒くさがり屋》というお店を営んでいたようですわ。そう考えると商売繁盛ですわね、これもお父様の血筋かしら。
ちょうど話題にあがったので、ご紹介しておきますがお父様の名前はジョセフ。今でこそ、この土地の有名な上流貴族と称されてはいますが、もともとは、一般的な暮らしの人(下流階級というのかしら?)だったらしく、木製の工芸品を作って生計を立てていたところ、お母様のお父様、つまりは私のお爺様に腕を買われた事で、今よりも身分の一つ高いお金持ち(中流階級というのかしら?)の方達から注文が入るようになり仕事が急増。お父様の家も裕福になっていったそうですの。その後、一番の得意先だったお爺様の娘、つまりは私のお母様と親交を深めていき結婚。その数年後に私が生まれたというわけですわね。
それからも色々と大変でしたが、仕事もなんとか順調にいってこの土地でも有数のお金持ちになったみたいですの。
なので私が生まれた時には今の、この立派なお屋敷で暮らしていたので私にとってはこれが当たり前ですの。
お父様が苦労した頃の事は話を聞いただけで、私には何も分からない。
ただ、私が10歳になる頃に私と同じくらいの年齢の子達からピーナッツ臭い、と言われている事に気付きショックを受けました。
だから私はそれ以来、大好きなピーナッツを食べる事をやめたの。
なのに、まだピーナッツ臭いと言われるので、ついに頭にきた私は日頃の我慢の苛立ちも手伝って言ってやったのです『もう、ピーナッツ食べてへんわ! お前の顔は貧乏臭いんじゃ!」と。
怒りのあまり変な口調になってしまったのですが、意味はちゃんと通じたようでしたわ。
後日、お父様の部屋に呼ばれ数時間のお説教。
あの時が、最長でしたわね……。
なんでも、私が怒鳴った子がこの土地でそこそこ偉い貴族の娘だったようで……ああ、この話はもうやめましょう。
だって、あの時のお父様の泣いて、怯えて、怒って、放心した顔は今、思い出しても胸が抉られるというかなんというか……。
お父様の話はこれで終わり。
お母様はーーーーもう、話に出てきてしまいましたけれど、名前だけ紹介しておきましょうか。お母様の名前はジョリンです。ジョリン・ガーランド。とても綺麗な自慢のお母様です。
さて、今日のお話はこれで終わりましょう。
明日か、明後日か。また会える日を楽しみにしていますわ。
ああ、いえ、ごめんなさい。すぐには会えないかもしれませんわね。
だって、私ーーーー
「面倒くさがり屋ですから」
私の本性を知る数少ない方々達。
先日、私のちょっとした油断から私の本性ーーーーというのも何とも大仰な話なのですけれど、まあとにかく、幸か不幸か私の本当の姿を知ってしまった貴方達にもう少し本当の私の姿を知って欲しいと思いましたの。
まず、私の名前はアーリシア・ガーランド。名家ガーランド家の一人娘ですわね。幼い頃より厳しい教育を受けて育ち今や立派な貴婦人として成長しました。幼い頃は望まない教育が嫌でいつも泣いてばかりでしたし、逃げ出す事もよくありました。その度にお父様に叱られ家に連れ戻されていました。それにごく稀にですが暴力を受ける事もしばしば。なので私は幼いながらに自分は色々と普通ではないのだな、と思うようになり自分の運命、というか自身を取り巻く環境を受け入れるようになっていったのですわ。それでもご存知の通り、内心は嫌で嫌で仕方ないのですが、やらなければならないので仕方なく、といった具合に。そんな時に心と身体を引き離すと楽になれますの。どんなお稽古もお茶会も身体でそつなくこなして、心で誠心誠意ダラけますのよ。そうすれば全ての事は上手くいきますし、私もそれほど辛くはない。なので私の事をズボラでダメな女と思うかもしれませんが、私なりに今まで頑張ってきたし、それに今も頑張っていますのよ?
あ、あと、勘違いしないでいただきたいのですが、私は貴婦人としての暮らし自体は大好きですの。優雅に毎日を暮らせて幸せですの。毎日、汗水垂らして働くなんてゾッとしますわ。そう、ですから私は天性のズボラ女であり、面倒くさがり屋なんですの。今気付きましたけれど、私、生まれてすぐ《面倒くさがり屋》というお店を営んでいたようですわ。そう考えると商売繁盛ですわね、これもお父様の血筋かしら。
ちょうど話題にあがったので、ご紹介しておきますがお父様の名前はジョセフ。今でこそ、この土地の有名な上流貴族と称されてはいますが、もともとは、一般的な暮らしの人(下流階級というのかしら?)だったらしく、木製の工芸品を作って生計を立てていたところ、お母様のお父様、つまりは私のお爺様に腕を買われた事で、今よりも身分の一つ高いお金持ち(中流階級というのかしら?)の方達から注文が入るようになり仕事が急増。お父様の家も裕福になっていったそうですの。その後、一番の得意先だったお爺様の娘、つまりは私のお母様と親交を深めていき結婚。その数年後に私が生まれたというわけですわね。
それからも色々と大変でしたが、仕事もなんとか順調にいってこの土地でも有数のお金持ちになったみたいですの。
なので私が生まれた時には今の、この立派なお屋敷で暮らしていたので私にとってはこれが当たり前ですの。
お父様が苦労した頃の事は話を聞いただけで、私には何も分からない。
ただ、私が10歳になる頃に私と同じくらいの年齢の子達からピーナッツ臭い、と言われている事に気付きショックを受けました。
だから私はそれ以来、大好きなピーナッツを食べる事をやめたの。
なのに、まだピーナッツ臭いと言われるので、ついに頭にきた私は日頃の我慢の苛立ちも手伝って言ってやったのです『もう、ピーナッツ食べてへんわ! お前の顔は貧乏臭いんじゃ!」と。
怒りのあまり変な口調になってしまったのですが、意味はちゃんと通じたようでしたわ。
後日、お父様の部屋に呼ばれ数時間のお説教。
あの時が、最長でしたわね……。
なんでも、私が怒鳴った子がこの土地でそこそこ偉い貴族の娘だったようで……ああ、この話はもうやめましょう。
だって、あの時のお父様の泣いて、怯えて、怒って、放心した顔は今、思い出しても胸が抉られるというかなんというか……。
お父様の話はこれで終わり。
お母様はーーーーもう、話に出てきてしまいましたけれど、名前だけ紹介しておきましょうか。お母様の名前はジョリンです。ジョリン・ガーランド。とても綺麗な自慢のお母様です。
さて、今日のお話はこれで終わりましょう。
明日か、明後日か。また会える日を楽しみにしていますわ。
ああ、いえ、ごめんなさい。すぐには会えないかもしれませんわね。
だって、私ーーーー
「面倒くさがり屋ですから」
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