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4章 おまじないがもたらすモノ
23 豹変
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「……はぁっ?」
唸るようにして振り返ったアンナの顔。それは普段から私がよく見ているいつもの可愛らしいアンナのそれとは大きく異なっていました。
異なっていると言うか、もはや別人の、別の物でした。
「仮眠しているのが分からないのか? 分かるわよ、それくらい。そんな事より私としてはどうしてあんた達が今、そこでそうして眠っているのか、その理由の方が分からないわよ。大怪我したお嬢様のことが心配で心配で仕方なくって、その事で気に病んでしまって体調を崩したって言うのなら分かるけれど、基本的にあんた達ってお茶飲んでお菓子食べてたまに自分のお嬢様に話しかけてるだけじゃない! どこをどう見たって心配しているようには見えないわ! ただ好き勝手に遊んでいるだけじゃない! 勘違いしているようだけれど、今はお互いに仕事中なんだからね⁉︎」
「ちょっ、ちょっと……アンナ?」
数歩分、お二人に歩み寄りながら声を大にしてアンナは言います。
「なっ……」
「…………」
突如、もの凄い剣幕でまくしたてるアンナに対し、ナリスさんとナーシャさんは呆気にとられたように言葉を失います。
「アンナちゃーん……?」
「怪我した事は不運だし、可愛そうだし、力になれる事があるのなら何だってしてあげるけれど、でもそれらは全てそこの怪我をしたお嬢様に対する行為であってあんた達の為を想ってやっている訳じゃないのよ! それに、うちのお嬢様はとことん優しい人だからあんた達の言うことだって笑顔で何でも聞いてくれるんだろうけれど、そんなお嬢様の優しさにつけ込むように調子に乗ってあれやこれやと注文つけていったいあんた達って何様なのっ⁉︎ 他人の家にお世話になっているのにどうしてそんなに図々しいのっ⁉︎ 何を考えているのっ⁉︎ 馬鹿なのっ⁉︎」
「っば……⁉︎」
「無礼なっ! そういう貴方こそいったい何様なのですかっ⁉︎」
「っはぁ⁉︎ 何を寝ぼけてんのっ⁉︎ 私はあんた達のお姉ちゃんに決まっーー」
「…………?」
「…………?」
「…………?」
「…………!」
長い沈黙が続きます。
そして、
「ーーお嬢様っ!」
「はっ、はいっ!」
私に背を向けたまま声を荒らげるアンナに対し、私は完全に勢いに押されてビクついてしまいます。
「ごめんなさい! 後の事……お願いします!」
「えっ……えぇっ⁉︎」
言って、アンナは狼狽える私の横をうつむいたまま足早に去っていき、そそくさと部屋を後にしました。
そっと視線を上げナリスさんとナーシャさんの様子を伺うと、お二人ともじっと私の方を見ており今後の展開を静かに待っているご様子でした。
困りました。アンナには後の事をお願いされたのですが、いったいこれからどうしたものでしょう。(そもそも私はいったい何をお願いされたのでしょうか……そしてアンナはいったいどうしてしまったのでしょうか……)
必死に考えを巡らせますが何も手掛かりは掴めませんし、それに今のこの状況を打破できるような良い案は一向に浮かんではきません。
そもそも、こんな状況を打破できる術を持つ人なんているのでしょうか? もしかしたら中には打破できる人もいるのかもしれませんが、残念ながら私には到底無理な話というものです。
アリーお姉様なら、あの方ならきっと考えもしないような手段でもって、見事にこの気まずい場面をも突破してしまうんでしょうね。
「さ……さて、と。お片付け、お片付け……」
私はまだ口を付けてもいない紅茶のセットが乗るトレイを持って、そそくさと自室を後にしました。
ポットから立ち昇る湯気が私の顔を包み込み、若干視界が霧がかったように見えます。
このまま何事もなく穏便に事が運べば良いのですが……。
私の心配事は増えるばかりです。
唸るようにして振り返ったアンナの顔。それは普段から私がよく見ているいつもの可愛らしいアンナのそれとは大きく異なっていました。
異なっていると言うか、もはや別人の、別の物でした。
「仮眠しているのが分からないのか? 分かるわよ、それくらい。そんな事より私としてはどうしてあんた達が今、そこでそうして眠っているのか、その理由の方が分からないわよ。大怪我したお嬢様のことが心配で心配で仕方なくって、その事で気に病んでしまって体調を崩したって言うのなら分かるけれど、基本的にあんた達ってお茶飲んでお菓子食べてたまに自分のお嬢様に話しかけてるだけじゃない! どこをどう見たって心配しているようには見えないわ! ただ好き勝手に遊んでいるだけじゃない! 勘違いしているようだけれど、今はお互いに仕事中なんだからね⁉︎」
「ちょっ、ちょっと……アンナ?」
数歩分、お二人に歩み寄りながら声を大にしてアンナは言います。
「なっ……」
「…………」
突如、もの凄い剣幕でまくしたてるアンナに対し、ナリスさんとナーシャさんは呆気にとられたように言葉を失います。
「アンナちゃーん……?」
「怪我した事は不運だし、可愛そうだし、力になれる事があるのなら何だってしてあげるけれど、でもそれらは全てそこの怪我をしたお嬢様に対する行為であってあんた達の為を想ってやっている訳じゃないのよ! それに、うちのお嬢様はとことん優しい人だからあんた達の言うことだって笑顔で何でも聞いてくれるんだろうけれど、そんなお嬢様の優しさにつけ込むように調子に乗ってあれやこれやと注文つけていったいあんた達って何様なのっ⁉︎ 他人の家にお世話になっているのにどうしてそんなに図々しいのっ⁉︎ 何を考えているのっ⁉︎ 馬鹿なのっ⁉︎」
「っば……⁉︎」
「無礼なっ! そういう貴方こそいったい何様なのですかっ⁉︎」
「っはぁ⁉︎ 何を寝ぼけてんのっ⁉︎ 私はあんた達のお姉ちゃんに決まっーー」
「…………?」
「…………?」
「…………?」
「…………!」
長い沈黙が続きます。
そして、
「ーーお嬢様っ!」
「はっ、はいっ!」
私に背を向けたまま声を荒らげるアンナに対し、私は完全に勢いに押されてビクついてしまいます。
「ごめんなさい! 後の事……お願いします!」
「えっ……えぇっ⁉︎」
言って、アンナは狼狽える私の横をうつむいたまま足早に去っていき、そそくさと部屋を後にしました。
そっと視線を上げナリスさんとナーシャさんの様子を伺うと、お二人ともじっと私の方を見ており今後の展開を静かに待っているご様子でした。
困りました。アンナには後の事をお願いされたのですが、いったいこれからどうしたものでしょう。(そもそも私はいったい何をお願いされたのでしょうか……そしてアンナはいったいどうしてしまったのでしょうか……)
必死に考えを巡らせますが何も手掛かりは掴めませんし、それに今のこの状況を打破できるような良い案は一向に浮かんではきません。
そもそも、こんな状況を打破できる術を持つ人なんているのでしょうか? もしかしたら中には打破できる人もいるのかもしれませんが、残念ながら私には到底無理な話というものです。
アリーお姉様なら、あの方ならきっと考えもしないような手段でもって、見事にこの気まずい場面をも突破してしまうんでしょうね。
「さ……さて、と。お片付け、お片付け……」
私はまだ口を付けてもいない紅茶のセットが乗るトレイを持って、そそくさと自室を後にしました。
ポットから立ち昇る湯気が私の顔を包み込み、若干視界が霧がかったように見えます。
このまま何事もなく穏便に事が運べば良いのですが……。
私の心配事は増えるばかりです。
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