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2章 お茶会

22 心機一転

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 皆さんからの要望に公平に答える為に結局、ジェシカ様、ベアトリック様、アレンビー様、ルークレツィア様をそれぞれ名前の最後に嬢と付けて呼ぶ事でどうにか納得していただきました。

 私としては本来皆様をそんなに気安くお呼びするだなんて心苦しい思いでしかないんですが、ジェシカ様だけ特別にそう呼ぶ訳にはいきませんし、なにより皆様からのお願いをお断りするだなんて失礼極まる真似もやはり私には出来ません。だからと言って呼び捨てにするのはさすがに無理なので、差し出がましいですがどうにか嬢をお付けする事で折り合いをつけていただいたのです……。

 そもそも、なんで皆様急に呼び捨てにしてくれなんて言い出したのでしょう? そんな需要があるだなんて思いもしなかったので、まさかのお願いに寿命が縮まる思いでした。

 でも、よく考えてみたら私ってアンナに同じような事してるんですよね……。見習いメイドである彼女に友達のように接して困らせている。

 アンナも普段こんな気持ちなのかな……。

 私としては全然悪気はなく、メイドとか主人とか関係なくただ仲良くしようって事しか考えていないのですけれど、それでアンナが嫌な思いをしているようなら考えを改めなくてはいけませんね。

 呼び捨てにしてくれ、なんて無茶なお願いをされて困ってしまいましたが、でもそのおかげでアンナの気持ちが理解できたのだから結果的には良かったのかもしれません。

 実際に体験してみないと分からない事ってやっぱりたくさんあるんですね。私もまだまだ勉強不足なようです。最近少しお勉強サボりがちでしたし、明日から気合いを入れなおして頑張りましょう。

 でも、そうなると。やっぱりアシュトレイ様に知らず知らずのうちに大変な失礼を何度も重ねてしまっていたというのは間違いないみたいですね。

 何も知らなくて、何も気付いていない。

 私はその当然の報いを受けただけなのに。

 悪いのは全部、私なのに。

 心当たりがないからと、たとえ一瞬でもあろうことかアシュトレイ様に疑いをかけてしまった。

 無知なるゆえの、まさかの被害者面。

 本当に私って馬鹿ですよね。

 だいたい、このお茶会のお誘いの時だってそうです。せっかくベアトリック様が私なんかを心配してくださってお声をかけて頂いたのに、私ときたら変な事ばかり考えていらぬ心配ばかりして結局は杞憂に終わるんですから。

 そんな皆様の温かいお気持ちを無下にしています。

 落ち着いたら。もう少し時間が経って色々と落ち着いたら、アシュトレイ様にお会いして謝罪しましょう。会っては貰えないかもしれませんが、当然、許して貰えるとも思えませんがどうにか私の気持ちをお伝えてして分かって頂きましょう。

 それが私に出来る唯一の事で、私の責任ですから。

「それで、ローレライ。どうするの? アシュトレイ卿に仕返しでもする?」

 ベアトリック様は不敵な笑みを浮かべて言います。

「いえ。私、分かったんです」

「分かったって……まさか、婚約破棄の原因が⁉︎」

「はい。あ、いえ、正直に言うと正確には分かってはいないんですけど、自分自身の無知な様や馬鹿さ加減が身に染みて分かって、そう考えるときっと色んな事を気付かない内にやってしまっていて周りの人達にさんざん迷惑を掛けていたんだなって……それでお優しいアシュトレイ様にもさすがに愛想つかされてしまったのかなって……」

「ローレライ……」

「だから私、これから自分自身のそういった未熟な部分を見つめ直して誰にもご迷惑をお掛けしなくてすむようになるまでお勉強する事にします。今日は本当に来て良かったです。あのままひとりで考え込んでても答えは出なかったと思いますし、問題自体から視線を逸らして逃げていたと思いますから。だから、ありがとうございます。ベアトリックさーーーーベアトリック嬢……それに、皆様も……感謝しています」

 私は心機一転、前に進む決意をしました。



 


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