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14話【モーニング】
しおりを挟む「戻りました」
車のドアを開けて先輩に言う。
「おかえり、忘れ物は無いか?」
助手席に座ろうとしている俺に対して先輩が聞く。
「はい!無いです」と、言うと先程調べた喫茶店へ向かった。
数分後に目的地へ到着して、俺はお目当ての小倉トーストのモーニングセットを頼み、先輩は普通のトーストでモーニングセットにしていた。
最初、先輩はなんで小倉トーストにしないんだろ?と、疑問に思ったが、そーいえば·····余り甘いのが好きでは無かった事を思い出す。
高校の頃··········
バレンタインデーで大量にチョコやクッキー等を貰っていた先輩。
ただ、本人は甘いのが大の苦手で、
「頼む·····食べるの手伝ってくれ」と困った表情を浮かべてお願いされた。
「··········それをですか?」
俺は先輩が持ってるダンボールを指差して確認する。
ダンボールの中は、朝からお昼休憩までに貰った本命九割、義理一割の今にもダンボールから零れてしまいそうな程色んな色や形の箱が入っていた。とてもじゃないが、一人で消費するにはかなりの時間を費やす事になるだろう。。。
「ああ。怜にしか頼めないんだ」
「····················。」
俺にしか···と言う言葉で断れない俺は、
「わかりました」と先輩の頼みを承諾。
「美味しいですね、」
市販の·····多分、義理に該当するチョコを食べながら先輩に話す。
「そうか?·····ぅ"、甘い···············」
眉間に深い皺を寄せながら先輩はチョコチップクッキーを食べる。
二月の寒い青空の下、屋上で男二人でひたすらチョコレートやクッキーを食べるという何とも言えない思い出だが、
よく先輩は糖尿病にならなかったな、と素直に凄いと思う。
「怜」
名前を呼ばれて思い出から目の前の先輩に思考を戻す。
「はい」
「早速だが予定を決めないか?」
「そーですね」
直ぐに携帯に保存している自身の時間割表を見る。
「月曜は三限で、水曜日は四限に終わります。金曜日は五限で後は六限のラストまでですね」
因みに今日はラストまである·····。
慎二みたいに寝ないよーにしなければ、、、、
話しをしている途中で「失礼します」と店員さんが来て、
お互いのモーニングが目の前に置かれた。
小倉トーストのモーニングセットはサクサクにトーストされた四枚切りのパン、トマトやキュウリ、コーンやレタスが入ったサラダ。
これでもか·····という位たっぷり小倉が入った小皿と、ゆで卵一個が付いていた。
(美味しそうっ♪)
見てるだけで涎が出そうだ。
先輩のトーストのモーニングセットは小倉がイチゴジャムに変わっていたくらいで他は俺のモーニングと変わらない。
お互いホット珈琲を注文していて、
珈琲の·····あの目が覚めるような良い匂いが鼻を刺激してくる。
食べる直前で先輩が、
「俺は水曜日と金曜日が早く終わるから、水曜は決定で、金曜はその都度決めようか」と、iPadの画面でスケジュールのアプリ予定を入れながら話す。
俺は「分かりました」と頷き、「いただきます」と手を合わせてサラダから食べ始める。
今後·····先輩と週三セックスしつつ、食事のマナーや最低限の事を出来るようにしないといけない。
そうしなければ、俺を見た分家の人やパーティーに参加した人達に笑われてしまうし、先輩が馬鹿にされてしまう·····それは絶対に駄目だ。
(先輩の為にも頑張らないと、)
そうだな··········空いてる時間は礼儀作法の本で自分自身でも勉強しよう。
努力だけなら、誰にも負けない自信があるから。
サラダを食べ終え、パンに小倉を全てのせると俺は大きく口を開けて食べる。
「ん"~~~~~っ♡おいしい~♪♪」
小倉にこしあんが混ざってて粒の感触が残ってるのがまた美味しいッ!
パンもまわりはサクサクなのに中がモチっとして·····いや、ふわっとしてるのかな?
とにかく!!美味しいッッ!
俺が小倉トーストを満喫していると突然、はははっ·····と先輩は笑う。
「なっ、何ですか?」
(次は何を言う気なんだろうか)
「いや、幸せそーに食べるな、と·····あ、、」
先輩は右手を伸ばしてきて、俺の左の下唇を親指で触れる。
(?、なんだ??)
不思議に思っていると直ぐに先輩の指は離れたが、親指には先程自分が食べていた小倉が付いていた。
「!、すみませんっ」
気付かなかった事が恥ずかしくて、俺は直ぐにペーパーナプキンを先輩に渡そうとする。
しかし·····何故か先輩は親指に付いた小倉を舌でペロッと舐めてしまう。
「え”っ?!」
な、何で舐め·····いやっ、先輩甘いの苦手なのになんで????
疑問が沢山湧き上がり、俺が言葉が出なくなった。
「···············久しぶりに小倉食べたけど、やっぱり甘いな、」と、困った様に笑う先輩。
そんな困った表情さえ絵になるから凄い·····。
「 じゃあ·····何で、、食べたんですか?」
やっと発せた言葉がそれだった。
「怜が凄く美味しそうに食べてたから」
困っていた表情が優しく微笑み、俺はその表情に胸が締め付けられるような·····跳ねる様な変な感覚に襲われる。
(? 、 顔も·····熱い?? なんだこれ、)
「おっ、俺が美味しそうに食べてたからって、一口食べたいって言ってくれればあげますよ」
「そーなの?じゃあ、一口頂戴」と、先輩は少し前のめりの状態で口を開けて待つ。
さっき·····少しの量で困った表情を浮かべてた人が何で一口頂戴って言うんだ?謎過ぎる········。
「けーさん、さっき食べましたよね、、、」
「いいから、 は や く」
「 ····················はぁ、分かりました」
本人が欲しいと言うなら俺はそれ以上何も言うことが無いので、小倉トーストを持つと「はい、どーぞ」と先輩の開いてる口に運ぶ。
先輩は満足気に小倉トーストを食べ、
「ありがとう」と言うと前のめりの状態から普通の姿勢に戻った。
そして、そのやり取りを見ていた他のお客さんからは「初々しいわねぇ」や「あの子·····首輪?してるからΩかしら·····αとΩのカップル羨ましいわね」と、聞こえてきて恥ずかしい、、、
俺はそれ以降何も話さず無言で残りの料理を食べた。
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