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一章

【街デート】

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馬車から降りる時、テオは以前オークションの時に使っていた魔道具を取り出して飲んだ。

すると·····今回は髪が真っ黒に染まり、目は黄色になって一目見ただけだとテオだと分からない。が、顔は整っている為、格好良いのは変わらない。

「それには本当に驚かされます」
「はははっ、便利だろう?副作用も無いから助かるのだ」
笑顔でテオは言うとオレをお姫様抱っこして馬車を降り、そのフルーツタルトが美味しいというお店に向かう。


◆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◆



「~~~~~~~ッ!凄く美味しいですねっ♡」
流石、ハドラさんだっ♪♪  
あまりの美味しさに先程の嫌な事が全て浄化された気持ちになる。
·····久しぶりにあんな刺々しい言い方をした。
これからもそんな機会が増えるのかな、、、
いや、もう忘れよう。

「好きなだけ食べなさい」
テオは珈琲を飲んで言う。
「はい。·····テオ、今日はありがとうございました」
「どうした急に」
「テオは忙しいのに、あんな最悪なお茶会に行かせてしまって·····申し訳なくて、、」
一人で解決しなければならない事が多かった。
あの時もテオのおかげで何もされなかった様なものだ。。。

「大丈夫だ。それにあの時のルイスは格好良かったぞ。流石、私が惚れている相手だ」
「あ·····ありがとうございます」
そういえばオレ···大勢の前でテオを愛してるって言ったんだ、、、
しかも亡国の王子なのにあんな風に言ってしまって··········。
嗚呼·····また変な噂が流されたらどうしよう。


「·························。」


「何暗い顔してるんですかぁ~?私の最推し様は♡」

「!」

テーブルの横を見るといつの間にかアンナさんが立っている。しかも服装が平民の服装だ。
「アンナさん!?どうしたんですか?」
「報告に来ました~っ♡あ!ルイス様、フルーツタルト一口下さい♪」
「お疲れ様です。いいですよ」
オレはアンナさんにフルーツタルトをあげようとフォークで一口サイズに切るが「アンナ、私のを全部やる」と、テオが自身の手をつけていないケーキを渡す。

「え"~~~そういうのじゃないですぅ~♡まあ···でも、頂きます♡」
アンナさんは席に座りテオから貰ったフルーツタルトを食べるが「····················報告です。Sは先程男を殺しました。要らぬ駒と判断したようです」と小声で言う。
「そうか。Lについては何か言っていたか?」
「はい·····後程報告します。此処ですと貴方様が怒り狂いそうですので」
「分かった。引き続きSの監視を頼む」
「畏まりました。ベルに伝えます」
二人共周りを気にしながら小声でかなり物騒な会話をしている。
まあ、周りは恋人や令嬢達の話し声でこんな物騒な会話なんて聞き取れないけど、、、、

「あ~~~おいしかったぁ~っ♪ルイス様さっきはカッコよかったです♡私の最推しはやはり最高ですね♡♡では、後で会いましょうっ」
テオとの会話が終わりアンナさんは笑顔でお店から出て行く。




「テオ、誰か殺されたんですか?」
「ああ。だがルイスには関係ない事だ。勿論私にも」
「そ·····そうですか、」
オレの知っている人が殺された訳じゃ無いことに安堵した。
「ルイス折角だ、色んなお店を見ないか?」
「え?今からですか?」
「ああ。街巡りは楽しいぞ」
テオに笑顔で言われるとオレも断れない。
「はい、行きましょう」
「それと私の事は馬車に乗るまではレンと呼んでくれ」
「分かりました」



「········································。」



「·························。」


「では本や魔道具でも見に行こうか」
「はいっ♪」
フルーツタルトを三つ食べて満足したオレはテオに再びお姫様抱っこされて次の目的地へ向かう。
しかし、、、
「レン」
「どうした?」
「何故か凄く見られています···」
歩く人やお店の人が此方をやたらと見てくる。
·····唯、不快に思う様な視線では無い。

「うむ。ルイスが珍しいからかもしれないな」
「え"、」
「騎士に抱えられる男など中々いないだろう」
「成程···確かにそうですね」


二人で会話をしていると寒い中道端で花を売っている少女と目が合った。
「綺麗な方、お花は如何ですか?」と、此方にやって来るがその少女の姿が妹と重なる。。。
オレはフェイスベールをずらして、
「有難う可愛いお嬢さん。レン、カゴの花全部欲しいので買って下さい」とテオにお願いする。
テオは目を細めて「喜んで」と言うとオレをお姫様抱っこした状態で器用にお金を支払い、オレの胸は沢山のお花に埋もれた。
「あっ、ありがとうございますっ!」
少女はお礼を言いながら此方に手を振ってくれたのでオレも手を振る。

「レン、有難うございます。この花達良い匂いがしませんか?」と、オレはフェイスベールを元に戻す。
胸にある花達は本でしか見た事がないロウバイやチューリップ、椿、フリージアが綺麗に咲いていた。
あの子は多分·····花屋の娘だろう。
でなければ、こんなに綺麗な切り花を用意出来る筈がない。

「そうだな。特にこの白色の花はルイスによく似合う」
テオはそう言いながら広場にある大きな噴水の前を通り過ぎるのでは無くベンチにオレを座らせた。
「?」
不思議に思いながらテオを見ていると、似合うと言っていたフリージアの花の中で満開だった一つを摘み、オレの右耳と髪の間に挿す。

「ふっ、やはり似合うな」
満面の笑みで言うからオレの心臓は大きく脈打つ。
「~~~~ッ、有難うございます·····それはフリージアという花です。て·········レンは、男なのに花が好きだというオレを変だと思わないのですか?」
国がまだあった頃よく双子の弟達にも揶揄われた。
花を愛でるのは女がする事だと、、、

「変?私も花は好きだ。花に囲まれる生活は良いと最近ルイスから学んだ」
「なんか·····部屋をどんどん花ばかりにしてしまってすみません、、」
オレがテオの部屋に来てからユートさんがお花をほぼ毎日持って来てくれるので部屋は色んな花に覆われている。
それに物も沢山増やしてしまった。

「良い。だから気にするな」
テオは全然気にしていないと笑う。
「はい。有難うございます」


再び歩き始め、十分程歩いた所に目的地の魔道具等を取り扱っているお店に到着した。
店内は所狭しと物や本が置かれている·····。
「─────遠くが見える眼鏡、水が無くならない花瓶、焦げない鍋、通信が出来る映像石·····」
当たり前だけどオレが知らない魔道具が沢山あった。
一日中此処に居ても飽きない自信がある。

「何か気になる物でもあるか?」
「通信が出来る映像石は魅力的ですね。それがあれば離れていても話せるって事でしょ?」
「そうだな。うむ、試しに買ってみるか」
テオはそう言うと映像石を石二つ、オレに教える為の教科書数十冊を購入した。
「ルイス、これを」と、直ぐに映像石を一つを渡され、テオがもう一つの映像石を持つ。
本は後でハドラさんが取りに来るらしいがあんなに大量の本大丈夫なんだろうか···?と、机に積み重なった本の山を見ながら思う。
恐らくハドラさん以外にもお手伝いさん来る筈だ、、、


「次は宝石を見に行くぞ」
「?、はい」
何故宝石?と思いながら返事を返す。
大通りで人が賑わっている道から奥まった小道に入り、人通りが無い道を歩いて行くと古そうな建物の前に辿り着いた。その建物には看板は無く普通の家だ。
「···此処········ですか?」
一応テオに確認する。。。
「ああ」
テオは頷くとドアの取っ手を引き家の中に入へ。

「いらっしゃいませ」
入って直ぐに七十歳位の狐の獣人老婆が出迎えてくれた。
「婚約指輪を作りたいのだが」
「!!?」
「畏まりました。テオ様、そちらの方がルイス様でしょうか?」
「えっ?」
何故わかったのだろう?
名乗ってもいないしテオも外見が違うのに·····。

「そうだ。ルイス、彼女はカイラ。宝石に関しての知識は彼女が誰よりも詳しい」
「ほほっ、ありがとうございます。宝石で賄いしておりますので当たり前ですよ。どんな宝石を指輪に入れましょうか?」
「実は石はもうあるのだが、もう少し魔法を付与したい。可能だろうか?」
テオはオレの左手から指輪を外すとカイラさんに渡す。

「···············ほぉ、これは見事な複数魔法が施されておりますね。しかし、、、これ以上付与するのは難しいかと」
そう言ってカイラさんはテオに指輪を返した。
「では耐えられるルビーを探してくれ。どれ位かかりそうだ?」
「一週間頂ければ。デザインは如何しましょう?」
「カイラに任せる。そなたに任せれば間違いないからな。では一週間後に」
「畏まりました。お待ちしております」
テオは用事を済ませたのかオレをお姫様抱っこしたままお店を出る。



◆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◆


「テオ」
「まだ馬車じゃないぞ」
「·····レン、今の指輪はどうなるんですか?」
「ルイスの好きにしなさい」
オレの好きに······。
「······························。」
テオに初めて貰った指輪。
この国を出る時に売ろうと思っていた物、、、

··········でも、今は違う。


「じゃあ···例えばだけど、別空間に収納出来るとかそういう魔道具無いですか?あれば何処でも取り出せて色々便利だと思うんです」
「! 何だそれは········ルイス、その話を城に帰ってから聞かせてくれないか」
「は、はい」
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