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一章

【約束】テオ視点

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ダイランが絶命したのを確認した後私は奴の剣を腹から抜き、マントを破いて止血する。

「早く解毒せねばッ、、」

解毒して···早くルイスを探さなければならない。
逸る気持ちを抑えつつ、ポケットから予め生成した解毒剤を取り出して飲む。
「   ·····ふぅ、」
この毒は『唯の毒』だ。
一年前、毒が効いたのは耐性無効と昏睡の呪法が施された事により毒に耐性があっても私は半年も眠ってしまった。
しかし幸いな事に光属性のおかげで呪法は弱く死なずに済んだ訳だが、、、、


「少々··········目眩はするが探す事は出来る」

諦めていた人に·····ルイスにもう一度会えるのだ。
こんな腹部の痛みなど忘れられる。
「待っていてくれルイス」
今度こそお前に会って伝えよう。


◆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◆


謁見室から出てしらみ潰しに部屋を探すがルイスは見当たらない。
「何処にいる?」
早く会いたいのに会えない、もどかしい。

自身の王が死んだと知らない残党兵が此方に刃を向け、それを魔法で排除する。
こんな事を続けていると刃を向ける残党兵は居なくなり、全身血まみれの私を見て悲鳴を上げ走って逃げて行く。
さながら幽霊か化物にでも見えるのだろうか·····。
このまま探すのは時間の無駄だと感じ、その内の一人に『グルファ国の王子は何処にいる?』と殺さない事を約束に尋ねた。するとダイラン様のお気に入りは地下に収容されていると言った。




地下に行くと··········
壁や床、牢屋の柵に大量の血が飛び散っており、どの牢にも腐敗が進んだ遺体が放置されている状態で悪臭が酷かった。
中には首を吊っている者や壁に磔になっている者もいる。
歩みを進め、奥の薄暗い巨大な牢屋の前に着くと私はあまりの光景に思わず絶句した。
その牢屋は柵がグニャグニャに溶け、壁は至る所が破損し中には歪な形をしたバケモノに何本も鉄の棒が突き刺さっている。
こんな生き物は戦場でも見た事が無い。ダイランは人体実験でもしていたのか?

「  !   あれは⎯⎯⎯⎯···」

バケモノの近くには誰のものか分からぬ痩せ細った腕が一本落ちていた。結構時間が経っているのか千切れた所から出た血は凝固している。
死んでいると思われるバケモノに一応警戒しつつ溶けた柵に触れた。
「·························。」
この柵の溶け方は恐らくルイスだ、ルイスの魔法に間違いない。
しかし·····この場所で生きている人間はいなかった。

ポケットから改良した硝子の球体を取り出すがダイランとの戦闘で球体にヒビが入り欠けている。
何とか映る事を願い、その場所の記憶を映像化した。



『···ザ────·····ザ──···に····ぃ·····さ──·····』

牢屋の中には痩せたルイスの姿があった。
『ザ─ザ  ザザ···カ·····ト··········ル·····ザ────·····』
バケモノの前で泣き崩れ、バケモノをカトルと呼ぶ。
『に”いさ”ま   ザ───·····コロ···ザザ··ころじで·····ごろじでゴロジテころじでぇぇ”え”ぇえ”ぇごろぜえええぇ”ええ~~~~!!!!!!!』
カトルは狂った様に叫びながら、ルイスが収容されている柵に何度も何度も頭部らしき部分をぶつける。

そして雑音が徐々に少なくなってきた。
『ごめんなさいッ·····オレがッ、オレがカトルの代わりになれれば良かったのにッ、、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいカトルごめんなさいッ』
ルイスは必死に謝り続け、カトルは柵を破壊すると『お”まえ”ぁ”えのせい”だお前の”せいだせいだお前お前お前ののあ”おま”お”まあ”』と、ルイスの右腕を掴んで簡単に引きちぎってしまった。

ルイスは苦痛に叫びつつ魔法で引きちぎられた腕の箇所を止血する。
カトルは奇声を上げて身体の形が変形し至る所から腕や足···角や羽が生え、目らしき所からは赤い液体が流れていた。
その姿はもはや人の原型を保ってはいない。

『はぁ  、はぁ·····カトル··········やめてくれ···オレにはッ·····オレにはお前を殺せない!!大切な弟をッ···出来ないんだッ  カトル!!!』
泣きながら無理だとルイスは叫ぶ。
しかし、カトルはルイスの言葉を理解していないのか『かぴ@ゃ”やさ×たpけ”▷かがaあかあ”#に+っ◆たま』と、言語すら話せていない。

しかし次の瞬間、、、
魔道具の調子が悪くなり映像が映らなくなってしまった。が、少しして再び映像が映る。

「ッ  ?!!」

そこには···カトルに柵の棒を何本も刺したルイスが立っていた。
何と表現していいのか分からない程の苦痛の叫びを上げて──────·····

《パ リ   ン  ッ ·····  》

映像を再生していた球体がバラバラに砕け散った。


「···ルイス」
ルイスが心配だ。
腕が片方無い·····それに、一部しか見ていないが弟を自らの手で殺めている状態だ。身体より心は大丈夫なのか分からない。
一刻も早くルイスを見付けなければ···ッ

ルイスを再び探しに行こうとした時、何かが私のマントを引っ張った。
振り返ると倒れたままのカトルが私のマントを掴んでいる。
「  に    ·····さま”···にぃ··········ま···だ  ·····い·····す···き·····に···············ま···に ····ま····· 」
「ッ、」
こんな姿に変えられても、ルイスが···兄が大好きなのだな··········。

「すまない·····私はお前の兄ではないのだ。だが命に代えても必ず伝えよう」
掴む手に触れて「今、楽にする」と、マントから手を離させ痛みが無いように殺した。
そして悪用されないようにカトルを燃やす。


「────···必ず伝える。約束だ」
そう、誓いを立てた。


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