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【71】五年前② 〜過去に何が〜

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「ジョン・ダマーや彼の側近達はポーラ君をターゲットにしてるようなんです」

「へぇ、相手も彼を取り込もうと必死か」


「それなら話に乗る振りをして、逆に情報を聞き出しては?ポーラ君なら出来そうじゃないですか」

「えぇ、私もそう思ったんですが……ポーラ君がジョン・ダマーに近づくのを激しく拒否しまして」

「へぇ」

「それはまた……」

サニーとユージンは推測を巡らせた。



「二人は、過去になにかあったのか?」

「えぇ、彼の態度があまりにも奇妙だったので訊ねてみましたが、ポーラ君は否定しました。が、ジョン・ダマーの彼をみる目やポーラ君の雰囲気から間違いなくなにかあったかと……」


「ジョン・ダマーはどんな目で見るんだ?」

「獲物を狙うような目です、殿下」


「それは性的に?それとも金銭目的で?」

「どちらも、ですね」


「ジョン・ダマーは両刀バイセクシャルか」

「ええ、そのようです。ジョンの愛人が”三人で楽しまないか”とポーラ君にもちかけたことがあって……」

エドの表情が曇った。


「それで?」

思わずユージンの声も厳しくなる。


「ポーラ君が取り乱しまして。ひどく怯え私達からも逃げ、部屋で吐いてました」

「それは……」

困りましたねと言いかけ、ユージンは口を噤んだ。


潜入捜査では協力人ポーラの存在が必要不可欠。

彼を守りつつ、最大限働いてもらわねば任務遂行は成せない。


怯える・・・ってのが、気になるな」

「えぇ、恐怖に支配され寝返る可能性もありますからね。そういえば以前、マッキニー准尉が気になることを言ってましたね」



「「……五年前」」

サニーとユージンは顔を見合わせた。


「殿下も気になりましたか」

「あぁ、ダニエルの話じゃ当時マッキニー家もポーラ君も荒れていたようだから、なにかあったんだろう。彼と男爵が酒に逃げたくなるようなが」


「そういう状況なら、ポーラ君をジョン・ダマーに近づけるのは得策ではありませんね。奴がバイセクシャルなら、私がやりましょう」

「期待してるよ、ユーリ」



都では徒桜あださざくら、ー儚く散りやすい幻の東洋花・桜ーなどと言われているが、サニーに言わせればユージンは彼岸花ひがんばなだ。


腹の中に毒を隠しており、触れたら最後、その毒に侵される。

水面に落ちた一筋の絵の具のように、柔らかく鮮やかに、けれどいつしか消えて無くなり、気づいた時にはその毒に支配されている。


ユージンは真っ赤な唇を引き上げた。

ジョン・ダマーも彼の美しさの前では正気でいられないだろう。


毒を喰らえば皿まで、もしくは毒を以て毒を制する。

彼とユージン、どちらの毒がより強いか。


「みものだな」

サニーはこみ上げる笑いを堪えられなかった。
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