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【70】潜入開始 〜気になること〜
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「ふぅ、今のところ順調だな」
サニーがシャツの首元を寛げると、ポーラは執務室にあったブランデーを人数分グラスに注いで振る舞った。
「信徒の視線は感じましたが、姿は見えませんでしたね」
「彼等は館の北と東を占拠してます」
エドは応接テーブルに館の地図を広げた。
「北のこの部屋がシシェック・マッキニー男爵の寝室で、その左右隣室をティアゴ・ダロッチャとジョン・ダマーが囲っています」
「寝室を見張られては、男爵夫人が逃げ出すのも無理はない。二人の世話をする信徒はどこに?」
「男の信徒は北側のこの辺りに部屋を割り当てられ、女性の信徒は東側で生活してます。そして東側の中心部であるこの部屋を管理してるのがナンバースリーのベラ・ウェインです」
エドは調べあげた事を端的に報告する。
「三人が可愛がっている腹心メンバーはこちらに」
カイルはジャケットの懐から隠し撮りした白黒写真をテーブルに並べた。
サニーとユージンは写真の顔と裏面に記載された一人一人の情報を記憶していく。
「そして側近の女達です」
側近というのは要は世話係りで、世話をするというのは下の事、つまり愛人である。
「流石は教祖様だな。沢山の愛人を抱えてる」
「内通者は?」
サニーは苦笑いし、ユージンがエドに訊ねた。
「ベラ・ウェインの右腕と言われてるイリス・ノアです。彼女は信徒達への指示役なので、我々の役に立つでしょう」
「…………しっ!」
突然ユージンが唇に人差し指を立て、全員に黙るよう合図した。
彼は耳がとても良く、足音などを聞き取る。
「ワゴンが近づいてきます。おそらくポーラ殿の母君でしょう」
「ったく、母上は仕方がないな」
気を利かせてホットココアでも差し入れにきたのかもしれない。
「俺も一緒に行くよ」
立ち上がったポーラに続き、ポーラの護衛として常に一緒にいる
カイルも立ち上がる。
「助かります、中佐。中佐がいれば、母も逃げ出すでしょう」
ミランダは強面なカイルが苦手なのだ。
二人の足音が遠ざかるのを確認し、エドは報告を続けた。
「ティアゴ・ダロッチャの愛人はこの五人で、彼女達は教祖であるティアゴに心酔しており、此方側へ引き込むのは難しく……」
「そこを俺に陥落してほしいと。そういうわけだな」
「はい」
エドは恐縮して頭を下げた。
「殿下の得意分野でしょう」
「前までは、な」
「それにこういう困難なシチュエーションは殿下も燃えるんじゃ?」
「そりゃまぁ、な。とにかく、ちゃっちゃと落としてみせるさ」
「期待してますよ」
「もう一人のジョン・ダマーですが……彼も愛人を囲っており、彼の場合は嗜虐趣味があるようで、肉体的にも洗脳して信徒を囲っているようです」
「なるほど、こちらも癖があると」
「えぇ……それに気になることが」
「気になること?」
サニーが訊ね返すと、エドは表情を険しくして首を縦に振った。
サニーがシャツの首元を寛げると、ポーラは執務室にあったブランデーを人数分グラスに注いで振る舞った。
「信徒の視線は感じましたが、姿は見えませんでしたね」
「彼等は館の北と東を占拠してます」
エドは応接テーブルに館の地図を広げた。
「北のこの部屋がシシェック・マッキニー男爵の寝室で、その左右隣室をティアゴ・ダロッチャとジョン・ダマーが囲っています」
「寝室を見張られては、男爵夫人が逃げ出すのも無理はない。二人の世話をする信徒はどこに?」
「男の信徒は北側のこの辺りに部屋を割り当てられ、女性の信徒は東側で生活してます。そして東側の中心部であるこの部屋を管理してるのがナンバースリーのベラ・ウェインです」
エドは調べあげた事を端的に報告する。
「三人が可愛がっている腹心メンバーはこちらに」
カイルはジャケットの懐から隠し撮りした白黒写真をテーブルに並べた。
サニーとユージンは写真の顔と裏面に記載された一人一人の情報を記憶していく。
「そして側近の女達です」
側近というのは要は世話係りで、世話をするというのは下の事、つまり愛人である。
「流石は教祖様だな。沢山の愛人を抱えてる」
「内通者は?」
サニーは苦笑いし、ユージンがエドに訊ねた。
「ベラ・ウェインの右腕と言われてるイリス・ノアです。彼女は信徒達への指示役なので、我々の役に立つでしょう」
「…………しっ!」
突然ユージンが唇に人差し指を立て、全員に黙るよう合図した。
彼は耳がとても良く、足音などを聞き取る。
「ワゴンが近づいてきます。おそらくポーラ殿の母君でしょう」
「ったく、母上は仕方がないな」
気を利かせてホットココアでも差し入れにきたのかもしれない。
「俺も一緒に行くよ」
立ち上がったポーラに続き、ポーラの護衛として常に一緒にいる
カイルも立ち上がる。
「助かります、中佐。中佐がいれば、母も逃げ出すでしょう」
ミランダは強面なカイルが苦手なのだ。
二人の足音が遠ざかるのを確認し、エドは報告を続けた。
「ティアゴ・ダロッチャの愛人はこの五人で、彼女達は教祖であるティアゴに心酔しており、此方側へ引き込むのは難しく……」
「そこを俺に陥落してほしいと。そういうわけだな」
「はい」
エドは恐縮して頭を下げた。
「殿下の得意分野でしょう」
「前までは、な」
「それにこういう困難なシチュエーションは殿下も燃えるんじゃ?」
「そりゃまぁ、な。とにかく、ちゃっちゃと落としてみせるさ」
「期待してますよ」
「もう一人のジョン・ダマーですが……彼も愛人を囲っており、彼の場合は嗜虐趣味があるようで、肉体的にも洗脳して信徒を囲っているようです」
「なるほど、こちらも癖があると」
「えぇ……それに気になることが」
「気になること?」
サニーが訊ね返すと、エドは表情を険しくして首を縦に振った。
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