69 / 74
【69】マッキニー男爵邸 〜男爵夫人の歓迎〜
しおりを挟む
「こんな辺鄙な場所に、ようこそいらっしゃいました。何もありませんが、どうぞ寛いでいってください」
マッキニー男爵夫人ことミランダ・マッキニーは両方の目尻を下げ、嬉々として客人を歓迎した。
最初、ポーラから客人を招きたいと言われた時は面倒としか思わなかった夫人だが、やってきたのが礼儀正しくユニークな軍人のエドだったので、彼の友達というアグロン伯爵にも期待していたのだ。
「急な訪問、誠に申し訳ありません。ポーラ君とはセーラスでもよくお酒を飲む仲なんです。彼からご実家が雪深い素敵な場所だと聞いていたので、いつか訪ねてみたいと常々思ってたんです」
現れたアグロン伯爵は絵画から抜き出てきたのかと思うほどの美丈夫で、白い歯を覗かせた笑顔がとても素敵で、ミランダ夫人はひと目で気に入った。
おまけに軍で鍛えた逞しい肉体は彫像のように立派で、伯爵家の次男坊というのがネックだが、もしも長男が亡くなったら家督を継ぐ事になっており、準嫡子として伯爵の称号を与えられているそうなので、悪くはない。
ポーラやワトソン少尉から聞く限り、伯爵は軍人として立派に身を立て、羽振りもいいようだ。
末娘キャサリンは絶対に貴族に嫁がせると決めていたが、自身が貧乏貴族に嫁いで苦労したので、準貴族の軍人も悪くない。
これほど男ぶりも良ければ、キャサリンもすぐに彼に夢中になるだろう。
「まぁまぁ、そうだったんですね」
「母上、伯爵は移動で疲れてますから。今夜はこの辺で」
ポーラは興奮する母をやんわり制し、サニーとユージンに目配せした。
「そ、そうね。私ったら、お客様がいらっしゃるのが久しぶりだから、はしゃいでしまったわ。伯爵、ゆっくりお休みください」
「では伯爵、こちらへどうぞ」
ポーラは話し足りないという母を応接ホールに残し、館の西側の急遽用意した客間へとサニーを案内した。
館西側は元々使用人達が使っていた一帯で、床や壁が軋み、おまけに天井は低く、窓も少ない陰気な場所だった。
「こんな部屋ですみません」
「構わないよ、軍で野営もするしね」
ポーラは申し訳なくて恐縮したが、サニーもユージンも全く気にしなかった。
「さて、と」
サニー、ユージン、カイル、エドの四人は素早く目を合わせたと思うと、全員が各々の部屋ヘ行き、人が潜んでないか探し始めた。
特にサニーとユージンの部屋はより念入りで、隠し扉がないか床壁天井を叩き反響音を確かめるほど。
これは館に来たばかりのエドやカイルも同じ行動をし、ポーラは驚かされたものだ。
「隠し通路はないようです」
「こっちもだ」
「私達の部屋にもありませんでした」
「よし、応接室で話そう」
サニーの部屋には簡易の執務室、けん応接室を用意してある。
これはユージンからのオーダーだった。
マッキニー男爵夫人ことミランダ・マッキニーは両方の目尻を下げ、嬉々として客人を歓迎した。
最初、ポーラから客人を招きたいと言われた時は面倒としか思わなかった夫人だが、やってきたのが礼儀正しくユニークな軍人のエドだったので、彼の友達というアグロン伯爵にも期待していたのだ。
「急な訪問、誠に申し訳ありません。ポーラ君とはセーラスでもよくお酒を飲む仲なんです。彼からご実家が雪深い素敵な場所だと聞いていたので、いつか訪ねてみたいと常々思ってたんです」
現れたアグロン伯爵は絵画から抜き出てきたのかと思うほどの美丈夫で、白い歯を覗かせた笑顔がとても素敵で、ミランダ夫人はひと目で気に入った。
おまけに軍で鍛えた逞しい肉体は彫像のように立派で、伯爵家の次男坊というのがネックだが、もしも長男が亡くなったら家督を継ぐ事になっており、準嫡子として伯爵の称号を与えられているそうなので、悪くはない。
ポーラやワトソン少尉から聞く限り、伯爵は軍人として立派に身を立て、羽振りもいいようだ。
末娘キャサリンは絶対に貴族に嫁がせると決めていたが、自身が貧乏貴族に嫁いで苦労したので、準貴族の軍人も悪くない。
これほど男ぶりも良ければ、キャサリンもすぐに彼に夢中になるだろう。
「まぁまぁ、そうだったんですね」
「母上、伯爵は移動で疲れてますから。今夜はこの辺で」
ポーラは興奮する母をやんわり制し、サニーとユージンに目配せした。
「そ、そうね。私ったら、お客様がいらっしゃるのが久しぶりだから、はしゃいでしまったわ。伯爵、ゆっくりお休みください」
「では伯爵、こちらへどうぞ」
ポーラは話し足りないという母を応接ホールに残し、館の西側の急遽用意した客間へとサニーを案内した。
館西側は元々使用人達が使っていた一帯で、床や壁が軋み、おまけに天井は低く、窓も少ない陰気な場所だった。
「こんな部屋ですみません」
「構わないよ、軍で野営もするしね」
ポーラは申し訳なくて恐縮したが、サニーもユージンも全く気にしなかった。
「さて、と」
サニー、ユージン、カイル、エドの四人は素早く目を合わせたと思うと、全員が各々の部屋ヘ行き、人が潜んでないか探し始めた。
特にサニーとユージンの部屋はより念入りで、隠し扉がないか床壁天井を叩き反響音を確かめるほど。
これは館に来たばかりのエドやカイルも同じ行動をし、ポーラは驚かされたものだ。
「隠し通路はないようです」
「こっちもだ」
「私達の部屋にもありませんでした」
「よし、応接室で話そう」
サニーの部屋には簡易の執務室、けん応接室を用意してある。
これはユージンからのオーダーだった。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
狂うほどに愛したい ~野球部補欠のオレでも超可愛い巨乳美少女マネージャーと熱い恋をしたい~ (健全版)
湯島二雨
恋愛
【注意! この作品にはレイプなど残酷な描写が含まれております!
ヒロインは処女ではありません。穢された女の子を救う物語です。】
野球部補欠のピッチャー、滝川竜。
後輩で巨乳美少女マネージャーの桐生美希に一目惚れする。
チキンな竜は美希に片想いを続けるだけで話すことすらできず、全く距離を縮めることができない。
野球で結果を残せば美希に認めてもらえるかもしれないが、残念ながら竜は球速には自信があるものの超ノーコンでなかなか試合で活躍することもできない。
男としても野球選手としてもしょぼい竜はそんな自分を変えたくて、美希と釣り合う男になりたくて、最強のピッチャーになることを目標にひたむきに練習を頑張っていた。
そんな時、彼女から試合で一番活躍した人にご褒美をあげると言われた。
それを聞いた竜はやる気が漲る。絶対に活躍すると誓った。
※モバスぺで掲載していた作品をリメイクしました。内容は大体同じです。
作者名違いますが同一人物です。
※暴力描写を含みます。★マークがついている章は残虐描写を含みます。
※表紙はAIで作成したヒロインの桐生美希です。
※一度削除されたので健全版にして再投稿です。
※ノクターンノベルズにてR18版も公開しております。
※カクヨムでも同じ作品を公開しております。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
私、この人タイプです!!
key
恋愛
美醜逆転物です。
狼獣人ラナン×自分の容姿に自信のない子キィラ
完結しました。感想やリクエスト、誤字脱字の指摘お待ちしています。
ここのページまでたどり着いてくださりありがとうございます。読んで頂けたら嬉しいです!
男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました
かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。
「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね?
周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。
※この作品の人物および設定は完全フィクションです
※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。
※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。)
※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。
※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる