爆弾魔の日記

藤白 圭次郎

文字の大きさ
上 下
5 / 6

焦燥感

しおりを挟む


「人間って嬉しいことよりも怖いことの方が覚えているんですよ」
スタジアムの裏手に売店を出している協力者は、仕切りにその話を口にした。
そうなのかと答える甲の興味は、完全にその話に移っていた。
「ええ、そうです。コミュニティの規範意識だとかで」
「子供の頃の思い出は嫌なことしか覚えてないのもそれなのか?」
「そうなんですよ!あれも生存のための本能だそうで」
成程いいことを聞いたと喜んでいる甲を押しのけ、
「早く確認に行け」
とせかした。
いいだろうが別に、と口を開くの予期し、
「よくないからな」と釘を刺す。
協力者は、気にしていないのか、気づいていないのか、何も言わずにそこに向かった。
「ないです」
と、程なくして協力者は、困り顔で戻ってきた。
「ないだと?」
取り除かれているとすればここ以外の二つ、階段かカメラスペースに仕掛けたものだと思っていた。そちらの方が圧倒的に合理的に見えるからだ。実際にはそれを見越して、売店に仕掛けたこの爆弾がメインで、他は解体されても問題ない構造にしてある。
「だから気遣いが足りてないと言っているんだ」
乙の呟きは甲には聞こえない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「鏡像のイデア」 難解な推理小説

葉羽
ミステリー
豪邸に一人暮らしする天才高校生、神藤葉羽(しんどう はね)。幼馴染の望月彩由美との平穏な日常は、一枚の奇妙な鏡によって破られる。鏡に映る自分は、確かに自分自身なのに、どこか異質な存在感を放っていた。やがて葉羽は、鏡像と現実が融合する禁断の現象、「鏡像融合」に巻き込まれていく。時を同じくして街では異形の存在が目撃され、空間に歪みが生じ始める。鏡像、異次元、そして幼馴染の少女。複雑に絡み合う謎を解き明かそうとする葉羽の前に、想像を絶する恐怖が待ち受けていた。

天使さんと悪魔くん

遊霊
ミステリー
キュートで笑顔が素敵な 天使さんと、いつも無感情でトゲトゲしてる 悪魔くんと普通な人間 同助のキズナの物語.... ある日突然主人公の一心同助(ドースケって呼んで)の家に天使さんと悪魔くんが訪ねてきた。 異次元からやってきた天使さんと悪魔くんは現世に居場所がなく仕方なくたまたま見かけた同助の家に居候することに。 困る同助はこのまま外にいたら何をしでかすか分からない二人を仕方なく受け入れる。 天使さんと悪魔くんは無事元の世界へ帰ることができるのか....? ※R15 全文がピエロで愚かです。

ユートピア

紅羽 もみじ
ミステリー
一見、何の変哲もない事件。しかし、その裏を探っていくと歪み切った人間たちの思惑が交錯していた。 「彼ら」を救えるのは、事実か、虚実か。

影蝕の虚塔 - かげむしばみのきょとう -

葉羽
ミステリー
孤島に建つ天文台廃墟「虚塔」で相次ぐ怪死事件。被害者たちは皆一様に、存在しない「何か」に怯え、精神を蝕まれて死に至ったという。天才高校生・神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に島を訪れ、事件の謎に挑む。だが、彼らを待ち受けていたのは、常識を覆す恐るべき真実だった。歪んだ視界、錯綜する時間、そして影のように忍び寄る「異形」の恐怖。葉羽は、科学と論理を武器に、目に見えない迷宮からの脱出を試みる。果たして彼は、虚塔に潜む戦慄の謎を解き明かし、彩由美を守り抜くことができるのか? 真実の扉が開かれた時、予測不能のホラーが読者を襲う。

アサシンのキング

ミステリー
経験豊富な暗殺者は、逃亡中に不死鳥の再生を無意識に引き起こし、人生が劇的に変わる。闇と超自然の世界の間で、新たな力を駆使して生き延びなければならない。

残響鎮魂歌(レクイエム)

葉羽
ミステリー
天才高校生、神藤葉羽は幼馴染の望月彩由美と共に、古びた豪邸で起きた奇妙な心臓発作死の謎に挑む。被害者には外傷がなく、現場にはただ古いレコード盤が残されていた。葉羽が調査を進めるにつれ、豪邸の過去と「時間音響学」という謎めいた技術が浮かび上がる。不可解な現象と幻聴に悩まされる中、葉羽は過去の惨劇と現代の死が共鳴していることに気づく。音に潜む恐怖と、記憶の迷宮が彼を戦慄の真実へと導く。

母からの電話

naomikoryo
ミステリー
東京の静かな夜、30歳の男性ヒロシは、突然亡き母からの電話を受け取る。 母は数年前に他界したはずなのに、その声ははっきりとスマートフォンから聞こえてきた。 最初は信じられないヒロシだが、母の声が語る言葉には深い意味があり、彼は次第にその真実に引き寄せられていく。 母が命を懸けて守ろうとしていた秘密、そしてヒロシが知らなかった母の仕事。 それを追い求める中で、彼は恐ろしい陰謀と向き合わなければならない。 彼の未来を決定づける「最後の電話」に込められた母の思いとは一体何なのか? 真実と向き合うため、ヒロシはどんな犠牲を払う覚悟を決めるのか。 最後の母の電話と、選択の連続が織り成すサスペンスフルな物語。

停止列車

テトラポット
ミステリー
僕は今も、列車に乗り続けている。 この列車が止まることは決してない 僕以外には誰も乗っていない ずっとずっと、僕が降りることは無い。

処理中です...