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もうすぐクリスマス

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 さて色々あったが、あれから数週間が過ぎてもう雪が降り始めている我が田舎町。いつも通りのダサい作業着はジャケットで隠せるのが救いだ。社長は……
「気合が足りない!!」
「俺が風邪引いたらどうしてくれるんですか? 誰が事務所守るんですか?」
「うぐっ!」

 と言うやり取りで納得させた。もうこんな季節か……毎年リア充爆発しろ、何て思っていたんだけどな……今はまぁ独りじゃない、むしろ騒がしく今年が過ぎようとしている。ヤエ、ヒエ、茉希ちゃん、愛社長、4人かぁ実質3人だけどね! まぁ上手くやって来たと思っている。

「よいしょっと!」
 まーた社長が何か出してるよ、予想はつくが。
「これクリスマスツリーね」
「見れば分かりますけど……まさか?」
「飾り付けヨロシク! アタシは営業だ!」
「ちょまっ!」
 そう言うと勢い良く事務所から出て行った、来客もそんなに無いのにこんな気合の入ったツリーどうすんだよもう。ささっとツリーを飾っていく、子供の頃はクリスマスが楽しみでおもちゃ屋のチラシが楽しみだったけ……歳を重ねて恋人ができてクリスマスの意味合いも変わっていった、昔の話だ……意外と多い飾り付けを終わらせる。でもこれってクリスマス過ぎたらすぐに片付けるんだよなぁ多分、その時は社長にもやってもらおう多分時期的に仕事納めだろうし。
 ツリーの飾り付けを終えると、気になっていた会社の書類に一通り目を通す……やっぱりな、書類のいくつかにはこれから起きるであろう事が書かれた書類があった。通りで出来るオンナだった訳だ、社長は未来から来た人間、おまけに元市長の孫娘それなりに人脈も把握した上で仕事をしている訳か……儲かる訳だよ。
「ちょっと八神君ね盗み見は良くないよ?」
「おかえりなさい社長」
「書類見ちゃったのね~」
「ちゃんと綺麗に片付けておかないからですよ?」
「まっ隠す必要もないし八神君ならね!」
「いくら将来が分かってるとはいえ、此処まで会社として独りで立ち上げたんだから社長は凄いや……」
 まぁ手段をどう選んだかは聞かない方が良いだろうが……
「アタシは出来るオンナだからね! よっし仕事モード終わり! お疲れ師匠!」
「お疲れ様です社長、もうすぐ仕事納めです?」
「そうでも無いんだよ~分かってるとは思うけど、クリスマスのイベントが終わったらね、年末年始の各神社、日枝神社に八幡神社での初詣それに……」
 それって仕事納めないじゃん
「社長……俺も最後迄ちゃんと付き合いますよ」
「まぁ日雇いバイトもいるからアタシ達は、各イベント本部で踏ん反り返ってれば良いよ?」
「これを着て?」
 最高にダサい作業着を指差すと
「ご不満?」
「我慢します……」
「大丈夫だって! 終わったら良い事があるから! ほら早く帰りなよ!」
「それじゃ失礼します、また明日」
「ほいお疲れ様!」
 会社を後にして家路へと向かう、外はすでに雪が降っていた。もうクリスマスかぁ……何かしたほうが良いのかなぁ? 他所の国の神様の降誕祭だろ確か、一緒に暮らすアイツ等は元日本の女神だったからどうなんだろ? 帰ったら聞いて見ようか。
「ただいま~」
「「おかえり~」」
「あれ? ヒエと茉希ちゃんだけ?」
「うんヤエは残業だってさ、夕飯遅くなるけど待っててってメールがきたよ」
「そっか」
 ささっと部屋着に着替え何時もの座椅子に座り一息つくと、ヒエと茉希ちゃんがトチに何か着せていた。トチが嫌がる様子も無いので覗くと……
「ちょっと何着せてんの?」
「クリスマスのお着替えよ! 私の手作り!」
 今なんて言ったこの元女神、クリスマスだと? クリスマスの概念があるのか?
「おいヒエ、お前クリスマスって知ってるのか?」
「んあ? 知ってるわよ! 皆でご馳走食べてケーキ食べてプレゼント貰えるんでしょ?」
 コイツ……まぁ間違っていないが良いのかなぁ?
「あのさクリスマスって他所の国の神様の降誕祭何だけど、分かってる?」
「他所はよそ家はうち、『きりすと』でしょう? どうでもいいわよ楽しければ」
「おっおう……そうか?」
「クリスマス前だからこそヤエも忙しいらしいよ」
「惣菜屋だもんね、ちゃんとアタシが予約しておいたよオードブル」
「はぁ!?」
「クリスマスパーティーしないつもりアンタ?」
「ケーキも予約済み! アタシ出来るオンナだからね」
「楽しみね~トチ」
 出来るオンナってそうじゃない気がするけど、パーティーねぇ……クリスマス迄後数日か、茉希ちゃんとヤエは気にしないだろうけどヒエはさっき『プレゼント』って言ってたな、つまり……
「あ~何貰えるのかなぁ~楽しみだなぁ~」
 わざとらしい! 本当にコイツは! しょうがないプレゼント何か考えるか……んっ! でも後数日だから買いに行く暇は無い、通販サイトで探すか。スマホで通販サイトを見てみるとクリスマス迄届く様にするには、今日中に注文しなければ行けないらしい……何で!?
「一応聞くけどさ……もうプレゼントとか用意しちゃった?」
「さぁどうかしらね~?」
「茉希ちゃんは?」
「さぁね?」
 ヤバいな多分俺の知らない所で何かしてる、何とかしないと俺の立場が……急いで3人……いや4人分だな、何かプレゼントを考えなきゃ……
「師匠……まさか……」
「ソンナコトナイヨー!」
 誤魔化すが、だってクリスマスなんてやるなんて思っていなかったんだもん! 今更何が欲しい? は無いよな……どうする! 考えろ俺!
「ただいま! 遅くなちゃった、今夕飯作るわね!」
「おっお帰りヤエ!」
「うっうん、どうしたのアナタ?」
 上ずった声で迎える俺を不思議そうに見てくる、ヤエになら聞いてもいいかな? しかしヒエと茉希ちゃんがニヤニヤしている、駄目だ俺はもう手遅れだ!
「キョウノユウハンナニカなー」
「? 肉じゃがだけど……嫌だった?」
「そんなわけ無いよ! そっか~楽しみだなぁ、うん!」
「良かった、支度するから待っててね」
 あぁどうしよう……きっと俺だけ何も用意していないんだろう、ヒエと茉希ちゃんの俺を見る顔を見れば分かる。

 慌ててプレゼントを検索する俺を期待に満ちた表情で見つめる2人を背に感じながら……
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