君には贈れない花 花公爵の懺悔

侯爵令嬢だった私は家を出た。私を苛むことしか考えない家族を捨てて。
 シオン様が何故赤い薔薇しか下さらないのか知らなかったから────。

『フレディ見て! シオン様から戴いたお花よ?』

 ええ、そうね。わかっていたわ。 
 シオン様もお姉様を好きになると。
 でも、どうしてこんなに苦しいのかしら? 
 シオン様が微笑んでくださらなかったから?
 お姉様が戴いたお花がガーベラだったから? 
 そしてそのガーベラが黄色だったから?

 フレデリカは抱えた花を見る。

 ──それとも私にはまた赤い薔薇だったから?

 姉の喜ぶ声が頭から離れない。
 お花の好みだけは、お姉様とそっくりなのに。
 ガーベラをいただけるのはお姉様だけ。


※14項に強めの残酷描写が入ります。ごめんなさい。どうぞご注意ください。

*第二章は第一章完結から12年後のお話で、主人公が変わります。
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