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手紙
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あれは、高校の窓から見える茜色の夕焼けが差し込む教室だった・・・。
僕らの出会いは、あまりにも儚く、尊い秋の紅葉の様だった。
僕は藤崎 春真
北麻乃高校2年B組に通うどこにでもいるただの高校生だ。
しかし、そんな僕の日常があの子との出会いで180度変わってしまうなんて・・・
その時は想像も出来なかった。
いつもの様に通学路の電車に乗り込み、程よく人が密集する満員電車の中だった・・・
僕はいつもの様に開閉ドアの近くで小説を片手に大好きな音楽をスマホからイヤホンをつけて流していた。
「いつも通りの日常が流れるだけ・・・つまんねぇな」そう心でボヤいていた。
しかし、その日はいつもとは少しだけ違っていた。
僕の目の前に、同じ学校の同じ歳くらいの女の子がドアの閉まる寸前のところで駆け込んできた。
風で少しなびく肩まで伸びた黒髪がとても綺麗で、モデルのようにスラリとした立ち振る舞いに、僕は瞳を奪われていた・・・
そう、僕は気づいてしまったのだ。これが、初恋なのだということに・・・。そして、この恋があれほどまでに僕の心に大きく影響と深い傷を残すことになるなんて、この時はまだ知る由もなかったのだ・・・。
それからというもの、僕は彼女を意識するようになり、彼女と電車で乗り合わせる度に小説を読むふりをして彼女の姿を見つめていた・・・
「こんなの変態みたいじゃん」と思いつつも彼女の魅力の虜になっていた僕は、そんなことを考えるだけの正常な思考など残しておく余力などなかった。
僕は次第に、どうにかして彼女とのコンタクトをはかろうとしていた・・・
「ここまで来ると末期だな・・・」そう頭で考えると少し恥ずかしくなって顔を本に填めてしまっていた・・・
ふと我に返り頭を上げると、彼女は僕を見てクスりと口元に軽く手を当てて笑った。
この瞬間、彼女とのコンタクトを取れていることに気づき、少し彼女の方を見つめてしまっていた。
彼女の薄く微笑む笑顔に僕は吸い込まれていた。
次の瞬間、僕と彼女の目が合った!通常の時間はほんの数秒の出来事なのに、僕は何分間も彼女と見つめあっていたように錯覚するほど、彼女はとても綺麗で澄んだ瞳をしていたのだ。
「この時間が終わらないで欲しい」そう思うのもつかの間、彼女は少し頬を赤らめて視線を逸らした。それに流される形で僕も読みかけの小説に目を落とした。
あのひと時の余韻が微かに残る中、再び視線を彼女の方に戻すと、彼女は自身のバックからノートを取り出しておもむろに何かを書いていた。
僕はそれを気にしつつそれを誤魔化そうと小説を読むふりをしていると、彼女がこちらにノートを向けた。
するとそこには「私の名前は、永野 茜あなたのお名前は?」と書かれていた。
僕はそれに返事をするために同じくノートとペンを取り出して答える「僕は、藤崎 春真です。その制服ウチのだよね?」と続けて返した。
何故この質問をしたのかと言うと、制服は同じ学校のモノなのに、彼女を学校で見かけたことが1度もないのだ。
だから僕は、同じ歳に見えるだけなのだと思ってこの質問を投げかけることにしたのだが・・・
その答えを待たずして最寄りの駅に着いてしまった。
そして、いつも彼女の方が出口に近くいつも彼女を見失ってしまうのだ。
「聞きそびれてしまった」僕はそう思ったが同じ学校ならばまたいつでも会える!そう思っていた。
そんなことはつかの間、彼女は学校中どこを探しても見つからず、誰も彼女の存在を認知していなかったのだ。
僕も疑問に思う点はいくつかあった・・・
まず、電車に乗り込む時はいつも閉まる寸前のタイミングで扉も彼女を認知していないかのように閉まること。
そして、もうひとつは・・・
乗客も誰一人として彼女の存在に気がついていないような振る舞いをしていることである。
まるで存在していないかのような扱いに僕は疑念を抱き始めていた・・・。
僕は全てを思い出してしまった。
僕には中学からの片思いの相手がいた事を、そしてその子の名前が「永野 茜」であるということを・・・
そんな彼女は僕に渡したい物があると告げ、電車の事故にあってこの世を去ってしまっていたことを・・・
そして、彼女が僕に渡そうとしていたのは・・・
一通の手紙。
彼女が必死で守ろうとして彼女の血で真っ赤に染まった茜色の手紙だった・・・。
そう、僕はその事がショックで意識を失って病院のベッドでずっと眠ってしまっていたのだ。
愛する人を目の前で失ってしまった悲しみと、彼女の口元が微かに「す、き」と囁きながら電車の事故に巻き込まれ、そのまま亡くなってしまった・・・
その手紙を読むことはなく、僕はその場で倒れ込んでしまい意識を失ってしまっていたのだ。
そして、このことを思い出した時僕の意識は戻っていた
何があったかも分からず朦朧とした目を開くと窓から吹き抜ける爽やかな風が吹き込んでいた・・
紅葉色ずく秋の季節、僕は元の生活を取り戻していた。
ひとつ違うことといえば、僕の傍には彼女がいるということ。
そして、あの時の手紙は新しい封筒に入れていつも傍に身につけている。
たった一つの彼女の形見として・・・
僕らの出会いは、あまりにも儚く、尊い秋の紅葉の様だった。
僕は藤崎 春真
北麻乃高校2年B組に通うどこにでもいるただの高校生だ。
しかし、そんな僕の日常があの子との出会いで180度変わってしまうなんて・・・
その時は想像も出来なかった。
いつもの様に通学路の電車に乗り込み、程よく人が密集する満員電車の中だった・・・
僕はいつもの様に開閉ドアの近くで小説を片手に大好きな音楽をスマホからイヤホンをつけて流していた。
「いつも通りの日常が流れるだけ・・・つまんねぇな」そう心でボヤいていた。
しかし、その日はいつもとは少しだけ違っていた。
僕の目の前に、同じ学校の同じ歳くらいの女の子がドアの閉まる寸前のところで駆け込んできた。
風で少しなびく肩まで伸びた黒髪がとても綺麗で、モデルのようにスラリとした立ち振る舞いに、僕は瞳を奪われていた・・・
そう、僕は気づいてしまったのだ。これが、初恋なのだということに・・・。そして、この恋があれほどまでに僕の心に大きく影響と深い傷を残すことになるなんて、この時はまだ知る由もなかったのだ・・・。
それからというもの、僕は彼女を意識するようになり、彼女と電車で乗り合わせる度に小説を読むふりをして彼女の姿を見つめていた・・・
「こんなの変態みたいじゃん」と思いつつも彼女の魅力の虜になっていた僕は、そんなことを考えるだけの正常な思考など残しておく余力などなかった。
僕は次第に、どうにかして彼女とのコンタクトをはかろうとしていた・・・
「ここまで来ると末期だな・・・」そう頭で考えると少し恥ずかしくなって顔を本に填めてしまっていた・・・
ふと我に返り頭を上げると、彼女は僕を見てクスりと口元に軽く手を当てて笑った。
この瞬間、彼女とのコンタクトを取れていることに気づき、少し彼女の方を見つめてしまっていた。
彼女の薄く微笑む笑顔に僕は吸い込まれていた。
次の瞬間、僕と彼女の目が合った!通常の時間はほんの数秒の出来事なのに、僕は何分間も彼女と見つめあっていたように錯覚するほど、彼女はとても綺麗で澄んだ瞳をしていたのだ。
「この時間が終わらないで欲しい」そう思うのもつかの間、彼女は少し頬を赤らめて視線を逸らした。それに流される形で僕も読みかけの小説に目を落とした。
あのひと時の余韻が微かに残る中、再び視線を彼女の方に戻すと、彼女は自身のバックからノートを取り出しておもむろに何かを書いていた。
僕はそれを気にしつつそれを誤魔化そうと小説を読むふりをしていると、彼女がこちらにノートを向けた。
するとそこには「私の名前は、永野 茜あなたのお名前は?」と書かれていた。
僕はそれに返事をするために同じくノートとペンを取り出して答える「僕は、藤崎 春真です。その制服ウチのだよね?」と続けて返した。
何故この質問をしたのかと言うと、制服は同じ学校のモノなのに、彼女を学校で見かけたことが1度もないのだ。
だから僕は、同じ歳に見えるだけなのだと思ってこの質問を投げかけることにしたのだが・・・
その答えを待たずして最寄りの駅に着いてしまった。
そして、いつも彼女の方が出口に近くいつも彼女を見失ってしまうのだ。
「聞きそびれてしまった」僕はそう思ったが同じ学校ならばまたいつでも会える!そう思っていた。
そんなことはつかの間、彼女は学校中どこを探しても見つからず、誰も彼女の存在を認知していなかったのだ。
僕も疑問に思う点はいくつかあった・・・
まず、電車に乗り込む時はいつも閉まる寸前のタイミングで扉も彼女を認知していないかのように閉まること。
そして、もうひとつは・・・
乗客も誰一人として彼女の存在に気がついていないような振る舞いをしていることである。
まるで存在していないかのような扱いに僕は疑念を抱き始めていた・・・。
僕は全てを思い出してしまった。
僕には中学からの片思いの相手がいた事を、そしてその子の名前が「永野 茜」であるということを・・・
そんな彼女は僕に渡したい物があると告げ、電車の事故にあってこの世を去ってしまっていたことを・・・
そして、彼女が僕に渡そうとしていたのは・・・
一通の手紙。
彼女が必死で守ろうとして彼女の血で真っ赤に染まった茜色の手紙だった・・・。
そう、僕はその事がショックで意識を失って病院のベッドでずっと眠ってしまっていたのだ。
愛する人を目の前で失ってしまった悲しみと、彼女の口元が微かに「す、き」と囁きながら電車の事故に巻き込まれ、そのまま亡くなってしまった・・・
その手紙を読むことはなく、僕はその場で倒れ込んでしまい意識を失ってしまっていたのだ。
そして、このことを思い出した時僕の意識は戻っていた
何があったかも分からず朦朧とした目を開くと窓から吹き抜ける爽やかな風が吹き込んでいた・・
紅葉色ずく秋の季節、僕は元の生活を取り戻していた。
ひとつ違うことといえば、僕の傍には彼女がいるということ。
そして、あの時の手紙は新しい封筒に入れていつも傍に身につけている。
たった一つの彼女の形見として・・・
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