人生ゲーム

竹内 晴

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第拾陸章

恵の光

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 恵と和真が楽しげに話していると優斗が部屋に戻ってきた。

 「お、思ったより早く打ち解けてるじゃん」

 優斗がいつものように笑顔で言った。恵と和真は優斗を通して繋がりを得ることとなった。3人で楽しく話していると、突然和真の脳裏に見たこともないような景色が飛び込んできた。

 「やめて、やめてよ父様!ぐ・・・、ぐあああぁぁぁ。痛い、痛いよ・・・。」

 和真が頭を抑えて一瞬ふらつく。それを見た優斗と恵が心配そうに和真に声をかける。

 和真が見たのは、まるで天国のように美しい神殿内部の城壁と、美しく神秘的な大扉へ続くレッドカーペットが敷かれた長く大きな廊下だった。その廊下を誰かに無理やり引っ張られ、大扉が開くとその中には・・・。

 神秘的な雰囲気とは裏腹に、拷問器具や手錠といった尋問部屋のような場所だった。その部屋で父親らしき人物から何度も何度も拷問を受け、体からは血が流れ出ていた。

 しかし、そんなことはお構い無しに拷問は続き、尋問という名の体罰が24時間止むことは無かった。その拷問の中で和真は、憎悪ぞうおにも似た何か、憎しみ、怒り、殺意が入り交じったような感情が込み上げてくるのを感じていた。

 「殺してやる・・・殺してやる・・・殺してやる・・・」

 痛みに耐え、涙を流しながらボソボソと呟いていた。

 「ごめん・・・2人とも。少しめまいがしただけだから。少し休めば大丈夫だよ。」

 2人に心配をかけないと和真が落ち着かせるために、優斗が入れてきてくれたお茶を一気に飲み干した。「ホッ」とため息を着くと顔色も少し良くなり、落ち着いた表情を浮かべていた。

 同じ頃、エデンガーデンでは・・・。

 (ぐっ・・・、まただ、またあの人間・・・。我の中に土足で踏み入るとは・・・。運命イベントの影響か?以前にも増して互いの心がリンクしたというのか?)

 ゼウスもまた、和真の過去を見ていた。

 「そろそろ帰るか?和真も体調悪いみたいだしな。今日は突然呼び出して悪かったな。」

 モニターから聞こえる優斗の声に反応し、ゼウスが再び苦しみながらもモニターを見る。

 「1人で大丈夫か?すぐそことは言え、お兄ちゃんは心配だぞ~?」

 優斗が少し茶化すように言った。

 「大丈夫だって、つかその言い方バカにしてんだろ?」

 和真が、(いつまでもガキと思いやがって)と言わんばかりに、優斗をじっと見つめた。

 「大丈夫大丈夫!私がちゃんと責任もって送り届けるから!」

 そういうと恵が和真の腕にしがみついた。

 「おいおい、あんましがみつくなって。けちゃうだろ?」

 優斗が冗談交じりに恵に言った。こうして和真は恵に連れられ歩き始めた。優斗の姿が見えなくなった辺りに差し掛かると、恵が和真の方を見て話し始めた。

 「ね?和真くんさー!優斗とはいつ頃からの付き合いなの?」

 恵の問いかけに「覚えてねー」と照れながら顔を背けて言った。すると恵が「まぁ~いいや」と話を続けた。

 「私にとって優斗は光なんだよね。優斗と出会う前は毎日が平凡で、ただ時間が過ぎてくって言うか・・・。人生っていうレールをただ意味もなく歩いてるだけって思っててさ。なんか、時々思うんだ~。人生は既に完結していてそのレールをただ歩いてるだけなのかなって・・・。」

 「でもね、優斗がそんな日常に光をくれたの!和真くんとも出会えたし、今はすごく充実してて楽しいなーって・・・。」

 恵が和真を見て笑顔で言った。和真は、その笑顔を見て思っていた。

 (優斗兄にとっての光はきっと恵さんの笑顔なんじゃないかな・・・。)

 和真が帰りながら考えていた。その時、「ピコン」とLINEの連絡が来た。

 「恵さん、俺今からよるとこあって・・・。この辺で大丈夫です。」

 恵がにっこりと笑った。

 「もしかして、彼女?」

 その笑顔に和真がよからぬ事を企んでいるのではと思いつつ答える。

 「いや、友達からです。」

 その回答に恵が怪しいと言った眼差しを向ける。その目に負けて和真が素直に応えた。

 「はぁ、そうです・・・。今日帰るみたいで、駅まで来れないかって連絡です。」

 「私も行っていい?」

 予想通りの質問に渋々了承する。

 「少し待ってください。彼女にも聞いてみないと・・・。俺だけでは応えかねます。」

 和真がLINEをしている隣でウキウキしている恵。しかし、和真には大きな疑問があった。

 (何故なぜこんなに俺の彼女に対して興味があるのだろうか?)

 この疑問を解消すべく、返事を待つ間恵に尋ねることにした。

 「恵さん。どうしてそんなに興味があるんですか?俺のことに関してもそうですけど、彼女に対しては会ったことすらない相手じゃないですか?俺にはそれが分かりません。」

 その質問に対して恵がきょとんとした表情で応える。

 「なんでって言われてもなー。和真くんは優斗の弟の様な存在でしょ?だったらその彼女の私もは和真くんからすればお姉さんな訳だ!だったら、どんな子と付き合っててその子に挨拶あいさつするのは当たり前じゃない!」

 恵がドヤ顔で和真に言った。その表情に呆れる和真だったが、その質問をした自分自身を深く悔やんでいた。

 (聞くんじゃなかった・・・。)

 そう思っていると、「ピコン」とLINEの通知が来た。

 「大丈夫だよ?和真にとって大切な人なんでしょ?私も彼女としてちゃんと挨拶しないとだしね♪♪」

 和真がLINEの内容を見て少し硬直していると、恵が開かれたままのLINEの内容を見て今までで1番の笑顔を和真に向ける。

 「すごくいい子じゃない?!お姉さん、和真くんの彼女と早く会いたいな~。」

 和真はため息をつき駅へと向かった。
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