人生ゲーム

竹内 晴

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第拾伍章

駒の運命

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 葵は翌日学校に来なかった。幼なじみである和真は葵をよく知っていた。葵がなんの理由もなく学校を休むことなどないことを・・・。

 葵はとても真面目であり、和真は今まで葵が休んだ姿を見たことはなかったのだ。そのため、和真は葵のことが誰よりも気になっていた。しかし、その原因が自身にあることは和真には分からずにいた。そのため、和真の考えていることは、逆に葵を苦しませる結果になることなど知る由もないなかった。

 放課後、葵を心配に思った和真は葵の家に向かった。しかし、結果は葵の家には入れず門前払もんぜんばらいをくらった。

 (どうして、今までこんなことなかったのに・・・)

 和真が今までにないことばかり起こることで少し戸惑っていた。和真は仕方なくその場を跡にした。

 葵は自室のカーテンの隙間から和真の姿を見ていた。その姿を見て昨日さくじつの出来事を思い出していた。

 (昨日きのうの女性は誰だったの?私じゃ・・・私じゃダメだったの?こんなにずっと一緒にいたのに・・・。)

 葵が今までに感じたことの無い感情に支配されていた。この気持ちを理解出来ず、和真に会うことを恐れていたのだ。その結果葵は無意識に和真を遠ざけようとしていた。

 「ごめんね・・・和真」

 翌日、葵は学校に登校してきた。しかし、和真の顔を見ることは出来ず、和真と目が合うことを避けてしまっていた。

 (なんだよ、俺が何かしたってのか?)

 和真は葵の行動に少し苛立いらだちを感じていた。2人の距離は少しずつ遠ざかって行った。

 その頃、エデンガーデンではサイコロが振られようとしていた。

 「では、次の順番に移行させて頂きます。メーティス様サイコロを振って下さい。」

 カオスのかけ声により再びサイコロが振られた。

 サイコロの目は④が出て、メーティスの駒は4マス進みました。ここで、ゼウスとメーティスの駒が同じマスに止まり、アマテラスの時同様に運命イベントが発生しました。

 「これより2つの駒の命運は運命イベントによって決定致します。」

 全ての神が、その運命がどうなるのか集中するようにモニターを見つめました。

 「なんだよ!葵の奴、なんであんなに避けるんだよ・・・。」

 和真が1人物思いにふけりながら歩いていると、「ピロン」とスマホの通知がきた。和真がスマホを見てため息をつく。

 そのため息の意味とは・・・。

 「なんだよ、急に呼び出して・・・。ほんとにいつも唐突に呼び出すよな。優斗兄は・・・。」

 そういうと、和真が少し嫌そうな顔をして言った。

 「わりぃ!」

 あどけない笑顔で優斗が言った。和真はいつもその笑顔を見て言い返す気が失せてしまうのだ。

 「で、さっきのLINEの件だけど何?」

 和真が早く本題を終わらせたそうに言った。

 「そうなんだよ!和真には紹介しておかないとなって思ってさ!紹介するよ、安達恵あだちめぐみだ!初めてだよな?和真に会わせるのは?」

 優斗があっけらかんとした表情で話していると、和真がやっぱりそうかと言わんばかりの表情でため息をつく。つまりLINEの内容は紹介したい人がいるといった内容のものだったのだろう。そんな和真の気を知ることも無く、優斗が話を進める。

 「いやー、恵がずっとお前に会いたがっててさ~!やっと紹介できてお兄ちゃんは嬉しいよ!」

 優斗が子供のような無邪気な笑顔で和真を見た。その笑顔に再びため息をつく。

 「用はそれだけだろ?んじゃ俺は帰るから。恵さん、優斗兄のことよろしくお願いしますね。優斗兄バカだからちゃんとしつけしておいて下さい。」

 和真はその言葉を言い残してその場を立ち去ろうとすると、優斗が和真のカバンを掴み引き戻そうとする。しかし、この後に言われかねないセリフを予測していた和真が意地でも戻るまいと抵抗を続ける。しかし、健闘むなしくあえなく引き戻されてしまう和真。

 「ごめんごめん、コイツ照れ屋だから。それじゃ、家入ろっか?」

 和真が諦めた表情で渋々優斗宅に入って行った。部屋に着くなり優斗が慌てて立ち去る。

 「家ん中すげー散らかってたっしょ?なんか飲みもん入れてくるから待ってて!」

 残された恵と和真の間には沈黙と重たい空気だけが漂っていた。先に痺れを切らしたのは和真だった。

 「あの~、本日はお誘い頂きありがとうございます。2人の大切なお時間なのにお邪魔してしまってすいません。」

 和真が軽く会釈えしゃくをして謝罪をする。すると、恵の口からは意外な言葉が飛び出した。

 「わたしずっと和真くんに会ってみたかったの!優斗から聞いてるよ?仏頂面ぶっちょうづらで彼女もろくにできたことの無い弟みたいな幼なじみがいるって!でも、実は和真くん彼女いるでしょ?」

 恵の確信をつく質問に思わずドキッとしてしまう和真。しかし、人を見る力を養ってきていた恵は、和真の小さな変化を見落とすはずもなく、和真に更なる質問を投げかける。

 「やっぱり!最初見た時から優斗の話で聞いてた仏頂面がなかったもん!って言っても最初のはただの女の勘なんだけどね。で、彼女はどうなの?可愛い?」

 怒涛どとうの質問攻めと女の勘に少し脅威を感じていた和真は、まるで肉食獣に睨まれた小動物のようになっていた。

 「和真くん可愛い!ごめんね、普段の女の子と話す時みたくなっちゃった。」

 その笑顔は、イタズラをしている時の子供のようにあどけない笑顔で、この時和真は美空と無意識の内に重ねてしまっていた。その瞬間、少し寂しそうな表情で下を向いた。

 「ごめんごめん、おねーさんやりすぎちゃったかな?」

 少し慌てる恵を見て、くすくすと笑いを堪える和真。疑問に思った恵が覗き込むと、「やってやった」と言わんばかりの笑顔で和真が笑っていた。

 「も~、あまり年上をからかうもんじゃないよ!?」

 恵が不貞腐れたように言った。しかし、恵も満更でもなかったと言わんばかりに、少し拗ねた表情で和真を見た。
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