人生ゲーム

竹内 晴

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第参章

運命に従え

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 (これより運命イベント開始となります。ここで起こりうるは皆様の身にとして降りかかります。覚悟はよろしいですか?)

 謎の声が最後の確認をする。

 「覚悟?愚問ぐもんだな」

 「わたくしも、このゲームを始めると決めた時より、この命を賭ける覚悟はできております」

 最高神とアマテラスが応えた。

 (かしこまりました。それでは、モニターにご注目下さい。)

 掛け声と共に一同がモニターに注目した。

 ここは下界げかい、和真と葵の登校である。

 「和真ってさ~、いっつも無愛想ぶあいそうだよね~。そんな仏頂面ぶっちょうづらじゃ彼女もできないでしょ?」

 葵は和真の方を見て小馬鹿こばかにしたように笑った。

 「大きなお世話だ!そんな相手がいてもつまんねー世界には代わりないだろ?」

 「またそんなこと言って~、分かんないよ?だって和真いたことないでしょ?」

 葵はクスクスと笑った。

 「そんなのできてなくても分かるよ」

 少し不貞腐ふてくされた態度で葵に反抗した。

 2人は他愛たあいもない会話をしながら学校へ向かっていた。

 何気ない時間、いつもと変わらない何の変哲へんてつもない生活、呆れるほど平和な日常。この生活に飽き飽きしていた和真はどこか刺激を求めていた。

 その時・・・

 和真の背後よりブレーキ音が響く。和真はその音にふと我に返り音の方へ視線を向けた。

 危ない!

 周囲の人間の悲鳴と叫びが木霊こだまする中、車は止まることなく和真たちの方へと突っ込んできた。和真はとっさに葵を抱きしめ、車を交わすように跳び避けた。

 それと同時に、「エデンガーデン」にいる最高神の身に痛みが走ったと同時にアマテラスの方を薄く開いた目で見ると、アマテラスも軽傷ではあるが身体からだにかすり傷ができていた。

 和真は、恐らく葵をかばい擦り傷と打ち身による軽度な打撲だぼくをおっていた。葵は、和真に庇われ軽傷で済んでいたが、一歩間違えれば2人とも命を落としていた。

 「これが・・・人生ゲームか」

 その言葉と同時に、不敵ふてきな笑みを浮かべてニヤリと笑っていた。

 その姿に場が凍りつく。

 「狂っている・・・」思はずウラヌスが呟いた。

 時を同じくして、「大丈夫ですか!?」

 その現場を見ていた人達が和真と葵の安否あんぴを確認しようと声をかけていた。

 その声に反応して葵が、和真の腕の中で目を覚まし、朦朧もうろうとする意識の中で周囲を見渡した。すると、隣で血を流す和真の姿があった。

 葵は、その姿に取り乱し「和真!和真!」と和真の身体を揺らしながら叫んだ。

「そんな揺らすなって・・・、痛いだろ・・・」

 そう言いながら、重たい体を起こす。

 葵は涙目になりながら和真を抱きしめた。

 「そんなに抱きつかれたら痛いって・・・大丈夫だから、ありがとう」

 そういうと和真は、葵の肩をそっと掴み、自分の身体から引き離すと、和真はその場に立ち上がった。

 周囲の心配を押しのけ、和真が学校へと足をすすめる。

 「ダメだよ!ちゃんと治療しないと!」

 和真が振り返ると、葵が泣きながら引き止める。

 それと同時に「エデンガーデン」のアマテラスの目にも涙が流れた。

 「わたくしは、一体どうしてしまったのでしょう?」

 それもそのはず、アマテラスにはなんの感情もなく、涙など出るはずもありませんでした。

 (言ったはずですよ?これから起こることは全て現実のモノになると・・・)

 アナウンスが流れた。

 盤上で起こる出来事に関わらず、その人間の身に起こりうるであろうイレギュラーですら、自身の体に起こってしまう。その事を身をもって体感し、一同は改めて自分たちの状況を再認識した。

 (このままわたしたちはただ死を待つだけでよいのかしら・・・)

 この時、メーティスは疑問を持っていた。

 下界の方で新たな動きがあった。軽傷とは言え、打撲で痛む身体を抑えながら和真が歩き出した。

 「別に大した怪我じゃない。血は出てるが軽い擦り傷だし、打撲も大したことは無い。学校に着いたら湿布しっぷでも貰えば大丈夫だ。」

 そう言うと和真は学校へと向かう。

 和真のことを放っておくことが出来ない葵は、心配な気持ちを振り切って和真の元へと駆け寄る。

 「ほんとに大丈夫?」

 「ほんとに大丈夫だって・・・葵が無事で良かった」

 その言葉に葵は、少しほほを赤らめてにっこりと笑った。

 「和真はほんと素直じゃないよね~。まぁ、いいけどさ~。」

 葵は、さっきまでの心配だった気持ちを忘れた様に無邪気に笑った。

 「その笑顔がずるいんだよ・・・」

 和真の呟きに葵が「何か言った?」と尋ねるが、「何もない」と軽くあしらわれた。葵は頬を膨らませて拗ねた。

 今回の一件で、和真の中に1つの疑問が生まれた。

 (いつまでこんな何気ない日常が過ごせるのだろうか・・・)

 和真にとって、葵との日常は居心地がよく、楽しい時間なのだろう。それと同時に、和真は1つの疑問をいだいていた。

 (確証はないが、一瞬のことで俺もはっきりとは覚えていないが・・・。あの車には、人が乗っていなかった。葵はそもそも車の存在にしか気がついていなかっただろうし、周囲もとっさのことで気づいていないとは思うが・・・。あれは一体、ポルターガイスト?!いや、そんな非科学的なことになんの根拠こんきょもないな。)

 こと時の和真は、軽い気持ちでこの事をなかったことにした。後に、この出来事が全ての始まりを意味しているとも知らずに・・・。

    こうして最初の運命イベントは幕を閉じた。
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