3 / 12
春の3ページ
しおりを挟む
4人は仲良く下校していた。
「てかさ、約束ってどんな約束な訳?」
玲が春斗に問いかける。その疑問に続くように薫が割り込む。
「それ、私も気になる!」
逃げ道を失ってしまった春斗。少し焦った表情をしながらも必死で現状を変える手段を模索していた。
「私も覚えてないや、どんな約束だっけ?」
トドメを刺すように由紀が言った。
八方塞がりとなった春斗が口を開いた。3人はその口元に集中する。
「やべっ、今日用事あったの忘れてたわ」
「それじゃ先帰るわ」
春斗は逃げるようにその場を離れた。あまりにも自然な流れに3人は思わず言葉を失っていた。
「逃がした!」
3人は声を揃えて言った。しかし、それに気がついた時には遅く、春斗の姿はなかった。
その頃、上手くその場から逃げることが出来た春斗は、家に向かわずに小さな公園に来ていた。
「懐かしいな、遊具ってこんなに小さかったっけ?」
公園で遊具を見ながら、1人思い出に浸っていた。
(あの頃の由紀はほんと泣き虫で俺がいないとダメだったのにな・・・)
春斗は公園を見ながら昔のことを思い出していた。
-10年前の公園-
「おい泣き虫~、今日は付き人いないのかよー」
声の主は由紀と春斗の同級生のガキ大将のような男の子だった。
「ぇぇーん、やめてよ~」
この泣いているのが当時5歳の桜乃由紀である。
「春斗は付き人じゃないもん!」
ガキ大将に由紀が反抗するも、そんなことはお構いなしに由紀に言った。
「付き人じゃんかよ!いつもいつも桜乃の隣ついて行ってるじゃんかよ!それを付き人って言って何が悪いんだよ!」
そう言うと、ガキ大将は由紀の髪についていた髪飾りを取り上げた。
「これはもう俺のな!俺に逆らった罰だ!」
強引に由紀から髪飾りを取り上げると、由紀が取れないように高々に手を上げた。
「返して!それ大事な物なの!」
由紀が泣きながらガキ大将の手にある髪飾りを何とか取り返そうと飛び跳ねていた。勿論届くはずもなく軽くあしらわれた。
「うっせー!もう決まったんだよ!返して欲しかったら俺から取り返してみろよ!」
由紀をあざ笑うように言った。
その時だった。
「おい、くだらねえーことしてんじゃねーよ」
ガキ大将が鼻で笑いながら声の主を見た。その瞬間青ざめたように硬直した。
「その手に持ってるもん返せって言ってるのが分からないのか?」
声の主は当時5歳の井上春斗だった。
「う、うるせー!お前に関係ないだろ!」
怯えながらも反論するガキ大将。
「また痛い思いしたいならいいぜ?」
春斗がガキ大将を睨むと、蛇に睨まれた蛙のように手に持っていた髪飾りを放り投げてその場から逃げ去った。
「怖かったよ~」
髪飾りを拾い涙を流す由紀。その姿を見た春斗は、由紀に近ずきそっと抱きしめる。
「俺が護るから」
涙を流す由紀を抱きしめながら春斗がささやいた。
「もう二度と由紀が怖い思いしないようにする。約束するから・・・。」
春斗の言葉に少し落ち着いたのか由紀が尋ねる。
「ホントに?ホントに春斗が護ってくれる?」
由紀の言葉に春斗が小さくうなづく。
「約束だよ!?」
由紀はそう言うと小指を春斗に差し出した。
「指切り・・・」
由紀の小さな手を見て春斗が小指を交えた。
「やっぱ覚えてなかったか・・・。そうだよな、何年前の話だって感じだよな。」
時は現在、公園のベンチで1人夕日に染まる空を見つめながら春斗がつぶやいていた。
(ごめんね。ちゃんと覚えてたよ。)
同じ頃、由紀もまたその頃を思い出し心で謝っていた。
「日もくれたしそろそろ帰るか・・・」
春斗がベンチをたち歩き始めた。過去の思い出に浸りながら歩みを進めていると、春斗の目の前に人影が現れた。
「やっぱりここにいた」
その声で我に返った春斗の目に飛び込んできたのは、先程別れの挨拶を済ませたばかりの由紀だった。
あの後、由紀も春斗の後を追うように2人と別行動をしていたのだ。
「私ね、春斗に言わないといけないことがあったの・・・」
由紀が少し恥ずかしそうな表情で春斗にいった。
春斗が息を呑む。
「私ね・・・」
この時、春斗の脳裏で1つの心理戦が行われていた。
(まてまてまてまて、これってつまりあれか?こ、こここ、告白?)
(まだ心の準備が・・・って何考えてんだ俺!男ならここはビシッと腹決めろ!)
(いや、待て。落ち着け・・・。冷静に考えろ?このタイミングで告白はないだろ・・・。これはあれだ、伝えそびれたことがあってそれを言いたいだけだ。よし!間違いないな・・・。)
そんなことは知らず、由紀が続けて言葉を出した。
「あのね、こんなことみんなの前で言えなくて・・・」
その言葉に再び動揺する春斗。
(早まるな由紀!俺たちは幼なじみ・・・。その言葉の重みもお前はわかっているはずだ。後悔するぞ!絶対に後悔するから!)
ついに2人の恋は実るのか・・・。
「てかさ、約束ってどんな約束な訳?」
玲が春斗に問いかける。その疑問に続くように薫が割り込む。
「それ、私も気になる!」
逃げ道を失ってしまった春斗。少し焦った表情をしながらも必死で現状を変える手段を模索していた。
「私も覚えてないや、どんな約束だっけ?」
トドメを刺すように由紀が言った。
八方塞がりとなった春斗が口を開いた。3人はその口元に集中する。
「やべっ、今日用事あったの忘れてたわ」
「それじゃ先帰るわ」
春斗は逃げるようにその場を離れた。あまりにも自然な流れに3人は思わず言葉を失っていた。
「逃がした!」
3人は声を揃えて言った。しかし、それに気がついた時には遅く、春斗の姿はなかった。
その頃、上手くその場から逃げることが出来た春斗は、家に向かわずに小さな公園に来ていた。
「懐かしいな、遊具ってこんなに小さかったっけ?」
公園で遊具を見ながら、1人思い出に浸っていた。
(あの頃の由紀はほんと泣き虫で俺がいないとダメだったのにな・・・)
春斗は公園を見ながら昔のことを思い出していた。
-10年前の公園-
「おい泣き虫~、今日は付き人いないのかよー」
声の主は由紀と春斗の同級生のガキ大将のような男の子だった。
「ぇぇーん、やめてよ~」
この泣いているのが当時5歳の桜乃由紀である。
「春斗は付き人じゃないもん!」
ガキ大将に由紀が反抗するも、そんなことはお構いなしに由紀に言った。
「付き人じゃんかよ!いつもいつも桜乃の隣ついて行ってるじゃんかよ!それを付き人って言って何が悪いんだよ!」
そう言うと、ガキ大将は由紀の髪についていた髪飾りを取り上げた。
「これはもう俺のな!俺に逆らった罰だ!」
強引に由紀から髪飾りを取り上げると、由紀が取れないように高々に手を上げた。
「返して!それ大事な物なの!」
由紀が泣きながらガキ大将の手にある髪飾りを何とか取り返そうと飛び跳ねていた。勿論届くはずもなく軽くあしらわれた。
「うっせー!もう決まったんだよ!返して欲しかったら俺から取り返してみろよ!」
由紀をあざ笑うように言った。
その時だった。
「おい、くだらねえーことしてんじゃねーよ」
ガキ大将が鼻で笑いながら声の主を見た。その瞬間青ざめたように硬直した。
「その手に持ってるもん返せって言ってるのが分からないのか?」
声の主は当時5歳の井上春斗だった。
「う、うるせー!お前に関係ないだろ!」
怯えながらも反論するガキ大将。
「また痛い思いしたいならいいぜ?」
春斗がガキ大将を睨むと、蛇に睨まれた蛙のように手に持っていた髪飾りを放り投げてその場から逃げ去った。
「怖かったよ~」
髪飾りを拾い涙を流す由紀。その姿を見た春斗は、由紀に近ずきそっと抱きしめる。
「俺が護るから」
涙を流す由紀を抱きしめながら春斗がささやいた。
「もう二度と由紀が怖い思いしないようにする。約束するから・・・。」
春斗の言葉に少し落ち着いたのか由紀が尋ねる。
「ホントに?ホントに春斗が護ってくれる?」
由紀の言葉に春斗が小さくうなづく。
「約束だよ!?」
由紀はそう言うと小指を春斗に差し出した。
「指切り・・・」
由紀の小さな手を見て春斗が小指を交えた。
「やっぱ覚えてなかったか・・・。そうだよな、何年前の話だって感じだよな。」
時は現在、公園のベンチで1人夕日に染まる空を見つめながら春斗がつぶやいていた。
(ごめんね。ちゃんと覚えてたよ。)
同じ頃、由紀もまたその頃を思い出し心で謝っていた。
「日もくれたしそろそろ帰るか・・・」
春斗がベンチをたち歩き始めた。過去の思い出に浸りながら歩みを進めていると、春斗の目の前に人影が現れた。
「やっぱりここにいた」
その声で我に返った春斗の目に飛び込んできたのは、先程別れの挨拶を済ませたばかりの由紀だった。
あの後、由紀も春斗の後を追うように2人と別行動をしていたのだ。
「私ね、春斗に言わないといけないことがあったの・・・」
由紀が少し恥ずかしそうな表情で春斗にいった。
春斗が息を呑む。
「私ね・・・」
この時、春斗の脳裏で1つの心理戦が行われていた。
(まてまてまてまて、これってつまりあれか?こ、こここ、告白?)
(まだ心の準備が・・・って何考えてんだ俺!男ならここはビシッと腹決めろ!)
(いや、待て。落ち着け・・・。冷静に考えろ?このタイミングで告白はないだろ・・・。これはあれだ、伝えそびれたことがあってそれを言いたいだけだ。よし!間違いないな・・・。)
そんなことは知らず、由紀が続けて言葉を出した。
「あのね、こんなことみんなの前で言えなくて・・・」
その言葉に再び動揺する春斗。
(早まるな由紀!俺たちは幼なじみ・・・。その言葉の重みもお前はわかっているはずだ。後悔するぞ!絶対に後悔するから!)
ついに2人の恋は実るのか・・・。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
眠るように死んでいく花々
R《あーる》
青春
他人の顔が見れない少女・零《れい》と他人に心を開いてない転校生・茉莉《まつり》。二人が描く愛と生き様、死の物語。
※直接的な表現ではありませんが、一部百合要素・死ネタを含んでおります。ご理解、ご承知の上で読んでいただければ幸いです。また意図的に漢字を用いていない部分があります。読みにくいかと思いますが、重ねてご理解頂けますと幸いです。


私のいなくなった世界
タキテル
青春
人はいつか死ぬ。それは逃れられない定め――
ある日、有近樹。高校二年の女子校生は命を落とした。彼女は女子バスケ部のキャプテンに就任した日の事だった。十七歳で人生もこれからであり、輝かしい未来があるとその時は思っていた。しかし、ある帰り道に樹はゲームに夢中になっている男子小学生の姿を目撃する。男子小学生はゲームに夢中になり、周りが見えていなかった。その時、大型のトラックが男子小学生に襲いかかるのを見た樹は身を呈して食い止めようとする。気づいた時には樹は宙に浮いており、自分を擦る男子小学生の姿が目に写った。樹は錯覚した。自分は跳ねられて死亡してしまったのだと――。
そんな時、樹の前に謎の悪魔が現れた。悪魔は紳士的だが、どことなくドSだった。悪魔は樹を冥界に連れて行こうとするが、樹は拒否する。そこで悪魔は提案した。一ヶ月の期間と五回まで未練の手助けするチャンスを与えた。それが終わるまで冥界に連れて行くのを待つと。チャンスを与えられた樹はこの世の未練を晴らすべく自分の足跡を辿った。死んでも死にきれない樹は後悔と未練を無くす為、困難に立ちふさがる。そして、樹が死んだ後の世界は変わっていた。悲しむ者がいる中、喜ぶ者まで現れたのだ。死んでから気づいた自分の存在に困惑する樹。
樹が所属していた部活のギクシャクした関係――
樹に憧れていた後輩のその後――
樹の親友の大きな試練――
樹が助けた男児の思い――
人は死んだらどうなるのか? 地獄? 天国? それは死なないとわからない世界。残された者は何を思って何を感じるのか。
ヒロインが死んだ後の学校生活に起こった数々の試練を描いた青春物語が始まる。

月夜の理科部
嶌田あき
青春
優柔不断の女子高生・キョウカは、親友・カサネとクラスメイト理系男子・ユキとともに夜の理科室を訪れる。待っていたのは、〈星の王子さま〉と呼ばれる憧れの先輩・スバルと、天文部の望遠鏡を売り払おうとする理科部長・アヤ。理科室を夜に使うために必要となる5人目の部員として、キョウカは入部の誘いを受ける。
そんなある日、知人の研究者・竹戸瀬レネから研究手伝いのバイトの誘いを受ける。月面ローバーを使って地下の量子コンピューターから、あるデータを地球に持ち帰ってきて欲しいという。ユキは二つ返事でOKするも、相変わらず優柔不断のキョウカ。先輩に贈る月面望遠鏡の観測時間を条件に、バイトへの協力を決める。
理科部「夜隊」として入部したキョウカは、夜な夜な理科室に来てはユキとともに課題に取り組んだ。他のメンバー3人はそれぞれに忙しく、ユキと2人きりになることも多くなる。親との喧嘩、スバルの誕生日会、1学期の打ち上げ、夏休みの合宿などなど、絆を深めてゆく夜隊5人。
競うように訓練したAIプログラムが研究所に正式採用され大喜びする頃には、キョウカは数ヶ月のあいだ苦楽をともにしてきたユキを、とても大切に思うようになっていた。打算で始めた関係もこれで終わり、と9月最後の日曜日にデートに出かける。泣きながら別れた2人は、月にあるデータを地球に持ち帰る方法をそれぞれ模索しはじめた。
5年前の事故と月に取り残された脳情報。迫りくるデータ削除のタイムリミット。望遠鏡、月面ローバー、量子コンピューター。必要なものはきっと全部ある――。レネの過去を知ったキョウカは迷いを捨て、走り出す。
皆既月食の夜に集まったメンバーを信じ、理科部5人は月からのデータ回収に挑んだ――。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる