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プロローグ
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「今日は絶好のガーデニング日和だー!!」
突然の大きな声とカーテンが勢いよく開く音、そして差し込む光に目が覚める。
朝から何事かと寝床であるキャットタワーから顔を出すと、窓際で気持ちよさそうに外を眺めるご主人が目に入る。
どうやら今日もベランダでガーデニングをするらしい。そういえば、昨日新しい種を買ってきたと話していたような気がする。
私は大きく欠伸をして伸びをすると、ゆっくりとご主人の後を追ってベランダに出る。
「おはよう、ユキ」
鉢植えの前で何かしているご主人が私に気が付き、嬉しそうに手の中の小さな花の種を見せる。
「今回はこの花にしたの!きっとユキみたいに白くて綺麗だよ!」
そしてご主人は鼻歌を歌いながら、ベランダの鉢植えにその種を埋める。
ガーデニングが好きなのは分かるが、私を起こしたならガーデニングの前に朝ご飯を用意してくれないだろうか。
そんな私の気持ちなど知る由もないご主人は、食事を要求しようと邪魔をする私の頭を優しく撫でた。
「ユキも楽しみなの?そっかそっかぁ」
朝ご飯が食べたいだけなのだが、ご主人の温かくて優しい手には敵わない。仕方がないので作業が終わるのを待つ事にしよう。
何が楽しいのか分からないが、花が大好きなご主人は毎日のように鉢植えに水をやって仕事に行く。どんなに仕事が忙しくても、毎日鉢植えの様子を見る事だけは絶対に欠かさない。
そしていつしか、その鉢植えから小さな芽が出て蕾になり、やがて花が咲くのだ。その成長を見守るのは、私の密かな楽しみでもある。
前回のパンジーとかいうオレンジ色の花も悪くなかった。「天真爛漫」という花言葉が私にぴったりだと、ご主人が嬉しそうに語っていたのを覚えている。ご主人はいつも、私に似合う花言葉の花を選んで種を買って育てているらしい。意味は分からないものが多いが、いつもベランダに咲く花達は、ご主人が私の事を考えてくれている証でもあるのだ。
時々その花達に嫉妬する事もあるが、それくらいは許してほしい。
ガーデニングが終わり、ようやく私のご飯を思い出したご主人の足元でご飯を食べる。そんな私を見ながら、ご主人はこれから新しく咲くであろう花について、幸せそうに語っている。その声を聞きながら、これから咲くであろう花に思いを馳せる。
「この花の名前はクリサンセマム。花言葉は高潔、誠実、それからね…」
さて、今回はどんな花が咲くのだろうか…
突然の大きな声とカーテンが勢いよく開く音、そして差し込む光に目が覚める。
朝から何事かと寝床であるキャットタワーから顔を出すと、窓際で気持ちよさそうに外を眺めるご主人が目に入る。
どうやら今日もベランダでガーデニングをするらしい。そういえば、昨日新しい種を買ってきたと話していたような気がする。
私は大きく欠伸をして伸びをすると、ゆっくりとご主人の後を追ってベランダに出る。
「おはよう、ユキ」
鉢植えの前で何かしているご主人が私に気が付き、嬉しそうに手の中の小さな花の種を見せる。
「今回はこの花にしたの!きっとユキみたいに白くて綺麗だよ!」
そしてご主人は鼻歌を歌いながら、ベランダの鉢植えにその種を埋める。
ガーデニングが好きなのは分かるが、私を起こしたならガーデニングの前に朝ご飯を用意してくれないだろうか。
そんな私の気持ちなど知る由もないご主人は、食事を要求しようと邪魔をする私の頭を優しく撫でた。
「ユキも楽しみなの?そっかそっかぁ」
朝ご飯が食べたいだけなのだが、ご主人の温かくて優しい手には敵わない。仕方がないので作業が終わるのを待つ事にしよう。
何が楽しいのか分からないが、花が大好きなご主人は毎日のように鉢植えに水をやって仕事に行く。どんなに仕事が忙しくても、毎日鉢植えの様子を見る事だけは絶対に欠かさない。
そしていつしか、その鉢植えから小さな芽が出て蕾になり、やがて花が咲くのだ。その成長を見守るのは、私の密かな楽しみでもある。
前回のパンジーとかいうオレンジ色の花も悪くなかった。「天真爛漫」という花言葉が私にぴったりだと、ご主人が嬉しそうに語っていたのを覚えている。ご主人はいつも、私に似合う花言葉の花を選んで種を買って育てているらしい。意味は分からないものが多いが、いつもベランダに咲く花達は、ご主人が私の事を考えてくれている証でもあるのだ。
時々その花達に嫉妬する事もあるが、それくらいは許してほしい。
ガーデニングが終わり、ようやく私のご飯を思い出したご主人の足元でご飯を食べる。そんな私を見ながら、ご主人はこれから新しく咲くであろう花について、幸せそうに語っている。その声を聞きながら、これから咲くであろう花に思いを馳せる。
「この花の名前はクリサンセマム。花言葉は高潔、誠実、それからね…」
さて、今回はどんな花が咲くのだろうか…
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