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NPCは眠らない
家族
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モニターはホワイトアウトしたままだ。
何かボタンを押せばデッド・エンドが表示され、スタート画面に戻るだろう。
だが、もうログインはできないのだ。
ゲームはそのままにして、スマホのTV会議でサグラダに話しかけた。
「どうなったんだ?」
「”ヨグ=ソトス”の討伐は終わったと思うよ……」
「それで?」
「全員のモニターがホワイトアウトしてる。今、SEがサーバーを確認してるところだ。」
「被害者は?アリサはどうなった!」
「手分けして、被害者の自宅へ問い合わせしてるとこだ。待っててくれ……」
何人もの警察官が電話をかけているらしい声がスマホ越しに聞こえてくる。
10分ほど経っただろうか、サグラダが教えてくれた。
「今、吉川アリサから自宅に連絡があったそうだ!」
「それで!」
「町田駅にいるそうだ。これから帰ると……」
涙が溢れて、声が出なかった。
よかった……本当に……
数日後の夕方、学校から帰った俺は、母親から来客を告げられた。
リビングに行くと、スーツ姿の男性と赤く髪を染めたJKがいた。
「ケント君だね。」
「はい。」
「サグラダだ。今回のご協力に感謝する。」
男性とJKが立ち上がって深々と頭を下げた。
「いや、ただのゲームですし……」
「吉川アリサ君が、どうしても君に礼が言いたいと連絡してきてね。」
「へっ……」
「まあね。ケントがアタシに惚れちゃってるのは分かったからさ。」
「い、いやいや……」
「あの首輪から、そういうのがバシバシ伝わってきたからさぁ。」
「あはは。あの首輪に、絶対防御みたいな効果が付与されてたみたいだね。開発側もその可能性はあるって認めてるよ。」
「最後の時さ、首輪から光が出てきてさ、体を包んでくれたんだ。」
「……」
「そしたら、ケントの声が聞こえてきたんだ。”俺が護るから”ってさ。」
「あ、あり得ないっしょ……」
「まあ、そんなに想ってくれてるならカレシにしてやってもいいかなって……」
「へっ?」
「だから、10キロ痩せろ!拒否はねえからな。」
俺に、赤髪の彼女ができたらしい。
ちなみに、アリサはゲーム内で特訓した感覚が残っているらしく、あれに近づくために体を鍛えると言っている。
髪を短く切って、体操部に入ったと言っている。
うちとアリサの家の中間に境川が流れていて、土日はそこの遊歩道でマラソンをする事にされてしまった……
1カ月過ぎたころ、デビルバスターにパッチが配布され、ゲームが再開した。
セーブデータは残されており、ログインはしたのだが、当然アリサに譲った装備は消えている……当然だな。
学校から帰ると、そのまま5kmほどジョギングを続けている俺の体は、もう5kgほど痩せている。
ゲームには以前ほど夢中になれなくなっているのだが、まあ、世話になった人たちにお礼もしなくちゃいけない。
あの時作ったクランは消えていたけど、キャラは覚えている。
多少有名になったおかげで、店に来てくれる人も増えた。
武器の在庫も少ないので、素材を採りに行って鍛冶もしなくちゃいけない。
店に出ていたら、客が入ってきた。
ネコ娘の姿に一瞬緊張してしまう。
「いらっしゃい。」
「首輪がないんだ。作ってくれ。」
「へっ?」
「妖精の首輪だよ!」
名前を見るとアリサになっていた。
「どうして……」
「メーカーが再現してくれたんだ。」
「何で?」
「ゲームアドバイザーになったんだ。JK視点でアドバイスするんだぞ。」
「イヤじゃないのか?」
「イヤ。むしろ懐かしいぜ。」
「……」
「ほら、早くパーティー設定して首輪を作ってくれよ。」
「いや、妖精の瞳は限定アイテムだから、もう手に入らないんだ。」
「いくらでもあるぞ、ほれ。」
パーティー設定をしたら、俺のストレージに妖精の瞳が100個入ってきた。
「な、何でこんなに……」
「これからは、こいつを使ったアイテムがいくつも必要になってくるんだ。だから、西山イベントも常設に変更されてるぜ。」
西山イベントは、妖精の瞳入手のイベントだ。
難易度は高くないが、一度しか挑戦できないイベントだった。
俺は、改めて気合を入れて首輪を作り、アリサの首につけてやった。
「何か、結婚指輪みてえだな。ああ、結婚指輪を作ってプロポーズってのもイベントにしてもらうか。」
「何だよそれ……」
「スマホ版でJKを取り込むんだよ。女子向けのイベントが必要だろ。」
「乙女ゲームじゃねえよ!」
「ちょっと待ってろよ。ここにボタンが……」
アリサが部屋の隅に行って操作すると階段が現れた。
「勝手に俺の部屋を改造してんじゃねえ!」
二人で階段を上がると、広い部屋があった。
「ここに、寝室とキッチン・浴室を作ってもらってるんだ。」
「ゲームに生活感出さないで……」
「ベッドで二人で寝るとムフフなイベントが始まって……ランダムでNPCの子供が生まれるのもいいな。」
「お願い……ヤメテ……」
「教育の仕方によって、騎士とか魔法使いに育っていって、親と一緒に冒険に連れていくってのはどうかな?」
「こ、子供の装備も俺が作れるのか?」
「ああ、それも頼んでみるよ。子供は3人までかな。」
「戦士・僧侶・魔法使いだな。」
そんな事を続けながら1カ月。
俺は、新しく出来たというダンジョンに連れ出された。
レベル1から再スタートしたアリサも、レベル80まであがり、特に素早さで俺を圧倒するアリサがメインの戦闘だ。
「そこの岩を割って。」
「ほい。」
岩を割るというのは、職人固有のスキルであるため、このイベントがそういう類のイベントだと分かる。
他にも、やたらとミスリルや他の素材が入手できるダンジョンではあった。
壊した岩の下に階段が現れ、俺たちは下に降りて進んでいく。
「そこの石を星形に削ってここに嵌めてちょうだい。」
言われた通りに石を加工すると、確かに示された台座には星形の窪みがある。
石をセットしたら、ゴゴゴと岩壁が開いた。
「さあ、ボス戦よ。鍛冶系の武器しか効かないから頑張ってね。」
ボスは水晶のモンスターで、鍛冶のハンマーでも少しづつ削るしかなかった。
魔法も吸収するモンスターだという。
ボスを倒した後で手に入った”古代職人の魂”というアイテムを使うと、魔工技師というジョブにクラスアップした。
職人系ジョブの上位職だと説明にある。
その奥に現れた部屋には、”飛行挺の残骸”が置かれていた。
「おい、これって……」
「アーティファクトってやつよ。」
飛行挺の残骸をストレージに入れて家に戻り、表示された素材を使って飛行挺を修理していく。
ここでも3個の妖精の瞳が必要になった。
完成と同時に進行するイベント。
家に屋上が現れて、そこに置かれた飛行艇。
運転席のある窪みに3個の妖精の瞳をセットして魔力を流すと飛行艇は浮き上がった。
背景は町の上空になり、隣の席にアリサ……。
「まさか、結婚も必要な要件なのか?」
「当然でしょ。新規加入のギャルを、強制的にフォローさせるイベントなのよ。」
「くっ、確かに飛行艇の実装は熱望されてたけど、こんなやり方は卑怯だろ!」
「あら、飛行艇を課金アイテムにする予定だったのに、変更させたのよ。感謝してほしいものだわ。」
どうやら、ゲーム内でも実生活でも、俺はこの娘に振り回される運命らしい……
【あとがき】
ゲームタイプのストーリーは初かな……
なんとか完結です。
何かボタンを押せばデッド・エンドが表示され、スタート画面に戻るだろう。
だが、もうログインはできないのだ。
ゲームはそのままにして、スマホのTV会議でサグラダに話しかけた。
「どうなったんだ?」
「”ヨグ=ソトス”の討伐は終わったと思うよ……」
「それで?」
「全員のモニターがホワイトアウトしてる。今、SEがサーバーを確認してるところだ。」
「被害者は?アリサはどうなった!」
「手分けして、被害者の自宅へ問い合わせしてるとこだ。待っててくれ……」
何人もの警察官が電話をかけているらしい声がスマホ越しに聞こえてくる。
10分ほど経っただろうか、サグラダが教えてくれた。
「今、吉川アリサから自宅に連絡があったそうだ!」
「それで!」
「町田駅にいるそうだ。これから帰ると……」
涙が溢れて、声が出なかった。
よかった……本当に……
数日後の夕方、学校から帰った俺は、母親から来客を告げられた。
リビングに行くと、スーツ姿の男性と赤く髪を染めたJKがいた。
「ケント君だね。」
「はい。」
「サグラダだ。今回のご協力に感謝する。」
男性とJKが立ち上がって深々と頭を下げた。
「いや、ただのゲームですし……」
「吉川アリサ君が、どうしても君に礼が言いたいと連絡してきてね。」
「へっ……」
「まあね。ケントがアタシに惚れちゃってるのは分かったからさ。」
「い、いやいや……」
「あの首輪から、そういうのがバシバシ伝わってきたからさぁ。」
「あはは。あの首輪に、絶対防御みたいな効果が付与されてたみたいだね。開発側もその可能性はあるって認めてるよ。」
「最後の時さ、首輪から光が出てきてさ、体を包んでくれたんだ。」
「……」
「そしたら、ケントの声が聞こえてきたんだ。”俺が護るから”ってさ。」
「あ、あり得ないっしょ……」
「まあ、そんなに想ってくれてるならカレシにしてやってもいいかなって……」
「へっ?」
「だから、10キロ痩せろ!拒否はねえからな。」
俺に、赤髪の彼女ができたらしい。
ちなみに、アリサはゲーム内で特訓した感覚が残っているらしく、あれに近づくために体を鍛えると言っている。
髪を短く切って、体操部に入ったと言っている。
うちとアリサの家の中間に境川が流れていて、土日はそこの遊歩道でマラソンをする事にされてしまった……
1カ月過ぎたころ、デビルバスターにパッチが配布され、ゲームが再開した。
セーブデータは残されており、ログインはしたのだが、当然アリサに譲った装備は消えている……当然だな。
学校から帰ると、そのまま5kmほどジョギングを続けている俺の体は、もう5kgほど痩せている。
ゲームには以前ほど夢中になれなくなっているのだが、まあ、世話になった人たちにお礼もしなくちゃいけない。
あの時作ったクランは消えていたけど、キャラは覚えている。
多少有名になったおかげで、店に来てくれる人も増えた。
武器の在庫も少ないので、素材を採りに行って鍛冶もしなくちゃいけない。
店に出ていたら、客が入ってきた。
ネコ娘の姿に一瞬緊張してしまう。
「いらっしゃい。」
「首輪がないんだ。作ってくれ。」
「へっ?」
「妖精の首輪だよ!」
名前を見るとアリサになっていた。
「どうして……」
「メーカーが再現してくれたんだ。」
「何で?」
「ゲームアドバイザーになったんだ。JK視点でアドバイスするんだぞ。」
「イヤじゃないのか?」
「イヤ。むしろ懐かしいぜ。」
「……」
「ほら、早くパーティー設定して首輪を作ってくれよ。」
「いや、妖精の瞳は限定アイテムだから、もう手に入らないんだ。」
「いくらでもあるぞ、ほれ。」
パーティー設定をしたら、俺のストレージに妖精の瞳が100個入ってきた。
「な、何でこんなに……」
「これからは、こいつを使ったアイテムがいくつも必要になってくるんだ。だから、西山イベントも常設に変更されてるぜ。」
西山イベントは、妖精の瞳入手のイベントだ。
難易度は高くないが、一度しか挑戦できないイベントだった。
俺は、改めて気合を入れて首輪を作り、アリサの首につけてやった。
「何か、結婚指輪みてえだな。ああ、結婚指輪を作ってプロポーズってのもイベントにしてもらうか。」
「何だよそれ……」
「スマホ版でJKを取り込むんだよ。女子向けのイベントが必要だろ。」
「乙女ゲームじゃねえよ!」
「ちょっと待ってろよ。ここにボタンが……」
アリサが部屋の隅に行って操作すると階段が現れた。
「勝手に俺の部屋を改造してんじゃねえ!」
二人で階段を上がると、広い部屋があった。
「ここに、寝室とキッチン・浴室を作ってもらってるんだ。」
「ゲームに生活感出さないで……」
「ベッドで二人で寝るとムフフなイベントが始まって……ランダムでNPCの子供が生まれるのもいいな。」
「お願い……ヤメテ……」
「教育の仕方によって、騎士とか魔法使いに育っていって、親と一緒に冒険に連れていくってのはどうかな?」
「こ、子供の装備も俺が作れるのか?」
「ああ、それも頼んでみるよ。子供は3人までかな。」
「戦士・僧侶・魔法使いだな。」
そんな事を続けながら1カ月。
俺は、新しく出来たというダンジョンに連れ出された。
レベル1から再スタートしたアリサも、レベル80まであがり、特に素早さで俺を圧倒するアリサがメインの戦闘だ。
「そこの岩を割って。」
「ほい。」
岩を割るというのは、職人固有のスキルであるため、このイベントがそういう類のイベントだと分かる。
他にも、やたらとミスリルや他の素材が入手できるダンジョンではあった。
壊した岩の下に階段が現れ、俺たちは下に降りて進んでいく。
「そこの石を星形に削ってここに嵌めてちょうだい。」
言われた通りに石を加工すると、確かに示された台座には星形の窪みがある。
石をセットしたら、ゴゴゴと岩壁が開いた。
「さあ、ボス戦よ。鍛冶系の武器しか効かないから頑張ってね。」
ボスは水晶のモンスターで、鍛冶のハンマーでも少しづつ削るしかなかった。
魔法も吸収するモンスターだという。
ボスを倒した後で手に入った”古代職人の魂”というアイテムを使うと、魔工技師というジョブにクラスアップした。
職人系ジョブの上位職だと説明にある。
その奥に現れた部屋には、”飛行挺の残骸”が置かれていた。
「おい、これって……」
「アーティファクトってやつよ。」
飛行挺の残骸をストレージに入れて家に戻り、表示された素材を使って飛行挺を修理していく。
ここでも3個の妖精の瞳が必要になった。
完成と同時に進行するイベント。
家に屋上が現れて、そこに置かれた飛行艇。
運転席のある窪みに3個の妖精の瞳をセットして魔力を流すと飛行艇は浮き上がった。
背景は町の上空になり、隣の席にアリサ……。
「まさか、結婚も必要な要件なのか?」
「当然でしょ。新規加入のギャルを、強制的にフォローさせるイベントなのよ。」
「くっ、確かに飛行艇の実装は熱望されてたけど、こんなやり方は卑怯だろ!」
「あら、飛行艇を課金アイテムにする予定だったのに、変更させたのよ。感謝してほしいものだわ。」
どうやら、ゲーム内でも実生活でも、俺はこの娘に振り回される運命らしい……
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なんとか完結です。
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