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第四章
すっぴん
しおりを挟むWHOの本部はスイスにある。
保健福祉省のジョージと共に瞬間移動でスイスに行き、そこからパトリアで本部に向かう。
「この車いいですね。
男心をくすぐりますよ」
「これで、別の世界を突っ走ると気持ちいいですよ」
「いいなシュウは……」
「あっ、そういえば第18世界との情報交換とかで、行ってみますか」
「それっ、人選するのに必要だと思ってたんですよ」
本部に到着し、会議室に通される。
簡単に挨拶を終えて本題に入る。
「実は、今回遠征した世界で、鳥インフルエンザによるパンデミックが発生していました。
致死率は50%以上で、最終的な死者は1億人以上」
「い、一億ですか……」
「それは、この世界でも起こりうることで、向こうの世界では看護師をピックアップしてクリーン・除菌の魔法を授けてきました。
クリーンは体内のウィルスや細菌を除去できますので、インフルエンザだろうがエイズだろうが完治できます」
「エ、エイズもですか」
「ウィルス性だから、そうなるね」
「この世界にもクリーンを展開できたらいいなと、合衆国のプレジデントとも相談して、アメリカでの展開を進めているところです」
「相変わらずアメリカは判断が早い」
「それをすれば、当然医療関係者同士のネットワークで全世界に情報が広がると予測できますので、当面各国で少数の人間にクリーンを付与してはどうかと思い伺った次第です」
「確かに、少数でもそういう人間がいれば、感染爆発を起こす前に封じ込めることが可能だろう」
「ですが、例えば製薬会社からのクレームが入ったりすることが懸念されますよね」
「既存の感染症に対する治療薬が不要になるからね」
「はい。WHOにその防波堤になってほしいなというのが今回の目的です」
「WHOで、各国の対象者を選抜しろというんだね」
「看護師でなくとも、政府の医療・厚生機関から選出させればいいかと思います。
そのうえで、希望する国には、順次看護師への展開を考えています」
「有意義な活動だね。
何人程度集めればいい?」
「200か国以下で各国5人。
1000人なら一日で対応できます」
「うちの職員にもお願いできるかね」
「当然ですよ」
「では、手始めにこのキャシーに与えてくれるかい」
「30人くらい集めていいですよ。
有害なものではありませんし、家の掃除に使えますから。
あと、風呂に入らなくても大丈夫です。服まできれいにできますから、徹夜の多い人なんか歓迎されますよ」
「クスッ、シャワーくらい浴びさせてくださいね」
30人のWHO職員への付与が終わった。
「じゃあ、簡単に使い方を説明します。
ここにいる、ちょっと疲れた中年をきれいにしてあげたいと思ったら、事務局長の全身を意識して『クリーン!』と唱えるだけです」
「おお、局長5歳若返りましたね」
「ホント、おでこのテカリもなくなって」
「注意していただきたいのは、メイクも落ちてしまいます」
「えっ」 「げっ」 「ふへ」
「さあ、お互いに向かい合ってクリーンをかけてみましょう。
どうしてもスッピンを曝せない人は手をあげて……
いないようですからどうぞ!」
『『『クリーン!』』』
「おお!」 「使えたぞ!」
「はい、できましたね。
慣れれば、部屋全体や建物全体もできます。
『クリーン!』」
「床が!」 「窓も!」
「部屋の汚い人は、家でも使ってください。
ただ、あくまでもウィルスの除菌を目的としてますからね。
通りすがりの女性をスッピンにして遊ぶのは禁止です」
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