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第四章

シスター・マリア

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「すみません、こちらの教会で炊き出しをやっていただけると聞いたのですが」

「あ、はい。
シスター達が、自分たちもお役に立ちたいと言い出しまして。
もしよければ、お手伝いさせてください。
なに、私たちの信じる神も、地域や国によって呼び名が変化しています。
その一つがルシファー様だと思えばいいことです」

「わかりました」

「こちらのシスター・マリアが中心となって行いますので、必要なことはマリアに言いつけてください」

「では、10日分の食材を置いていきますので、どこに出せばいいでしょう

「食糧庫にご案内いたします」

俺はマリアに案内されて食糧庫に入る。

「こちらにお願いします」

「では、小麦10袋とスープの素、ベーコン、食器。鍋になります。
それとコンロと薪はありますか?」

「できれば、それもお願いします」

「はい。足りなくなったら牛丼店に来てください。僕が追加分を持ってきますから」

「はい」

「マリアは神の加護を信じますか?」

「はい。毎日の糧を与えていただいています」

「それは、あなたの労働や行為によって得たものです。
もっと、具体的な加護です」

「私には、わかりません」

「神の加護を受け入れる気持ちはありますか?」

「えっ?」

「僕は、神から直接加護をいただきました。
あなた方でいう、神の使途と同じように、奇蹟を具体的に起こすことができます」

「奇蹟……」

「その一つをあなたに授けようと思いますが、受け入れますか」

「わ、私なんかが?」

「炊き出しに必要なものです」

「そ、それならば……」

俺はクリーンを彼女に付与した。

「いま、あなたにクリーンの能力を授けました。
きれいにしたいものに意識を集中してクリーンと唱えればきれいになります。
さあ、試してください」

「な、何を……」

「そうですね、自分の体と着ているものに意識を集中して」

「ク、『クリーン!』……ああ、本当に……」

「慣れないうちは使いすぎると疲れると思いますが、慣れてくればいろいろなものに応用できますよ。
汚れた食器、使い終わった鍋、とりあえずはそれが目的です。
あとは、ケガをした人の殺菌や病人の菌を殺すことにも使えますから色々と試すといいでしょう」

「わ、私なんかが……」

「人の役に立ちたいと申し出ていただいたんですから、神様からの加護を受ける資格は十分にありますよ。
さあ、戻りましょう」

俺たちは神父のもとに戻った。

「神父様、ルシファー像を置かせてもらってもいいですか」

「ええ、歓迎します」

俺はルシファー像をマリア像の横隅に設置した。

「さあ、マリア、ルシファー様に感謝の祈りを」

「はい」

「みなさん聞いてください。
今、マリアはルシファー様からの加護を受けました。
炊き出しにあたり、食器や鍋をきれいにする能力が与えられたのです。
さあ、マリア、シスターの皆さんにかけてあげてください」

「はい。『クリーン!』」

「「「えっ」」」

「修道衣が!」

「肌や髪も!」

「マ、マリア、あなたいったい……」

「慣れてくれば、これくらいの事もできるようになります『クリーン!』」

教会全体にクリーンをかけた。

「うそっ!」

「マリア様やステンドグラスがきれいに」

「壁も」

「これが、ルシファー様の加護を受けた私の、ほんの一部の力です。
ただ、奇蹟を期待してはいけません。
自分に正直であってください。
そして、すべての人々に愛を」

これって、話題になるよな……
手伝いに来てくれているシスターにも多少スキルを与えないと、不公平になりそう。
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