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第三章

肉祭り

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叩いていた木の音が、長さや太さを変えると違う音になると気づいたのは誰だったのか。
あるいは、鍋の底だったのかもしれない。
そこから工夫が始まる。

あるものはスチールパンのような楽器を作り、あるものは色々な大きさの鍋を叩くようになった。
ここに、学校で教えようとしていた縦笛と音階が投入されると、音楽は瞬く間に広まった。
縦笛の音にあわせた竹が切り出され、音階順に並べられる。
竹琴である。
木琴や鉄琴、石琴に銅琴も次々に生み出された。

ここにハープを一台投入する。
鉄の糸を震わせると音が出ることを知ると、ドワーフを中心に弦楽器が広がっていくが、この世界には合成繊維や絹糸が存在しないため、これはゴルの一部の地域にとどまってしまう。
弦楽器とは対照的に、笛のバリエーションが広がっていく。
オカリナやホルン、竹笛に金管楽器へと発展していく。

唯一学校で提供されたのは、きらきら星の楽譜であったが、一度聞いたポップスを再現しようとする者まで現れてくると、みんな思い思いに好きな旋律を奏でていく。
メロディーがあれば、それにあわせて声を出し、やがて詩を奏でるものが登場する。

手軽さで、管楽器優勢と思われたときに、登場したのがカスタネットとタンバリンだ。
こいつは質(たち)が悪い。
リズムを刻むだけで、練習もせずにいきなり演奏に参加できる。



こういった背景の中で、肉祭りが開催された。

肉祭りには絶対的な優先事項を設けてある。
女性と老人・子供を最優先で、男は肉を焼き酒を運ぶのだ。
その合間に飲食をする。

「では、みなさん一緒にカウントダウンしましょう!
5・4・3・2・1
おめでとうユーフラシア!かんぱーい!」

「「「「「おめでとう!」」」」」

一応、名目はユーフラシア連邦誕生パーティーと銘打っている。

ジュワーッ

「ほれ、焼けたぞ。どんどん食ってくれ」

「まだ生じゃない。もっとしっかり焼いてよ」

「そ、そうか……
しかし、シュウのやつ、とうとうこの大陸を一つにしちまいやがったな」

「カスミちゃんのお父さんだもんね~」

「わしも、ひい爺様かよ……」

「孫って、こんなにかわいいモノなのね~」

「あら、娘は可愛くなかったのかな?」

「自分の子供って、育てるのに必死だからそういう余裕がないのよね」

「ひ孫になると、もっと可愛いぞい」

「ところで、お父さんはどうしたの?」

「ドランで挨拶してから、各町を回るみたいよ」

「最初に見たときは、そんな大層なやつとは思えなかったんだがな」


やがて、女性や子供は眠り、漢達の時間が訪れる。

「野郎ども、こっからが祭りの本番だぜ!」

「おー!」

「煩(うるさ)い!何時だと思っての!」

「……」

漢達の宴は、静かに続くのだった。


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