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第二章
おいしい牛乳
しおりを挟む「ジョン、生まれたぞ、第一号だ」
「どうだった」
「自然分娩でいけた」
「そいつは何よりだ。
人間が手を出すのは、本当に危なくなった時だけでいい」
「こっちはどうだ」
「ベリーのソフトがバカ売れだよ」
「なあ、ここの牛乳って高温殺菌だよな」
「ああ、町まで距離があるからな。町に近い牧場では低温殺菌を手掛けているところもあるらしいが……」
高温短時間殺菌(HTST)とは、生乳を72℃以上で連続的に15秒以上加熱殺菌する方法で、低温殺菌の牛乳が4日程度の賞味期限なのに対し、10日以上の消費期限となっている。
これよりも更に消費期限の長い超高温殺菌方法も存在する。
「一応、クリーンの殺菌で超高温殺菌の基準を満たしているって許可も受けてあるが、ここで飲む分だけでも生乳を提供してみないか」
「まあ、せっかく来てくれるんだから、うまいミルクを飲んでもらうのは構わないが……」
「できれば、いずれは、生乳を出荷できるところを目指さないか」
「そりゃあ、俺だって旨いミルクを提供したいさ。
だが、それだけの消費を恒常的に確保するのは……、待て、お前の魔法は超高温殺菌のレベルなのか!」
「ああ、それでいて成分は変質していない」
「そりゃあ、願ってもないことだが、実現は可能なのか」
「少し時間をもらえれば可能だ。
その間に、独自ブランドを立ち上げる準備をしておけよ。
資金が必要なら俺が出資してやる」
「シュウ&ジョンカンパニーだな。
ブランド名はソフィアしか思いつかないぞ」
「ジョンの名を先にしろよ。お前の作った牛乳なんだ」
「パックにはマーメイドのロゴマークを入れて……、コンビニやミルクスタンドに俺のミルクが並ぶんだな」
「ただし、パックで運搬すると生クリーム状になることもあるからな。そこを理解できない人には敬遠されるぞ」
「ああ、分かってる」
アリスに頼んでホワイトハウスや行政官庁でジョンのミルクを飲んでもらう。
「ああ、昔のミルクはこういう味だったよ」
「確かに、ミルクで健康被害が出たこともあったが、こんなに違う味だったとは」
ブランドミルク「ソフィア」が発売されると、明らかな味の違いに高温殺菌方法の牛乳は敬遠されていき、低温殺菌に切り替える牧場も増えてきた。
それでも、コストや輸送時間の問題があり、都市部ではソフィアが圧倒的シェアを得るようになってきた。
俺の牧場でも、第二、第三の出産があり、少しずつ牛乳の提供が可能になってくる。
だが、スイーツにまで回るのはまだまだ先のことである。
第二部完了です。
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