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第一章

風呂を作ろう

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「ただいまぁ」

「お帰りなさい。
ご飯にする? お風呂にする? それとも ワ・タ・シ?」

「どこで覚えたんだ……そんなセリフ……」

「TVでーす。
それで、どうだった?」

「ドワーフもエルフも協力してくれるってさ」

「それって、超すごいじゃないですか」

どうも、現代社会の言葉に汚染されつつあるようだ。

「カエデの方は?」

「今日、渋谷でお買い物してたら、モデルにならないかって声かけられました」

「絶対に断るんだぞ」

「わかってますよーだ」

カエデはこの年にして死線を踏みくだいてきた。
剣術によって鍛えぬかれたボディーはスレンダーで身長もそこそこある。
当然、姿勢もいい。自然体でありながら凛とした緊張感をまとっている。
今更ながら、俺を選んでくれたことに礼をいいたい。
こんなのが街中をふらついていたら、間違いなく声をかけられる。


「今から、魔鉱石とミスリルの加工に入るけど、みる?」

「うん、見る」

「じゃあ、スキルをセットするよ」

素材に魔法を書き込み魔道具を作成する「魔道具技師」。
魔道具に書き込む魔法をプログラミングする「マジカルSE」。

ちなみに、スキルエディットのレベルは3に上がっている。パラメータは3桁まで操作可能で、スキルセットは30個。
パラメータFFFは、10進数で4095になる。 もうね、人間の限界を突破しちゃってます。はい。
カエデは「人間でいたい」とのことで、パラメーターの書き換えは拒みましたよ。

「何を作るつもり?」

「町の中にお風呂を作りたいんだ」

「あっ、それ賛成。広いお風呂だーい好き」

「基本は簡単なことだよね。 周りにあるお湯を43度まで加熱するだけだから」

「うんうん」

「あとは、魔力の蓄積をどうするかだね」

「浴槽の床をミスリル銀にして、入った人の魔力5%を吸い取るってどう?」

「うん。おれもそう考えてるんだけど、子供やお年寄りは避けて……15歳から55歳くらいでいいかな。
あとはびっくりしないように、注意書きをしておけばいいかな。
それと、川の水を引き込んで、クリーンで綺麗にしてから加熱して、ドバドバと竜の口から噴き出す。
湯舟は30分おきにクリーンで綺麗にする、こんなところかな」

書き込みの方法は、サクラに聞いたら教えてくれた。
浴槽は大理石を切り出して作り、床にミスリル銀をコーティングする。
魔鉱石を竜の目にはめ込み、すべての魔道具をミスリル銀で接続する。
川を引き込んで、水車で水をくみ上げ、魔道具を起動する。

「すごい、竜の口からお湯が出てきた」

浴槽は3m×10mで深さ120cm。
建物はなく、露天である。

「そろそろいいな」

俺は海パンでカエデはシンプルな水着である。
ほかの入浴者も水着を着てもらった。

「うーん、これがお風呂ですか……暖かいお湯に漬かるのって気持ちいいですね」

「血の巡りが良くなりますし、疲れもとれるんですよ」

「それに、とてもいい匂いがしますわね」

「保湿効果のある香料を使っていますわ」

「男湯と女湯を分けようと思っています。 そうすれば、裸で入れますよ」

「別に作ることもないだろう。
このままで十分だよ」

そう、この町は裸に対してあまり抵抗感を持っていない。

「領主館に兵士用の風呂をつくってやりたいが……水場が遠いな」

「町中に水路を作ればいいんですが、今は時間がありません。
いずれ、そういったことも考えていこうと思います」

「うん、うちの相談役は頼りになるね」

「シュウ、道場の分を忘れるなよ」

「ギルドにも作るんだぞ」

「シュウ、できればドランにも頼みたい。 追加で費用は支払うから」

ケビンはこれまでに何度かゴルの町を訪れ、みんなともすっかり打ち解けていた。
この露天風呂は、いつの間にか簡易屋根と更衣室が作られた。
周囲には垣根が作られ、町の社交場になっていった。
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