上 下
22 / 224
第一章

プレオープン

しおりを挟む
 ニワトリについては、当面は数を増やすためにオスメス一緒に飼うが、ニワトリはメスだけにしておいても日に一個の無精卵を産む。
7個くらい産んだら抱卵を始めるらしい。 このへんはザムザくんに伝えておかないといけない。
オス同士は序列争いをするというから、負けそうな子は遠慮なくいただこう。

 配合飼料も一緒に購入したが、ヒヨコが生まれ出したらヒヨコ用の配合飼料が必要となる。
多分、一人じゃ無理だから、先生にお願いして応援を出してもらおう。



 こんな事をしていると2・3日はあっという間に過ぎる。
食堂の講習会に、プレオープンの仕込み。
そしてプレオープン当日を迎えた。

「皆様、本日は食堂のリニューアルオープンを明後日に控えたギルド食堂マリーネにお越しいただき、ありがとうございます。
忌憚のないご意見を頂戴できれば幸いです。 では、ご試食くださいませ」

 俺は来客者を前にして挨拶していた。 
なんでこうなったのか……お義父さんとお義母さんの陰謀によるものだ。
料理長的立場の俺は、裏方に徹するつもりでいた。そう十分前までは……

 ギルド職員と領兵団。道場のメンバーに対するプレオープンだったはずが、領主がお見えになりギルマスはその対応にあたっている。
更に、隣町のギルマスが来所され、実は副ギルド長だったマリーさんが対応していたりする。

 挨拶が終わったら、そっちに料理をお持ちしなければならない。
カエデはマリーさんの方だ。

「チーフ、あとは任せたぞ!」

「はい、承知しました」

 応接室のドアをノックし、声をかける。

「シュウです、お食事をお持ちしました」

「おお、シュウ君、すまないね突然押しかけて」

「いえ、このようなところへお越しいただき、ありがとうございます。
こちらが、本日提供させていただいております、イノ丼・親子丼・唐揚げ丼になります」

 領主用に、小盛りした茶碗を二人の前に並べる。

「あれ?」 ギルマスが変な声をあげた。

「イノ丼はイノシシのドンブリですね。 他のものはどのような食材をお使いなんですか?」

「親子丼も唐揚げ丼も、私の国のトリ肉を使っています。
クセのない淡白なトリですので、親子丼は煮込んであり、唐揚げは衣に味がついています。
親子というのは、同じトリの玉子でとじてありますので、まあ本来はトリの子供はヒナなんですがね」

「玉子って、結構貴重品ですよね。そんなに多くの玉子を確保できるんですか?
それに、お高くなってしまうのではなくって?」

「全部、街中の食堂の価格と同じくらいです。3品とも銅貨2枚でお出ししますから」

「まあ、そんなにお安く出せるんですか」

「ええ、ところで冷めないうちにお召し上がりいただいた方が……」

「うん、お言葉に甘えていただこう」

「あれ?」 またギルマスが変な声をあげた。

「お召し上がりいただきながら、少し話を続けさせていただきたいのですが」

「うん、私も続きを聞きたい」

「実は、先日ご了解いただたいた郊外の土地に、そのトリの飼育施設を作っています」

「うんうん、……ちょっと待ってくれ。
このイノ丼ってやつ美味すぎる」

「あら、親子丼も素晴らしいですわよ。
タマゴがふわふわで、お肉にもしっかり味がしみこんでいますわ」

「唐揚げも、この前のよりカリッとしてるし、肉の旨みがジワっと染み出してくる。
領民の食生活が改善されるのは大歓迎だよ」

「ええ、そこなんです。 トリの繁殖が順調にいけば、遅くとも1年後には玉子と鳥肉を市場に提供できます。
原価計算はできていませんが、最終的には玉子10個を銅貨1枚で提供できればと考えています。
玉子は栄養価も高く、様々な料理に使えますから、一般家庭の食生活が変わると思います」

「そんな金額で出せるのか!
それなら、一般家庭でも毎日食べられるじゃないか」

「そんな夢みたいなことが実現できるんですか?」

「今、40羽のメス鳥がいます。 早ければ、一ヶ月後の魔物暴走の時期あたりには5倍程度のヒナが孵ります。
そのヒナが、玉子を産むようになるには120日くらいです。その時点で、メス鳥は140羽くらいまで増えます。
次のサイクル、つまり今から300日後には300羽以上のメス鳥が確保できます。
半数は増やすために残しますが、オスの肉や一部の玉子はその頃から出荷を見込めますし、日々増えていきますから出荷個数もそれなりに期待できると思います」

「夢のような話だが、もし実現可能だというのなら、いくらでも協力しようじゃないか」

「ええ、婦人会の方でも、協力いたしますわよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...