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第一章

銀玉の効果

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 領兵団の見張り小屋で後続を待つこと15分。 全員集まったが、小休止が入る。

「シュウさん、機械式馬車とやらは本当に早いですね。
馬車に馬が負けるなんて……情けないですよ」

 この間手合わせしたムラ君だ。

「僕の国で、200年かかって進化した最新式ですからね」

「ああ、シュウ君の国と戦争したら確実に負けるな。
敵国じゃなくてホントによかったよ」

「そうそう、なんたって食いもんが違うからな」

「あっ、今度ギルドの食堂を運営することになりましたから、オープンしたら食べに来てくださいね。
肉料理やドンブリのメニューを用意してお待ちしていますから。
それに今、道場で玉子を沢山産む鳥を試験的に飼っているんです。
そっちが軌道に乗ったら、卵料理も提供できますからね」

 カエデが食堂の宣伝をする。

「それは楽しみだ。 この間、領主館でご馳走になった料理は、とんでもなく美味かったからな。
家に帰って家内に自慢したら、なんで自分だけって怒られちまったよ。
これで埋め合わせができるな」


 さて、迷宮である。
銀の玉がかすっただけで、スケルトンはバラバラになるし、ゾンビやマミーは行動不能となった。
本来、物理攻撃が効かない悪霊系にも効果があった。
もちろん、俺以外にも試射してもらっている。

「驚いたな、ここまで効果的だとは・・・」

「しかも、うまく狙えば一発で2体・3体と突き抜けていくしな」

「こうなってくると、次の魔物暴走は射的大会になっちまうな」

「こらこら、気を抜くんじゃない。
シュウ君を見てみろ。 
これだけ上手くいったにもかかわらず、もう次のことを試してるじゃないか!」

「団長、シュウは別格だと諦めようじゃないか。
俺も、色んな冒険者を見てきたが、銀の塊から糸を繰り出して魔物を討伐する奴なんて見たことがない。
ありゃあ、錬金術の世界だ」

「いや、奴の作った銀をコーティングした戦斧や銀糸を織り込んだムチ、それにカエデさんが使っている銀製のレイピア。
どれも実用性がありながら、装飾も見惚れる程だ。
あいつは優れた鍛冶師としか思えませんよ」

「料理人でもあり、冒険者でもあり、そして一番は私の旦那様でーす。テヘッ」

「ウーッ、うちの婿とはいえ、なんか腹が立ってきたな」

「そうか、じゃあ団で引き取ろう!」

「やらん!」


 銀玉の効果試験は大成功に終わった。
その日のうちに、ギルマスと団長で領主様に報告され、銀コーティング弾の量産とスリングショット200丁を受注した。
銀の効果を発見した俺は、報奨を含め、金貨200枚(800万円)を受け取った。
そして、城壁に隣接した土地の使用許可も得た俺は次の事業である玉子とニワトリに取り組む事にした。

「本当にできるの?」

「ああ、大丈夫だと思う。
スキルに土魔法と強化をセットして、外側に堀を作って内側にその土を使った城壁を作る。
城壁も堀面も熱で乾燥させて強化で固めれば完成だ」

「じゃあ、堀沿いに植樹でもして公園みたいにしましょうよ」

「あっ、それいいね。 ベンチとか作っておこうか」

「堀の土を一旦収納で取り込み……そうか、収納の中で圧縮とか加工して取り出せるようにしてやろう。
まったく、便利なスキルだよな」

「そうね。神様に感謝しなくっちゃね」

「ああ、君とも出会えたし」 チュッ

「よし、『収納』『圧縮』『加工』、『デロ』」 簡単に、長さ10m×幅1m×高さ5mの壁ができた。
これを繰り返して、幅50m×長さ200mの養鶏場ができる。

「あとは鶏舎だな。鶏舎もおんなじ造りでいいだろう。」

「それで、ここを運営する適任者はいるの?」

「ああ、ザムザがクリーンのスキルを持ってた。
今も、道場の鶏はザムザが一人で世話してる」

「へえ、そんな特技があったんだ」

「ああ、剣の道は断念して、本気で取り組みたいって言ってきた。
そうだ、ここに部屋も作って、住み込みで……」

 住み込みと聞いて、ザムザの将来に不安を感じるカエデだった。
お嫁さん、来ないよ……
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