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第一章

謁見

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 領主様への手土産はペアのクリスタル製ワイングラスにした。
同僚の結婚式で出された引き出物だ。
それなりに豪華な化粧箱に入っているし、この世界にはガラスがないため、喜ばれるだろう。

 即席で作った料理とワイン数本にブランデー、ウイスキー、バーボン。
料理には冷凍食品のハンバーグやエビフライ、ポテトフライも加えてチンしてある。
もちろん、ソースとマヨネーズ・ケチャップ・マスタードも忘れてない。
缶ビールも10本追加した。

 料理は、全てカエデさんが試食済みだ。
それから、ちょっとだけ日本の街に出て、カエデさんの服も買い薄くメイクもしてもらった。
初めて見る町並みにキョロキョロしていたが、時間的余裕がない。

 サクラの瞬間移動で町に戻るともう15分前だった。
あわてて、領主館にいくとギルマスが門で待っていた。

「誰だそいつは、カエデをどうした!」

 カエデさんは口元を抑えて笑いを堪えている。
僕も無言でカエデさんを見る……と、気づいたようだ。

「いかがかしら、お父様……」

 水色のノースリーブワンピースが風に吹かれて裾を躍らせる。
シースルーのサマーカーディガンがカエデさんの白い肌を際立たせていた。

「お、おま……」放送禁止用語はダメですよ。

「さあ、時間がありませんから行きましょうか、お義父さん」

 俺も、一応ラフ目のジャケットにネクタイ、綿パンに革靴だ。

「お……おとうさん……だと!」

 領主は古代ローマで使われていたキトン風チュニックの上にトガという一枚布を巻きつける装いで、婦人はキトンだった。
同席者は他に領兵団長と、副団長2名。

 口を切ったのはギルマスだった。

「自衛組織一位、二位の推薦により、長らく不在でありました十五位が決まりましたので、ご挨拶に伺いました」

「うん、ご苦労様。
私は領主のセキと言います。妻はアマンダ。君の名前は?」

「はい、シュウと申します」

「シュウ君だね。色々と大変だろうが、よろしくお願いします」

 領主は腰の低い、くだけた方のようだ。

「コンゴウ殿、疑うわけではないが、門下生でなく突然現れた青年だとか。
できれば、お手並みを拝見したいのですが……なにしろ、女性同伴など初めてのこと……」

 副団長と紹介された片方、タケゾウさんだったが

「あらっ、もしかしてカエデちゃん?」

「アマンダ様、ご無沙汰しております」

「えっ、まさか七位のカエデさん!失礼いたしました」

「いやいや、タケゾウ殿のお言葉ごもっとも。シュウ、その格好で大丈夫か?」

「問題ありません。何をおみせすれば……」

「では、うちの15位相当の者と模擬戦をお願いしましょうか」

 全員で中庭に出ると団員が勢ぞろいしていた。
ジャケットを脱いでカエデさんに手渡すと、それを見ていた団員の視線が突き刺さってくる。

「スキルは禁止、木刀での一本勝負とする。では、始め!」

 すっと、自然体に構える、
うーん、13席のシンラさんほどではないけど、それなりの強さ。確かに互角だろうな。
中段の構えから、一合二合と切り結ぶが、双方とも崩れはない。

 ただ、クマほどの緊迫感はないと感じたので、意識的にスキを見せると乗ってきた。
シャツに掠るくらいのギリギリの間合いだ。パチっとボタンが弾けとんだ直後、俺の木刀が相手の肩を捉えていた。

「それまで!」

「団長、まだやれます!」と抗議する相手。おいおい、右肩を抑えてるじゃないかよ……
『治癒』で治療してやった。

「ほお、回復スキル持ちですか。これは貴重な戦力ですね」

 団長さんの評価ももらった。
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