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第一章

初めての剣道場

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 マリーさんから案内された剣道場にやってきた。
訓練生だろうか数人が門内の広場でガキッバキッと打ち合いをしている・・・
えっ?竹刀じゃなく木刀なの・・・

「ご、ごめんください」

「おう、何のようだ?」
一番門の近くにいた人が応じてくれた。

「ギルドのコンゴウさんに、こちらに通うよう言われたのですが……」

「そうか。じゃあ、先生を呼んでくるから待っていてくれ」

 日本の剣道場と違い、竹刀や防具といったものはない。
防御系のスキルをセットしておいてよかったと……その時は思いましたよ。

 少しして、小柄で仙人のようにやせ細った老人がやってきました。

「冒険者ギルドのマスターに言われて来たそうじゃの」

「はい。一週間通えと言われてきました」

「ふーむ……一週間のう……
そこの巻藁に、この木刀で一撃打ち込んでみなさい」

「はい」

 言われたとおり打ち込んでみると、明日の朝7時に全てのスキルを解除して来いと言われた。

「それで、得物は?」

「2mの鉄棒と、1mの鉄棒。スリングショットと短剣を持っていますので、状況に応じて使い分けたいです」

「欲張りじゃのう。
それで、スリングショットとはどのようなモノかの?」

「これです。これで鉄球を飛ばします」

 腰に差していたスリングショットと玉を見せる。

「ふむ、面白そうな道具じゃな。
裏の弓道場で試してもらおうかの」

 弓道場に移動し、試写してみせる。
射的補正で当然、的のど真ん中を射抜く。

「命中補正か……スキルに頼りすぎじゃのう……
どれ、貸してみろ」

 先生に渡すと、流石に一発で命中させてみせた。

「うーむ、この伸び縮みする紐が、もう少し強ければ使えるかもしれんが……」

「あっ、ありますよ。ゴムを二重にしたものが。
これで如何ですか」

 収納から取り出し先生に渡す。

「ほう、……ふむふむ……これならいけそうじゃな。
シュウだったか、玉を2、3発使ってもいいかの?」

「あっ、どうぞ、1000発ありますので」

 了解すると、先生はおもむろに上空に向けて弾を撃ち上げた。
俺たちが見上げると、鳥のようなものが飛んでおり、弾が命中したのか急にふらつき墜落していった。

「ガーゴイルじゃよ。時々ああして偵察にきよる。
これまで、鬱陶しく思っておったのじゃが、あそこまで飛ばす道具がなかったのじゃ。
うーむ……、どうじゃ、授業料の代わりにこいつを納めてくれれば嬉しいんじゃが……」

「是非、お納めください。
私には扱いきれず眠らせていたものですから」

 8mm鉄球200発と、強化スリングショットを授業料として納めさせてもらった。
アラソンの通販で2500円程度で入手したものだ、俺に異存などあるはずもない。

 その日は一旦帰宅し、言語変換以外の常時発動スキルを音声発動に書き換えておいた。
何にしても、風呂に入れるのがいい。
風呂上がりに缶ビールを開ける、残り少ない贅沢だ。
電子タバコを吸いながらPCのメールチェックをする。
思ったとおり上司からメールの返事が届いていた。

 診断書とか理由書もなしに休職とか取れるわけがない。
とりあえず39日残っている有給休暇を充てて、それでも戻れそうになかったらその時考えるという。当然の内容だった。
労働組合が強いので、解雇は難しいとも書かれていた。

 すんません。ご迷惑をかけますが、よろしくお願いします。と返信しておく。
8週間の間になんとかならなければ、今後の身の振り方を考える必要があるな……などと考えながら眠りについた。

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