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第一章

初めての狩り

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 ワークシャツにカーゴパンツと作業員ベスト。
つま先と足裏に鉄板の入った編み上げブーツ。
腰には折りたたみナイフ2丁とスリングショット。
手には直径30mm×長さ2000mmの鉄筋。

 スリングショット用の鉄球はポケットに入れてある。
とりあえずの必要そうなものは無限収納に入れておいた。

 町までだと20kmか……歩いて4時間強……
まあ、今日のところは様子見だな。

 家を出ようとするとネコ達がついてくる。

「お前たちはお留守番だろ……」

 そう、最近の飼い猫は室内飼いなのだ。
ネコの病気……猫白血病や猫エイズから守るために、基本外には出さない。

『シュウのフォローするから、付いていくにゃ』

『ネコ科の動物はいますが、家猫は存在しません。
ですから、病気感染の心配はありませんよ。
それから、ダニなどはクリーンの魔法で除去できますからね』

「そっか、じゃあ一緒に行こうか」

 轍(わだち)の残る3m程度の幅の道である。
30分ほど歩くが、何も起きない。

「物語なら、この辺で盗賊に襲われる馬車とか出そうなんだけどな……」

『そんな頻繁に盗賊が出てたら、町ぐるみで対策してますよ』

「じゃあ、モンスターに襲われる馬車。中にはお姫様が乗ってて、ムフフ……」

『王族が十分な護衛もなしに出歩くと思いますか?』

「ええっ?!俺の異世界ロマンはどうしてくれるんだ!」

『そんなに退屈なら、道を逸れて狩りでもしますか?』

『賛成にゃ!』

 クロウも退屈だったみたいだ。

『左に100mほど下ると、ハイイログマがいます。
ベテラン狩人4人程度で狩る獲物ですが、行きますか?』

「手頃じゃん。いく!」

 サクラの誘導に従って移動すると、体長2mほどの熊がいた。

『クロウに任せるにゃ』

「大丈夫か?」

『あの程度、多分余裕にゃ』

 言葉通り、一撃でクマの首筋を切り裂いてみせた。
クロウは身体強化タイプみたいだ。
獲物を収納に収容する。

「サクラ、他にはいない?」

『そうですね……このまま下ると川があります。
そこに。魔狼が10匹いますね。
魔狼は単体なら成人男性一人で対応できますが、複数だとコンビネーションを使ってきますのでやっかな魔物と言えます』

「よし、それなら俺も参戦できるな」

 素早い敵に対応できるよう、3m鉄筋を収納し、直径13mm長さ1000mmの鉄筋を取り出す。
だが、鼻の効く魔狼は俺たちの接近に気づき、逃げ出そうとした。

『アイスニードル!』

 サクラの魔法であっさり一網打尽になる。

「……俺の獲物は……」

 少し離れた場所で一角うさぎに遭遇する。
一角うさぎは、俺たちを認識すると頭の角を使って突進してきた。
俺は難なく身を躱しカウンターぎみに鉄筋を叩き込む。

「クロウがクマで、サクラが狼で、俺はウサギ……」

 釈然としない想いだが、俺たちはそれぞれ初陣を飾った。

「ところで、言葉は通じるのかい?」

『日本語が通じるかと思いますか?』

「やっぱ……スキルで対応しないとダメ?」

『当然ですね』

「はあ、言語補正と……射的補正も必要だよな……
仕方ない、蘇生と幸せの祈りは消すか……」

 実は、魔狼が逃げ出したとき、スリングショットで鉄球を打ち出したのだが的外れな方向へ飛んでいった。
初日はこんなところで引き上げることにする。

 家に帰り、一角ウサギを解体するのだが、一般的なウサギの倍くらいはある。
血抜きして後ろ足を縛って吊るし、万能バサミを使って皮を剥いでいく。
頭を落として、内蔵を抜くと約4kgになった。
動画でしか見たことがなかったので悪戦苦闘しながら1時間かけて解体完了。
そのまま庭で網焼きする。

「弾力があってうまいな」

『プニプニしてますね』

『塩焼きよりも、焼肉のタレの方が美味しいにゃ』

 二匹も当たり前に食べていたりする。
特に焼肉のタレに含まれている香辛料やネギ類は……ダメなはずなんだが……
スーパーキャットには問題なかったようだ。
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