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第一章

偽物

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翌日、昼過ぎに老人は目を覚ました。

「こ、ここは……」

「ミシティーの城じゃよ。
お主はジャンなのか?」

「お、お前は……」

「ああ、そうか元の姿に戻るのを忘れておったわ」

シュン

「これでどうじゃ」

「モウジュかよ……」

「やはりジャンなのだな」

「ああ、どうして俺はここに?」

「ここにいるマリアが、地下牢で見つけたと連れてきてくれた」

「ミスティー国第三王女の娘マリアでございます」

「す、するとジェシカの娘か……」

「母をご存じなのですか」

「ああ、ジェシカに目元が似ている……
小さいころからな、俺に懐いてくれて……」

「それでだ、ガンダルカンはミシティーを攻め滅ぼした」

「だろうな。俺の反対を押し切ってあいつは戦の準備を進めていた」

「あいつとは?」

「俺の双子の弟だと言っておった。
真偽は知らぬが、少なくとも俺と同じ顔をしていた。
その頃から体調がすぐれず、寝たきりだった俺のふりをしていたようだ」

「それで地下牢か。
だが、よく生きていられたな」

「どういうつもりか知らんが、最低限の食事は運ばれてきた」

「三人の息子というのは知っているのか」

「ああ、あいつの子供だと言っていたな」

「ふむ、謎は解けたが、これからどうするかじゃ」

「正面切って戦えば、また大勢が死にます」

「だが、偽物を放置しておくわけにもいかんなぁ」

「城に忍び込んだ時、闇の中に届く攻撃を受けました。
暗殺もむつかしいと思います」

「ああ、わしもあれで脅されたことがある。
だが、あれはスキルとかではなく、剣の能力だと思う」

「それ以外にも十王と呼ばれる人たちがいるんでしょ」

「十王の何人かは、事情を説明すれば味方になってくれるやもしれませんな」

「ミシティーの元兵団長という人はどうなんですか?」

「ガルバだな。あいつの嫁が俺の妹なんだ。
それで弱みを握られているのだろう」

「じゃあ、説得の価値はありそうですね」

「俺が親書を書こう」

「ほかの人はどうなんでしょう」

「皇帝のいいなりじゃな。
接触するだけ無駄じゃろう」

「隣の国に攻め込むという噂も聞いてますが」

「こっちに残している兵を引き上げてからじゃろうな」

「その兵士って、先に仲間に引き入れておかないと」

「小隊長級を集めて、ジャンに登場させるか」

「俺はなんでもやってやるぞ」

「皇帝とお母さまを出せば、旧ミシティーの人たちも協力してくれないかしら」

「ともかく、こっちの地固めが優先か……」
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