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浦島太郎

カッパさん

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「ごめんください」

「はい、いらっしゃいませ」

「あの、河童な私でもお仕事紹介していただけるんですか」

「大丈夫ですよ。
では、こちらに、ご記入をお願いします」

「はい……できました」

「拝見いたします。
お名前は河原美智子さん。31歳、独身。
種族は河童で、特技は水中での活動。
息継ぎは必要ないんですか?」

「この甲羅の中で酸素が発生しますので、何時間でも大丈夫です」

「あとは、尻子玉抜き……これって?」

「尻子玉というのは魂の事です。
魂を抜いて放置すると死んじゃいますけど、1時間以内なら復活できます。
やってみましょうか」

「いえ、遠慮……!
ちょうどいいお仕事がありますよ。
カメになってみませんか」

「カメですか……似てますけど……」

「依頼主は乙姫様で、これは繰り返し行われますので、長期契約可能です。
最近は、子供も理屈っぽくなってきて、浦島太郎はなんで水の中でも平気なんだって、投書が相次いでいるそうなんです」

「はあ……」

「この尻子玉抜きがあれば、ほら……」



そういう訳で、私はカメのお仕事をいただきました。

最初は砂浜で子供たちに虐められるシーンからです

手足を丸めて、河童だとバレないようにしないといけません。
河童だってバレたら怖がられちゃいますからね。

少しすると太郎さんがやってきて、子供たちを追い払ってくれます。
ここで注意しなくてはいけないことは、立ち上がってはいけません。
あくまでも四つん這いで海に帰ります。

「お礼に、竜宮城にお連れ致します。
どうぞ、背中にお乗りください」

カメがしゃべることについてはスルーなんですかね……

それから、ここでも注意です。
子供たちに残酷なシーンは見せられないので、尻子玉を抜くのは海中に引きずり込んでからです。

こうして無事、浦島太郎は竜宮城に到着します。

私の出番はまだあります。
ブレイクダンスを披露して、帰りの送り届けがあります。

でも、何百年も経っているのに気づかないって、太郎さんもいいかげんアレですよね。

帰りはまた、尻子玉を抜いて、仮死状態の太郎さんを送り届けます。

太郎さんを横抱きにして、玉手箱まで持たなくてはいけません。
結構ハードなんですよ。

こうして、無事、太郎さんを浜にお届けしました。
えっと、砂浜の先には、防波堤が作られていて、その向こうに高層ビルが見えます。
波間にはサーファーやウィンドサーフィンを楽しむ人たちが……
ああ、海の家も出てますね

「どこだここは!」

「いやだなぁ、元の砂浜ですよ。
では、私はこれで……」


「待てぇー……」

太郎さんの叫びが空しく響くのでした。

めでたし めでたし …………
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