稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅴ章 北からの来訪者

献立

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屋敷に戻ったシーリアは、メイドたちを集めて事のあらましを説明した。

「つまり、肉食系男子を篭絡するにはどうしたらいいかということですね」

「うーん……、まあ、そんなもんかな」

「メインディッシュの候補は、唐揚げ・生姜焼き・ドラゴンステーキあたりですね」

「あっ、ドラゴンのお肉残ってるの」

「はい。ステーキ肉で3人分くらいですね」

「お米はあるの?」

「少量ですが10食分くらいはあります」

「じゃあ、ごはんとオカズ3品をメインにしましょう。
前菜はローストビーフとこの間作ったロール青菜のコンソメ煮あたりでどうかな」

「ダメもとでポテトサラダもお出ししましょう」

「最近、半熟卵を研究しているんですが、コンソメ煮なら半熟卵を添えてみたら如何でしょう」

「いいですね。
ほかに研究成果のある人は?」

「はい。デザートなんですが、プリンとフルーツと生クリームを組み合わせてみました。
生クリームにベリー系のジャムを少量混ぜてやると、酸味が甘みを引き出せていると思います」

「うん。いい組み合わせだと思う。
今晩作ってみんなで確認しましょう」

「プリンなら、ぴったりのハーブティーをブレンドしてあります」

「じゃあ、それも試してみましょうね。
あっ……」

「どうされました?」

「トランザムのおじさまを忘れてました。
トランガまで送って差し上げないと……」

「先ほど、城から、馬車で帰るから心配するなと伝言がありました」



当日は、早朝からワイバーンが呼び出され、約束の場所に向かって十数匹が飛び立った。
岸に降り立ったシーリアは、龍に指示して土魔法で簡単な建屋を組み上げる。

「あとは、厨房もお願いね」

ピュリー!

同行したメイドたちは、コメを研ぎタイミングをあわせてごはんを炊き始める。

約束の時刻となり、魔族のルシフェルが現れる。

『おいおい、随分と大げさだな』

『食事というのは、私たち女にとっては武器であり戦と同じです。
どれだけ準備しても、相手がどう感じてくださるかわかりません。
これでも、心もとないんですよ』

『おいおい、戦は一か月先だぜ』

『女の戦いは、今、この瞬間から始まっております』

『ふむ、面白い。
お前と俺との一騎打ちということだな』

『最初に申しあげておきます。
トランガの町で、300年前の記録を確認し、赤い月のことも真実であったと判明いたしました』

『ならば、あとは当日を待つだけだな』

『ですが、私は戦を回避したいと思っております』

『約定を破るつもりか?』

『後ほど、新たな約定を提案させていただきます』

『後ほど?
その約定に、食事が関係しているということか』

『ご慧眼のほど、恐れ入ります』

『わかった。
では、食事を馳走になろうではないか』

『はい。お楽しみいただけるよう、最善を尽くします』
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