稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅲ章 アルトハイン

王子がきた

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ゼン王子様がやってきたのは6月中旬でした。
シャイリアの町の人が見かけたと連絡が入り、私もお迎えに出ます。


「王子様、本当に来てくださるとは思いませんでした」

「俺って、そんなに信用ないのか……」

「いえ、ですが、途中で合流するとか思っていましたから、まさかずっと同行されるとは思いませんでした」

「ああ、確かに前半の一か月。山道に差し掛かるまではこいつらに任せてたよ。
この東回りのルートは、それほど高低差がないとはいえ、オオカミなんかも出るからな。
それでも、無事にたどり着けたのは、このホーリー・ライトとこいつらのおかげだ」

「まあ、みなさん、ありがとうございます。
ホーリー・ライトって、またオリジナルの名前を付けられたんですか。
うちの王様が怒りますよ」

「まあ、そこはうまくとりなしてくれ。
それから、こいつらはお前の料理目当てだ。
シーリアチップスとハニーシーリアは、あっという間に広まったぞ。
それに、一角獣の角は3本しか見つからなかった。
これで、作れるだけ頼む。
引き続き探させているが、わが国では一角獣の目撃例も少なくてな……」

「それでしたら、私の方で2本確保できましたから、大丈夫ですよ。
もう制作に入らせていますから、一週間ほど滞在していただければお帰りには間に合わせますから」

「ホントかよ!
ああ、これでわが国も明るくなるな」

王子様から角を受け取り、ピー助に持たせて先に届けさせます。

その夜は、とりあえずのイノシンベーコンです。
ミーちゃんに石のプレートを作ってもらい、その上でジュージューと焼いていきます。

「うほっ!肉の味が違う。これが、オリジナルのベーコンか!」

「そうですな。辛さもちょうどいいし、香草が肉の臭みを消していますね。
国のベーコンとは別物ですよ」

「ベーコンの油で焼いたジャガイモとオニオンもいけますね」

焼くのは王子様に任せて、ここまで水牛を連れてきてくれたウルフたちにもおすそ分けです。

「ここまでお疲れ様。お肉はいっぱいあるから、どんどん食べてね」

クーン、ワウ、バウ みんな嬉しそうです。

「あそこがシャイリアで、あれが王都か。これだけ離れていても光が届くとは」

「どこまでアンデッドに効果があるかは分かりませんけどね」

「わが国もこんな風になるのか……」

「王都は、少し灯りが多すぎたくらいです。
そのせいで、窓を遮らないと眠れないって人が増えて、厚手の布で窓を覆うのが流行っているんですよ」

その夜はミーミーハウスで寝てもらい、毛玉モードで疲れをいやしてもらいます。

「なんだ、この爽快感は……」

「ホントです。疲れが吹っ飛びました」

「ミーミーの毛玉モードには、同室の方をリフレッシュする効果があるんです。
国でも人気なんですよ」

「そんな話は聞いたことがない」

「だから言っただろう。
シーリアの従魔には常識が当てはまらないと」

「王子は少し話を膨らませることがありますからね。そのまま信じるやつはいませんよ」

そうだそうだと同意の声があがります。

こうして、王都に到着し、国王に謁見してもらいます。


「ゼン・アルトハイン王子。遠路はるばるご苦労であった。
しかも、門外不出の水牛を譲ってもらえるとは思いもよらぬことだ。
全国民になり代わって感謝する」

「いえ、こちらこそチルバへのご支援に感謝しております。
おかげさまで、一人の犠牲者もなく乗り切れたのは、ゼファー王のご英断の賜物。
現にお二人が到着されたその夜に、町への襲撃がございました。
速きに重点をおかれたご慧眼には感服致しました」

「なにはともあれ、今宵の宴席までは十分に体を休めてくれ」

「はっ、ご配慮、痛み入ります」

一応の、儀礼的なやり取りの後で、入浴していただき夜を迎えます。
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