稀代の魔物使い

モモん

文字の大きさ
上 下
59 / 172
第Ⅱ章 二人旅

そういうことは、もっと早く言っていただけないと……

しおりを挟む

「そのワイバーン自体は従魔登録の特徴があったものの、傷が深く死んでしまいました。
私たちが接触したのは墜落したあとで、交戦などは行っておりません。
そのワイバーンが飛び立ったと思しき山頂で、死後数か月と思われる死体とワイバーンの子供3頭を保護しました。
その死体の所有物がこちらで、ギルドの登録証からラトランドの国民だと判明いたしました。
所有物の中身までは見ておりませんので、どこかの部署で確認をお願いしたいと思います。
それから、来年の春になりましたら、私達二人でラトランドへ行き、その親族に荷物をお返しできればと考えています」

「そうか。
総務局長、荷物の確認を任せる。
ラトランド行きは、情報を集めたうえで判断する。
以上だ。
……、で、そのワイバーンも連れてきているんだよな」

「はい」

「陛下!私も後学のために同行させてください。
ワイバーンは初見であります」

結局、全員がゾロゾロとついてきました。

ミーちゃん達は、内務局の一角で待機しています。
当然、毛玉モードでワイバーンをくるんでいますが、ここのお姉さんたちは誘惑に耐えています。

「ほう、ここの職員は毛玉の誘惑に耐えるのかよ。
ジャルクでさえ精いっぱいだったと言っていたが、内務局長の指導の賜物だな」

「陛下、刺激しないでいただきたい。涙目になっている職員もいますから」

「おお、レオンも元気そうだな。
よしよし。で、これがワイバーンか。ん、一頭は右手がないのか」

「駆け付けた時は、狼に襲われていまして、一頭が命を落としております」

「なあ、シーリア……」

「却下です」

「なっ。何を……」

「一頭よこせと目が言ってますから」

「だってよお、大きくなったら乗れるんだろ、それ。
お前たちだけで空を独占するなよ」

「えっ、乗れるの?ですか」

「ああ、隣国のワイバーン使いは、それに乗っているらしい。
死んだ魔物使いも、おそらく飛んできたんだろう。まあ、考えておいてくれ。
よし、次はファルコンだ。
あっ、内務局長、毛玉に耐えた褒美として交代で10分間の休憩を与えてやれ」

「はっ」



「ほう、きれいで、それでいて逞しいな。
ピー助、訓練してくれたんだってな。感謝する」

ピー

「褒められて嬉しいそうです。
さあ、飛んで見せてあげて」

ピー助を先頭に一斉に上昇し編隊飛行に移ります。

「おい、あれって急降下の姿勢だよな。羽ばたかずに飛んでるのはどうしてだ」

「追いかけっこをしていたらできるようになりました」

「やけに速く感じるんだが……」

「限界を超えたようです」

「なんの限界を超えたんだよ!」

「さあ」

「頼む、お前たちはもう少し常識を弁えてくれ。
俺の根底にある世界観が揺らぐ」

「そういうことは最初に言っていただかないと……、もう手遅れですわ」

「なに!」

「あのファルコンたちは10日でピー助の真似を始めました。
セイレーンだって空を駆けちゃうし、今更そんなことを言われても、もとには戻れません」

「そ、そうなのか……」

「ええ、王様は、すべてを受け入れるしかありませんわ」

お姉ちゃんが、オーッホッホッと勝ち誇ったように笑った気がしました。
多分、気のせいです。

内務局に戻りましたが、5人ずつ交代で休憩しているため、できれば30分ほど待ってほしいと懇願されました。

「では、先に屋敷へ案内していただきましょう」

「承知いたしました」

ケイトさんに案内されて屋敷に向かいます。
城から見て町の中心部とは反対側に貴族街があり、町中にあった先生のお屋敷とは趣が違います。
城門から出て2本目の道を左に曲がった3軒目にそれはありました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

婚約者に犯されて身籠り、妹に陥れられて婚約破棄後に国外追放されました。“神人”であるお腹の子が復讐しますが、いいですね?

サイコちゃん
ファンタジー
公爵令嬢アリアは不義の子を身籠った事を切欠に、ヴント国を追放される。しかも、それが冤罪だったと判明した後も、加害者である第一王子イェールと妹ウィリアは不誠実な謝罪を繰り返し、果てはアリアを罵倒する。その行為が、ヴント国を破滅に導くとも知らずに―― ※昨年、別アカウントにて削除した『お腹の子「後になってから謝っても遅いよ?」』を手直しして再投稿したものです。

処理中です...