稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅰ章 修行

隣町が大変なんだそうだ

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「それでな、南と東の洞窟じゃあ修行にならねえんだ。
この分じゃあ、北でも西でも大した修行にはならねえよ。
どっかいいところねえか」

「北にはギガンテスクラスがうようよいるんですぞ、あれには手こずるでしょう」

「いや、多分一撃だ。三匹ともそれくらいじゃあ相手にならねえよ。
唯一、サイレントウルフの練習台ってところだな」

「だって、一匹はファルコンでしょうよ」

「そのファルコンが、キラーベアーの腹に突っ込んで穴を開けちまうんだよ。
ノロマのギガンテスなんざ、ただの標的だよ」

「では西の平原にいるキマイラも……」

「羽をボロボロにされて、地上でタコ殴りされる姿しか思い浮かばねえよ。
しかもなぁ、フォレストキャットはもっと強えんだ。
空中を走るし、キラーベアーの首だって一撃で切断してのけた。
待ち伏せの狩りの時は、姿を見失っちまった。
それでもまだ余裕なんだよ、あいつは……」

「それ以上となると、極北に住むといわれる悪魔ですか……」

「いや、悪魔は下手に刺激したくない。実態が判らねえしな」

「北西の山に住むゴーレムはどうですか」

「キマイラの次に向かうつもりだ。だけどよ、あいつらがダメだった場合の保険がねえんだよな。
ヴォルフじゃあ、ゴーレムを相手させるには力不足だ。
一旦王都に戻って、あいつを連れてくるしかねえかな」

「あれを連れ出すと、街には入れませんからねぇ。
そうだ、思い出しました。
東の洞窟の北東に、隣のメリア王国の町があるんですが、最近アンデッドに襲われているそうなんです。
国からの応援要請はないのですが、ギルド間で応援の要請が来てるみたいですよ」

「ギルド間か。これでも宮廷魔物使いの一員だからなぁ。
変ないちゃもんつけられても困るんだが……、行くだけ行ってみるかな」



「私たちもギルドでその話を聞きました。一緒に行ってくれないかって。
先生に聞いてみないとって保留しましたけど。」

「出発は?」

「明後日の早朝だそうです」

「じゃあ、同行すると返事していいぞ」



「お姉ちゃん、何を書いてるの?」

「王様から、町に寄った時には経過報告を送るように言われたの。
でも、いろいろとあったから、何を書こうか迷ってるのよ」

「帰ったら王様と結婚するの?」

「な、なにを言い出すのかしら、この子は!」

「キャッ」 お姉ちゃんが襲い掛かってきました。

「はあ、王様のことなんかよく知らないし……
そりゃあ嬉しかったわよ。あんな風に言われれば……
私だってもう30になるんだし、結婚だってしたいと思うわ。
でもねぇ、冒険者と魔物使いのことしか知らないし、お妃なんか出来るわけないでしょ」

「うーんと、私も三か月前は何にも知らなかったよ。
でも、いろんな事を教えてもらって、今は魔物使いだって言えるんだから、きっと大丈夫だよ」

「いや、そこ全然大丈夫じゃないわよ」
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