天と地と空間と海

モモん

文字の大きさ
上 下
50 / 51
第四章

第50話 ああ、大臣室での行為はやめておいた方がいいですよ

しおりを挟む
「ジン君、誕生日おめでとう。」
「お兄ちゃん、ハッピーバースデー。」
「ありがとう。」
「やっと18才……っていうか、信じられないわね。」
「なにが?」
「あのね、世間の18才は中等部のお子ちゃまよ。」
「ああ、俺の甘酸っぱい青春はどこに行っちゃったんだ。」
「やっと解禁ね。」
「何が?」
「子作り。我慢してたんだからね。」

 そう。俺たちは入籍するまで子供は控えようといって避妊してきた。
 行為はしていたが……。

 朝の散歩を兼ねて俺たちは琉球本島の役場へ行き、入籍の手続きを行った。
 戸籍謄本は取り寄せてあった。
 新しい戸籍は、竜宮で行った。
 真藤仁、紗香、ハイジの3人で作る戸籍だった。
 ちなみに、日本国籍を取得する際、ハイジで登録してあるのでこれが本名だ。

 手続きを終えた直後に大臣から連絡が入る。

「ジン君、緊急事態だ!」
「いや、俺特別休暇中なので一週間後にしてください。」
「待ってくれ!切らないでくれ!」

 俺はスマホの電源を切ってバッグにしまった。
 サヤカとハイジも同じように行動する。

「桜、何があった?例のやつか?」
『はい。情報通り、シベリアとシンとイラソとチューバが隣接国に対して宣戦布告を行いました。』
「やれやれ、チューバもかよ。懲りねえな……。」
『大和に対しては、シベリアとシンから宣戦布告を受けています。いかがなさいますか?』
「4か国にある発射可能な核ミサイルを全て、太陽に向けて発射。」
『システム……セット完了しました。カウントダウン省略、発射します。』
「4か国の全発電所と変電所をシステムダウン。非常用発電機ロック。医療機関以外の補助電源を全て遮断。」
 
 桜との会話は、サヤカとハイジもモニターしている。

「シベリアとシンの潜水艦を含む全艦船の電源オフ。バッテリーだけは残して経過観察。」
『承知いたしました。全艦船の電源を順次オフにします。』
「シンの飛行艇3機、船内の全システムを消去し、ダミーデータで上書き。シベリアとイラソに出荷された模倣機も同様の処置。」

 シンには共同開発した飛行艇が3機存在する。
 システムのコア部分はプロテクトがかかっているが、念のために全て使用できなくする。
 
 俺たちはこれから1週間、西表島に作った別荘で過ごすのだ。
 誰にも邪魔はさせない。

「4国の軍属魔法士のナビを初期化しろ。」
『初期化開始します。』

「えっ、そんなものまで把握してるんだ。」
「世界中のスパコンを連動させているからね。」

 そこに海軍のSUVがやってきた。

「真藤隊長!休暇中のところ申し訳ございませんが、緊急事態のため基地までご足労いただきますようお願いします!」
「嫌です。」
「そんな事言わないでくださいよ。」
「僕たちは今、婚姻届けを出して、家族で余韻を楽しんでいるところなんだ。邪魔しないでください。」
「そんな状況じゃないんですよ。」
「シベリアとシンから宣戦布告を受けた事なら、個人的に対処してありますから問題ありません。」
「えっ?」
「心配要りませんから、鈴木さんも基地に帰ってください。」
「そんなわけいきませんよ。お願いしますから基地まで来てください。」
「じゃあ、1時間だけ同行しますから、その分、1日追加して休みますからね。」
「はい。それでいいですから。」
「その日の調整は鈴木さんがやってくださいね。」
「私が真藤隊長の調整なんてできるわけないでしょ!」
「じゃ、同行は拒否します。」
「ちょ、ちょっと待ってください。基地に確認しますから……。」

 そういって海軍の鈴木中尉は車に戻り、再びやってきた。

「基地司令が責任をもって対応するそうです。」
「榊原指令が確約っと。動画で残しましたから、言い逃れはできませんよ。」

 俺たちは基地に連行され、対策本部とのTV会議に同席させられた。

「おお、ジン君、休暇中のところ申し訳ない。」
「あと48分だけお付き合いします。状況は全て把握していますから、説明は不要です。」
「助かる。最新情報だが、シン国およびシベリアから発射されたミサイルは、全て太陽に向かっている事が判明した。」
「総理、それはどういう事ですか?」
「理由も動機も一切不明だ。」
「大気圏外から、急に反転する可能性はないんですか?」
「それは不明だ。」
「反転はありません。」
「ジン君、まさか君が……。」
「これは個人的に対処した事なので、国は関与しないほうがいいです。」
「馬鹿なことを言うな!国の防衛に関する会議なんだぞ!」
「あの人誰?」
「ああ、今回就任した陸上幕僚長の石上君だよ。」
「石上さーん。他国の核ミサイルに干渉するなんて、国として判断できるわけないでしょ。よく考えて発言してください。」
「なっなっ……。」
「陸上幕僚長、発言は控えるように!それで、ジン君。シベリアとシンが、現在沈黙しているんだが。」
「詳細は知らないほうがいいです。ともかく、僕の生活に影響しないようにコントロールしていますからご心配なく。」
「貴様、その言いぐさ……。」

 面倒なので、陸上幕僚長の参加してる端末をダウンさせた。

「時間の無駄なので退席してもらいました。」
「ジン君、まさか君……、大和のシステムも……。」
「首相、知らないほうがいいですよ。少なくとも皆さんが裏切らない限り、僕は大和と敵対はしないし、見捨てたりしませんからね。」

 少しの間沈黙してから、防衛大臣が発言した。

「ジン君。今回の対応は信用していいんだな。」
「今回の蜂起に関して、最初のアクションは4か月前のプーチソ大統領がイラソを訪問した際の会談から始まっています。」
「そ、その内容まで知っているというのかね。」
「国の首脳が動けば、記録は必ず残りますからね。その時に、飛行艇の有用性を確認した2か国がシンを取り込んだ事で事態は活発化します。
その後、チューバに出現したシステムをそのままコピーできる能力者が飛行艇の全システムをセキュリティー毎コピーして模倣機を増産していったことで準備完了といったところです。」
「で、では、飛行艇の模造品が量産されていると……。」
「それも対応済みですからご安心ください。」
「だ、だが何でその情報を報告しないのだね。」
「総務大臣。それを報告して、大和は対策をうてるんですか?」
「少なくとも、その情報を持っていれば……。」
「その情報を持っている事が、あなたの部下の種市補佐官からシンに伝わり、大和は追及されたでしょう。」
「た、種市がスパイだと!」
「これから順番にスパイ行為をしている人のスマホを鳴らしていきますから、確実に拘束してくださいね。」

 各省庁にいた内通者は46人に及んだ。
 
「証拠も提示できますので、必要があれば8日後に連絡ください。」
「8日後?」
「ええ。6分後から僕は結婚休暇に入りますので、絶対に邪魔しないでください。」
「世界がこんな状況なのに……。」
「あなたがたと違って、僕は24時間動いているんだ。あなたみたいに、愛人を作っている暇もないくらいにね。」
「なにぃ!」
「ああ、大臣室での行為はやめておいた方がいいですよ、経済産業大臣。政策秘書の北島涼子さんでしたっけ。」

 時間になったので、俺はTV会議から退席した。
 これでやっと休暇に入れる。


【あとがき】
 まさかの世界大戦勃発。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

病弱聖女は生を勝ち取る

代永 並木
ファンタジー
聖女は特殊な聖女の魔法と呼ばれる魔法を使える者が呼ばれる称号 アナスタシア・ティロスは不治の病を患っていた その上、聖女でありながら魔力量は少なく魔法を一度使えば疲れてしまう そんなアナスタシアを邪魔に思った両親は森に捨てる事を決め睡眠薬を入れた食べ物を食べさせ寝ている間に馬車に乗せて運んだ 捨てられる前に起きたアナスタシアは必死に抵抗するが抵抗虚しく腹に剣を突き刺されてしまう 傷を負ったまま森の中に捨てられてたアナスタシアは必死に生きようと足掻く そんな中不幸は続き魔物に襲われてしまうが死の淵で絶望の底で歯車が噛み合い力が覚醒する それでもまだ不幸は続く、アナスタシアは己のやれる事を全力で成す

倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ
ファンタジー
 謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。  二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。  更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。  それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。  異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。  しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。  国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。  果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。  現在毎日更新中。  ※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

【短編】冤罪が判明した令嬢は

砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。 そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。

もういらないと言われたので隣国で聖女やります。

ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。 しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。 しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。

食いしんぼうエルフ姫と巡る、日本一周ほのぼの旅!

タジリユウ
ファンタジー
ローカルネタ、観光、グルメ! エルフ姫を連れて現代日本一周旅! 異世界への扉が各国に繋がって早5年、ついにこの日本にも異世界への扉が繋がった。他国と同様に異世界の人々と友好的な関係を結び、互いに留学生を送り合うこととなる。 やってきたのは異世界のエルフのお姫様。なぜか過去に自転車で日本一周をしたことがあるだけのただの営業マンがその案内をすることに!? ※ 他作品もよろしくお願いします ※他サイト様にも投稿しております

小さなわたしたちが1000倍サイズの超巨大エルフ少女たちから世界を取り返すまでのお話

穂鈴 えい
ファンタジー
この世界に住んでいる大多数の一般人たちは、身長1400メートルを超える山のように巨大な、少数のエルフたちのために働かされている。吐息だけでわたしたち一般市民をまとめて倒せてしまえるエルフたちに抵抗する術もなく、ただひたすらに彼女たちのために労働を続ける生活を強いられているのだ。 一般市民であるわたしは日中は重たい穀物を運び、エルフたちの食料を調達しなければならない。そして、日が暮れてからはわたしたちのことを管理している身長30メートルを越える巨大メイドの身の回りの世話をしなければならない。 そんな過酷な日々を続ける中で、マイペースな銀髪美少女のパメラに出会う。彼女は花園の手入れを担当していたのだが、そこの管理者のエフィという巨大な少女が怖くて命懸けでわたしのいる区域に逃げてきたらしい。毎日のように30倍サイズの巨大少女のエフィから踏みつけられたり、舐められたりしてすっかり弱り切っていたのだった。 再びエフィに連れ去られたパメラを助けるために成り行きでエルフたちを倒すため旅に出ることになった。当然1000倍サイズのエルフを倒すどころか、30倍サイズの管理者メイドのことすらまともに倒せず、今の労働場所から逃げ出すのも困難だった。挙句、抜け出そうとしたことがバレて、管理者メイドにあっさり吊るされてしまったのだった。 しかし、そんなわたしを助けてくれたのが、この世界で2番目に優秀な魔女のクラリッサだった。クラリッサは、この世界で一番優秀な魔女で、わたしの姉であるステラを探していて、ついでにわたしのことを助けてくれたのだった。一緒に旅をしていく仲間としてとんでもなく心強い仲間を得られたと思ったのだけれど、そんな彼女でも1000倍サイズのエルフと相対すると、圧倒的な力を感じさせられてしまうことに。 それでもわたしたちは、勝ち目のない戦いをするためにエルフたちの住む屋敷へと向かわなければならないのだった。そうして旅をしていく中で、エルフ達がこの世界を統治するようになった理由や、わたしやパメラの本当の力が明らかになっていき……。

処理中です...