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第一章
第10話 遠隔魔法は発動できるものなのだろうか?
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「あっ、すみません。ちょっといいですか?」
「どうしたんだいジン君。」
「今回、初参加でこれまでの取り組みはよくりかいしていないんですけど、僕なりに試してきたことがあるので、できれば皆さんの方向性とずれていないか確認したいのですがよろしいでしょうか?」
「だからさぁ。そういうスタンドプレーが嫌いなんだよ。」
「まあまあ山岸君。とりあえず話を聞いてみようじゃないか。評価はそのあとでいい。」
「まあ、榊さんがそういうなら……。」
「皆さんの邪魔をしてしまい申し訳ないです。手短に話します。」
「前置きは要らないぞ。」
「はい。ではいきます。まず、本人から壁を隔てて置かれたターゲット。これには今のところ魔法は発動していません。」
「今のところ?」
「はい。魔力の感じからすると、もう一息で流れていきそうな感覚はありました。でも、今のところはNGです。」
「あっ、その感覚、実験してて僕も感じたよ。」
「筑紫、それ本当か?」
「うん、感覚だから何とも言えないけどね。」
「じゃあ、そこをもう少し詳しくお話しします。自分の手で置いたものをカメラ越しに見た場合、対象の特定……僕は”ロック”と呼んでいますが、そこまでは作動したけど魔法は発動しなかった。
一方で、第三者にセットしてもらった場合は、同じカメラ越しでもまったく反応しませんでした。」
「ちょっと待てよ。お前のナビは、アクションごとの動作確認ができるっていうのか?」
「はい。AIが連動していますので、そういう解析も可能です。」
「信じられねえよ。科学屋として、そんなのどこも公表してないだろ。」
「すみません片桐さん。今回、皆さんが取り組んでたれるのは、結構重いテーマだと思います。ですから僕も手の内を明かしていますが、これオブロンの機密情報です。非公開でお願いします。」
「ああ、そういう事かよ。お前もマジでやる気なんだな。」
「ええ。必要ならオブロンに無償で協力させます。それくらいの貸しは作ってありますから。」
「くくくっ、オブロンを手駒で使うってのかよ。とんでもねえ新入生だな。」
「ジン君、オブロンに見返りは渡せないと思うけど、大丈夫なのかい。」
「はい。今回のテーマは先輩たちのもので、僕は単に検証を手伝うだけだと言ってあります。」
「ちょっと待ってよ。あのオブロンなのよ。」
「大丈夫ですよ。この取り組みは学校活動の一環です。オブロンも防衛庁と僕を敵に回す度胸はありませんよ。」
「話を戻そう。今の話が本当なら、ブラインドになっている場所でも、条件によって魔法の発動する可能性があるということだよね。」
「そうです。さらに、テレビ会議でも同じでした。」
「テレビ会議だとぉ!」
「テレビ会議で、第三者に用意してもらったペットボトルの水で試したところ、ロックまでは動作しました。」
「ちょっと待てよ。それって、視界に収まる範囲なのか?」
「直線距離で40kmくらいですね。」
「なに、夢みたいなこと言ってんだよ。誰も検証できねえからって、いい加減なこと言ってんじゃねえよ!」
「山岸君、落ち着き給え。」
「そう。そんなことで魔法が発動したら、戦争が根底から覆っちゃうよね。だからジン君は重いテーマだと言っている。」
「はあ、軽い気持ちでいたのは私たちってことよね。」
「じゃあ、次のステップに進みます。」
「まだ先があるっていうのかよ。」
「はい。SRS、ショートレンジサーチという魔法があります。」
「残念ながら俺は知らないが……。」
「僕は、聞いたことがある。多分4年でならうんじゃないかな。」
「高橋、どういう魔法なんだ?」
「条件なしの単独の魔法で、100m以内を探査する時に使うって聞いたけど。」
「その通りです。魔法式の記述はこちらです。」
俺はノートに書いてみんなに提示した。
「こんな簡単な記述なで発動するのか?」
「はい。これを実行すると、自分の位置が赤く中央に表示され、少し時間をおいて壁や大型の設備が線で表示されます。視界に被って見えますので目を閉じれば線だけの世界に入れます。」
「これは、小さな物も表示できるのかい?」
「僕もそこまで使い込んでいないのですが、目的の場所に意識を集中していくと、どんどん拡大して表示されます。ペットボトルは認識できました。」
「まさか、それに対して魔法を発動するのか……。」
「だけど、その状態で、どうやって魔法を使うんだよ」
「音声起動でうまくいくか検証が必要なんですが、僕には視覚系照準システムがありますので、少なくとも魔法の発動は確認できています。」
「2カ月前にオブロンが発表したやつか……。」
「はい。簡易魔法プロセスを発表するにあたり、同時に公表せざるを得なかったやつです。」
「君の見解はここまでかい?」
「はい。可能ならミドルレンジで1km以内。ロングレンジの25km以内を皆さんで検証できればと考えています。」
「……ふう。まいったな。」
「確かに、参りましたわね。」
「白状するよ、僕は降参だ。」
「まあ、SLSから照準・魔法発動を連携できるかは先送りでいいとして、もしLSLっていうので25km先を攻撃できるとしたらこいつは人間兵器確定だぞ。」
「ふざけるなよ!こんなの認められるわけないだろ!」
「山岸君さあ、気持ちは理解できるけど、ジン君って魔法力もSSなんだよ。それも、両方とも最新鋭の測定器でも測定不能レベルなんだってさ。」
「「「えっ!」」」
「それに、今聞いた話じゃ、オブロンの最新鋭のナビ。しかもAI連動って、市販品レベルの高性能じゃなくて、多分オブロンの最高技術ってやつだよ。」
「くっ、俺にだって、三ツ星ってバックがついていますから、それくらいのナビは用意できますよ。」
「やめておけ。三ツ星がこんなところでリスクを冒すとは思えない。」
「俺は副社長の息子だ!こんな新人に負けるわけにはいかねえんだよ!」
そう言って山岸君は部屋を飛び出していった。
「やれやれ、人間的にはまだまだだったか……。」
「まあ、いいんじゃないの。反省すれば謝ってくるだろうし、こなくても問題ないでしょ。それよりもSRSっていうの起動してみたいんだけど。」
「それがいいな。」
6人でSRSを実行し、俺が校舎の入口においてきたペットボトルを認識してもらった。
ついでに、みんなに確認してもらいながら、敷地の外れにある池の水を凍らせてみせた。
これは、俺の知らない場所で、現地に行った片桐さんの誘導でMRSで確認しながら行った実験だ。
「さて、LRSだけど、片桐が言ったように、これを成功させるとジン君の秘密兵器化が確定する。だから、ここまでの事は特務科3年の高岡先生に報告したうえで実験に入りたい。」
「まあ、マジモンの秘密兵器だからな。」
「山岸には極秘事項だと念押ししておいたが、万一を考えて通信記録をチェックしてもらおうと思っている。」
「万一漏れても、相手が三ツ星なら防衛庁には逆らえないわね。」
「そういうこと。どっちにしても、情報漏洩には注意しないといけないね。」
翌日、俺は担任の御代先生に呼び出され、11人の担任会議に出席した。
6名のサークルメンバーも一緒で、榊さんが説明をした後で、SRSとMRSによる魔法の発動を実演させられた。
「くくくっ。入学してひと月も経たないというのに、じっとしてくれないんだねえ。」
「それ、僕に言われても困ります……。」
「まあ、軍事転用可能な案件ですから、また大臣から首相の超機密扱いですな。知っているのはこの7人だけ?」
「いえ、2年特務科の山岸君もメンバーです。ちょっと仲違いしていますが。」
「ああ、三ツ星のごり押しで入れてあげた子かい。うーん、早めに釘をさしておいた方が良さそうだね。下手をすると三ツ星消えちゃうからね。」
そのまま俺と御代先生を残して、全員で駆逐艦に乗って行ってしまった。
これからLRSの検証だ。
【あとがき】
ロングレンジで魔法が発動されたら……。
「どうしたんだいジン君。」
「今回、初参加でこれまでの取り組みはよくりかいしていないんですけど、僕なりに試してきたことがあるので、できれば皆さんの方向性とずれていないか確認したいのですがよろしいでしょうか?」
「だからさぁ。そういうスタンドプレーが嫌いなんだよ。」
「まあまあ山岸君。とりあえず話を聞いてみようじゃないか。評価はそのあとでいい。」
「まあ、榊さんがそういうなら……。」
「皆さんの邪魔をしてしまい申し訳ないです。手短に話します。」
「前置きは要らないぞ。」
「はい。ではいきます。まず、本人から壁を隔てて置かれたターゲット。これには今のところ魔法は発動していません。」
「今のところ?」
「はい。魔力の感じからすると、もう一息で流れていきそうな感覚はありました。でも、今のところはNGです。」
「あっ、その感覚、実験してて僕も感じたよ。」
「筑紫、それ本当か?」
「うん、感覚だから何とも言えないけどね。」
「じゃあ、そこをもう少し詳しくお話しします。自分の手で置いたものをカメラ越しに見た場合、対象の特定……僕は”ロック”と呼んでいますが、そこまでは作動したけど魔法は発動しなかった。
一方で、第三者にセットしてもらった場合は、同じカメラ越しでもまったく反応しませんでした。」
「ちょっと待てよ。お前のナビは、アクションごとの動作確認ができるっていうのか?」
「はい。AIが連動していますので、そういう解析も可能です。」
「信じられねえよ。科学屋として、そんなのどこも公表してないだろ。」
「すみません片桐さん。今回、皆さんが取り組んでたれるのは、結構重いテーマだと思います。ですから僕も手の内を明かしていますが、これオブロンの機密情報です。非公開でお願いします。」
「ああ、そういう事かよ。お前もマジでやる気なんだな。」
「ええ。必要ならオブロンに無償で協力させます。それくらいの貸しは作ってありますから。」
「くくくっ、オブロンを手駒で使うってのかよ。とんでもねえ新入生だな。」
「ジン君、オブロンに見返りは渡せないと思うけど、大丈夫なのかい。」
「はい。今回のテーマは先輩たちのもので、僕は単に検証を手伝うだけだと言ってあります。」
「ちょっと待ってよ。あのオブロンなのよ。」
「大丈夫ですよ。この取り組みは学校活動の一環です。オブロンも防衛庁と僕を敵に回す度胸はありませんよ。」
「話を戻そう。今の話が本当なら、ブラインドになっている場所でも、条件によって魔法の発動する可能性があるということだよね。」
「そうです。さらに、テレビ会議でも同じでした。」
「テレビ会議だとぉ!」
「テレビ会議で、第三者に用意してもらったペットボトルの水で試したところ、ロックまでは動作しました。」
「ちょっと待てよ。それって、視界に収まる範囲なのか?」
「直線距離で40kmくらいですね。」
「なに、夢みたいなこと言ってんだよ。誰も検証できねえからって、いい加減なこと言ってんじゃねえよ!」
「山岸君、落ち着き給え。」
「そう。そんなことで魔法が発動したら、戦争が根底から覆っちゃうよね。だからジン君は重いテーマだと言っている。」
「はあ、軽い気持ちでいたのは私たちってことよね。」
「じゃあ、次のステップに進みます。」
「まだ先があるっていうのかよ。」
「はい。SRS、ショートレンジサーチという魔法があります。」
「残念ながら俺は知らないが……。」
「僕は、聞いたことがある。多分4年でならうんじゃないかな。」
「高橋、どういう魔法なんだ?」
「条件なしの単独の魔法で、100m以内を探査する時に使うって聞いたけど。」
「その通りです。魔法式の記述はこちらです。」
俺はノートに書いてみんなに提示した。
「こんな簡単な記述なで発動するのか?」
「はい。これを実行すると、自分の位置が赤く中央に表示され、少し時間をおいて壁や大型の設備が線で表示されます。視界に被って見えますので目を閉じれば線だけの世界に入れます。」
「これは、小さな物も表示できるのかい?」
「僕もそこまで使い込んでいないのですが、目的の場所に意識を集中していくと、どんどん拡大して表示されます。ペットボトルは認識できました。」
「まさか、それに対して魔法を発動するのか……。」
「だけど、その状態で、どうやって魔法を使うんだよ」
「音声起動でうまくいくか検証が必要なんですが、僕には視覚系照準システムがありますので、少なくとも魔法の発動は確認できています。」
「2カ月前にオブロンが発表したやつか……。」
「はい。簡易魔法プロセスを発表するにあたり、同時に公表せざるを得なかったやつです。」
「君の見解はここまでかい?」
「はい。可能ならミドルレンジで1km以内。ロングレンジの25km以内を皆さんで検証できればと考えています。」
「……ふう。まいったな。」
「確かに、参りましたわね。」
「白状するよ、僕は降参だ。」
「まあ、SLSから照準・魔法発動を連携できるかは先送りでいいとして、もしLSLっていうので25km先を攻撃できるとしたらこいつは人間兵器確定だぞ。」
「ふざけるなよ!こんなの認められるわけないだろ!」
「山岸君さあ、気持ちは理解できるけど、ジン君って魔法力もSSなんだよ。それも、両方とも最新鋭の測定器でも測定不能レベルなんだってさ。」
「「「えっ!」」」
「それに、今聞いた話じゃ、オブロンの最新鋭のナビ。しかもAI連動って、市販品レベルの高性能じゃなくて、多分オブロンの最高技術ってやつだよ。」
「くっ、俺にだって、三ツ星ってバックがついていますから、それくらいのナビは用意できますよ。」
「やめておけ。三ツ星がこんなところでリスクを冒すとは思えない。」
「俺は副社長の息子だ!こんな新人に負けるわけにはいかねえんだよ!」
そう言って山岸君は部屋を飛び出していった。
「やれやれ、人間的にはまだまだだったか……。」
「まあ、いいんじゃないの。反省すれば謝ってくるだろうし、こなくても問題ないでしょ。それよりもSRSっていうの起動してみたいんだけど。」
「それがいいな。」
6人でSRSを実行し、俺が校舎の入口においてきたペットボトルを認識してもらった。
ついでに、みんなに確認してもらいながら、敷地の外れにある池の水を凍らせてみせた。
これは、俺の知らない場所で、現地に行った片桐さんの誘導でMRSで確認しながら行った実験だ。
「さて、LRSだけど、片桐が言ったように、これを成功させるとジン君の秘密兵器化が確定する。だから、ここまでの事は特務科3年の高岡先生に報告したうえで実験に入りたい。」
「まあ、マジモンの秘密兵器だからな。」
「山岸には極秘事項だと念押ししておいたが、万一を考えて通信記録をチェックしてもらおうと思っている。」
「万一漏れても、相手が三ツ星なら防衛庁には逆らえないわね。」
「そういうこと。どっちにしても、情報漏洩には注意しないといけないね。」
翌日、俺は担任の御代先生に呼び出され、11人の担任会議に出席した。
6名のサークルメンバーも一緒で、榊さんが説明をした後で、SRSとMRSによる魔法の発動を実演させられた。
「くくくっ。入学してひと月も経たないというのに、じっとしてくれないんだねえ。」
「それ、僕に言われても困ります……。」
「まあ、軍事転用可能な案件ですから、また大臣から首相の超機密扱いですな。知っているのはこの7人だけ?」
「いえ、2年特務科の山岸君もメンバーです。ちょっと仲違いしていますが。」
「ああ、三ツ星のごり押しで入れてあげた子かい。うーん、早めに釘をさしておいた方が良さそうだね。下手をすると三ツ星消えちゃうからね。」
そのまま俺と御代先生を残して、全員で駆逐艦に乗って行ってしまった。
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