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第一章

ボロボロのエリス

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 ゼータと二人のパーティーは、実質ソロになっている。
一人では厳しい依頼の時だけゼータを連れ出しているのだ。
そして、いつしか俺はSクラスの冒険者になっていた。
同時に俺は、魔道具の勉強も続けていた。

 これならいけるか……
俺が考えているのはエリスの義足だ。
冒険者にする必要はない。
日常で立ったり歩いたりできればいい。
木製では重いだろうから、現代に戻って軽量のプラスチックとシリコンでつくってやりたい。
そこに魔道具としてのノウハウをつぎ込めれば……

 そしてそのためには現代に戻る必要がある。
魔王を倒してだ。
俺は気合を入れなおして冒険者としての腕を磨き、魔道具のノウハウを学んだ。
パーティーを組む気にはなれなかった。
あくまでも、ソロで魔王を倒してやる。

 俺は自在に宙を飛び、魔導銃を駆使して魔物を屠っていった。
そして魔王復活の時を待つのだ。
だが、魔王復活よりも先にやってきたのはエリスだった。
とても義足とはいえない木の棒を両足にくくりつけ、2mほどの長い杖を頼りに歩いてきたのだ。

「助けて、おじさん……」

「どうしたエリス!」

「オネエが暴力を……」

「わかった、ともかく家に入れ」

 エリスの左頬は赤く腫れており着ているものもところどころ敗れている。
ゼータの治療魔法で応急処置をし、着替えさせる。
エリスの肌には殴られたようなあとが数か所あった。

 ともかく落ち着かせて状況を聞いた。

「私がいけないの、オネエを拒んだから……」

「どうして」

「まだ、自分の中で整理ができていなかったの。
こんな体になって、オネエの荷物になるような生き方は……
最初のころはオネエも分かってくれてたんだ。
ゆっくりでいいからって言ってくれた。
でも、10日目くらいから外出が増えて、お酒を飲むようになって……」

「そうか。まあ、ここでゆっくり過ごせばいいさ」

「でも、オネエが……」

「オネエが来ても追い返すさ」

「いいの?」

「ああ、心配するな」

 俺は、試作品の義足をエリスの足につけてやった。

「どうしてこんなものを……」

「ちゃんとした魔道具にしてから渡すつもりだったんだが、その木の棒じゃ不便だろ」

「うん、ありがとう……」

「泣くなよ。
それから、グラビティーベルトを改良した。
空を飛ぶ機能はないが、エリスの腰の位置で浮かぶようにしてある。
これを使えば、形だけでも歩けるだろう」

「おじさん!」

 エリスは俺に抱きついてきた。
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