DT卒業したら……

モモん

文字の大きさ
上 下
31 / 32
第三章

第31話 黒いローブの悪魔は私たちを待っていました

しおりを挟む
 シリズ王国北端の町タリは完全に破壊されていました。
 燃えているのは悪魔の炎です。

「ひどい。住民は皆殺し……。」
「兵士による略奪とかの様子もないし、破壊だけを目的とした感じね。」
「でも、こんなのって……。」
「とりあえず国を滅ぼすだけなら効果的よ。とすると、悪魔は次の町に向かったって事ね。」
「一人なんでしょうか……。」
「それは何とも言えないわね。一度戻るわよ。」
「どうしたんですか?」
「あなたはDCで待機よ。」
「何故ですか!」
「悪魔が複数いる場合、私ひとりじゃ守り切れない可能性もあるし、他のメンバーを連れていくのよ。」
「わ、私だって!」
「理解しなさい!足手まといなの。」
「……はい。」

 一旦DCに戻ってメンバーを集めます。

「全員で行かないの?」
「ここが安全だという保証もないし、他に悪魔が現れる可能性もあるわ。とりあえず10人で向かう。何かあったらアキを中心に対応して。」
「了解よ。注意してね。」

 ゲートを使ってセゼロイアの首都に行き、レイと合流してシリズ王国を目指します。
 2台の飛空艇に別れて乗車し、南西を目指します。

「東の町ガリがやられているわね。」
「交戦中みたいね。ここが交戦中ってって事は、王都は既に……。」
「でも、魔素を撃ってきてるのは2人くらいよ。」
「じゃあ、ここはレイたちに任せて王都へ行ってみましょう。」

 念話でガリの町の対応を向こうのチームに頼んで、私たちは王都を目指します。

 王都も交戦中でした。
 交戦というか、完全に蹂躙です。

「相手は4人。分散して戦おうと思うけど、大丈夫?」
「うん。戦闘時の共有はできてるから問題ないよ。」
「じゃあ、行きましょう。」

 全員が飛空艇から飛び出して、飛空艇は凍結庫に送ります。

 私は、一番派手に魔法を使っている城に向かいました。
 そこにいたのは、黒いローブを被った、ひときわ大きな魔法士。

「いい加減にしなさいよ。」
「ん?龍種か。久しいな。」
「魔界へ帰る気はないの?」
「せっかく楽しんでいるんだ。なぜ、帰らねばならんのだ。」
「そう、残念ね。」
「残念ではないぞ。やっと楽しめる相手が登場してくれたのだ。全員出てきていいぞ。」

 悪魔はそういうと左手を横に開いてローブの前を広げました。
 背筋がゾワッと寒くなります。
 悪魔の開いたローブから、無数の悪魔が這い出てきます。

 10、50,100……どんどん増えていきます。
 私の放つ魔力弾の多くは黒いローブの悪魔が放つ魔素で無効化されますが、それでも搔い潜った魔力弾が悪魔を消滅させていきます。

 黒い悪魔のローブから現れた赤いローブの悪魔は数千にも達したでしょうか。
 そして、それが黒い炎を放ってきました。

「くっ……。」

 対処が追いつかなくなり、一旦空に逃れます。

「どうした。楽しませてもらわんと、人間が死んでいくぞ。」

 赤い悪魔の放つ黒い炎は、町中を呑み込んでいきます。

 念話で他のメンバーの状況を確認すると、町全体に赤いローブの悪魔が増えていき、対処が間に合わなくなっているようです。
 私は全員を集め、同調をしていきます。
 そして魔力で自分たちの身体を覆い、それを広げていきます。

 その魔力に触れた悪魔たちは消滅していきますが、結構な量の悪魔が黒いローブの悪魔の元に逃げ帰り、ローブの内側に吸い込まれていきます。
 やがて、黒いローブの悪魔自身もローブに呑み込まれていきます。

 町の中は死体が溢れていましたが、8名だけ子供が生き残っていました。
 ガリの町を対応したチームと合流し、子供たちをDCに連れていきます。


「それで、悪魔は数万人規模でいるみたいなんだけど、あのローブから出てきたのは、実体じゃなさそうな気がするのよね。」
「どういうこと?」
「うーん、人間と合体する前のあくましゃないかしら。魔力に触れただけで、簡単に消滅してたから。」
「じゃあ、そいつらが人間と合体したら、手ごわくなるっていう事かしら。」
「それ、大変じゃない!」
「でも、何で合体してないの?」
「私たちと同じように、相性みたいなものがあるんじゃないかしらね。」
「うん。私もそう思う。」

「それで、どうするの?」
「やっぱり、アーリア国に乗り込むしかないかなって思う。」
「じゃ、全員で乗り込む?」
「あえ。半分にしておきましょ。アキは人選をお願い。レイはアーリアの首都にゲートを作ってよ。」
「お店は営業しているから、ゲートは開いているわ。いつでもいけるわよ。」
「そう。じゃあ8時間後にGOよ。」
「「「了解!」」」

 真夜中ならば、人間への影響も少ないでしょう。
 私も体力と魔力を回復させられます……、まあ、まったく問題ないんですけど。

「リズ様。私も連れて行ってください。」
「ダメよ。相手は悪魔なの。」
「空間の制御も練習しました。魔力を細かく撃ちだすのもできます。悪魔相手でも大丈夫です。」
「どうしたの?わざわざ危険なところに出ていく事はないでしょ。」
「人間は、龍の皆さんに守られるだけの存在なんでしょうか!」
「えっ?」
「正しく成長すれば、これだけの魔法を操る事もできるんだって分かりました。」
「……そうね。」
「悪魔だって、自分たちで退けられるようになりたいんです。」
「気持ちは分かるけど、もう少し成長してからでいいんじゃないの?」
「……成長するためにも、行かなくちゃいけないって気がするんです。」
「……わかったわ。そこまでいうのなら、連れて行ってあげる。でも、条件があるわ。」
「はい。」
「レイと一緒にいること。そして危なくなったらすぐに逃げること。」
「はい。」

 私はスーザンのために、赤いローブを用意しました。
 黒い悪魔のローブを見て思いついたのです。
 ローブの内側にゲートを作っておけば、戦いの最中にそれを使って逃げ出せるハズです。

 そして私たちは真夜中のアーリアに展開します。
 メンバーは城の周りを囲むように配置し、城の中へは私とスーザン、それとレイの3人で乗り込みます。

 門を守る兵士など、人間はマヒさせて倒します。
 感知により相手の位置は把握できています。

 ひときわ大きな反応が、あの黒いローブの悪魔でしょう。
 広間のような広い場所に悪魔はいました。
 黒いローブの悪魔と、赤いローブの悪魔3体です。

「よくきたな。龍の女よ。」
「待っていたの?」
「ああ。色々と聞きたいことがあってな。」
「あなたは魔王なの?」
「我らは王という呼び方はしないが、エドというこの男は確かに王だから、まあ、魔王で間違いはないかもしれんな。」
「この世界に何しに来たの?」
「魔界は消滅した。」
「えっ?」
「龍なら分かるだろう。我らの生まれた次元は崩壊してしまったのだ。」
「そう。それで?」
「5万の同胞は、一時的に俺の作った空間に退避した。だが、そこは一時的な空間でしかねいのだ。」
「だったら、そういう空間を作ればいいじゃない。」
「残念だが、我らに無から有を作り出す力はないのだ。」
「だからと言って、この世界は人間のものよ。」
「そこだ。龍よ、……なぜお前は、この世界が人間のものと言い切れるのだ。」

「簡単な話しよ。この世界は、人間を進化させるために作られた世界だからよ。」
「やはりそうなのか。お前がこの広大な世界を作ったのか?」
「私が作ったというのは正確じゃないわね。私は、この世界を作った存在の一部よ。」


【あとがき】
 世界創成。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。 女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。 そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。 冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。 ・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。 ・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。

転娘忍法帖

あきらつかさ
歴史・時代
時は江戸、四代将軍家綱の頃。 小国に仕える忍の息子・巽丸(たつみまる)はある時、侵入した曲者を追った先で、老忍者に謎の秘術を受ける。 どうにか生還したものの、目覚めた時には女の体になっていた。 国に渦巻く陰謀と、師となった忍に預けられた書を狙う者との戦いに翻弄される、ひとりの若忍者の運命は――――

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

処理中です...