DT卒業したら……

モモん

文字の大きさ
上 下
27 / 32
第三章

第27話 スーザンはろくろ3台と白磁用の土でドナドナされました

しおりを挟む
「ろくろの上で土を回転させると、ヘラをあてて反対側を押さえてやれば均一の厚さにできます。」
「へにゃ、また崩れてしまいましたぁ。」
「うむ、確かにこのろくろは便利だ。だが、そんなに薄くしてしまうと、焼いたときにヒビが入ってしまうぞ。」
「それは1300度まで温度を上げる事と、十分に温度を下げてから炉を開けばある程度防げますよ。」
「だが、炉の温度などどうやって。」
「焼き上げてから炉を開くまで、最低半日から1日おきます。」
「そ、そんなにか!」
「あとは、何度も試行して自分で適切なタイミングを掴んでください。」
「あ、ああ、わかった。……それで、このろくろだが……。」
「スーザンと交換で如何でしょうか。」
「で、出戻りだが、そんなのでいいのか?」
「お、お父さん!」
「クルリン3台と白磁用の土10kgでいいですか?」
「ああ、十分だ。」

「わ、私は買われてしまったんですね。」
「そうですね。私の命令に従ってもらいますから。」
「は……い……。」
「それで、出戻りというのは?」
「貴族に嫁いだのですが、1年経っても子供が出来なかったので……。」
「へえ、今時そんな事で離縁されるなんてね。」
「夫の浮気もあったんですけどね。そちらで子供ができたって……。」
「まあ、自由に過ごせるようになったんだからよかったじゃない。」
「今はそう思えます。」

 そのまま城に入って課長さんのところに向かいます。

「騒がしいようですが、何かあったんですか?」
「その、さっきの見回り組が戻ってこないと……。」
「そうですか。ところで、スーザンは今日限りで辞めますから、お願いしますね。」
「「えっ!」」
「今日までのお給料はこちらで用意しますから、退職の手続きをお願いします。」
「リ、リズ様!」
「命令よ。文句ないでしょ。」
「は、はい。」

 そこへ、軽装の兵士が5人やってきた。

「内務局のトーマスだな。」
「は、はい。」
「市中巡回の11名が消えた件で住民から通報があった。女2人を連れた3人組というのはお前たちで間違いないな。」
「は……い。」
「国家反逆の罪で拘束する。」
「えっ!」
「お待ちください。」
「何だお前は。」
「UNNA国議会議員モッティー・マッツの妻リズでございます。」
「なにっ!」
「このような形で私を拘束すれば、外交問題となりますよ。」
「くっ、おい外務局長を呼べ。他の者はこの二人を捕えるのだ!」
「あら、このスーザンは私の従者で、トーマス課長は商業的な交渉中なのですが、それを破談にするおつもりですね。」
「そ、それは、内務局長に……。」
「ああもう、面倒ですね。トーマス課長、臨時の議会を開いて全員招集してください。今すぐです。」
「し、しかし……。」
「ああ、外務局長が来たようですね。」
「なんじゃ、ワシを呼びつけおって。」

 見覚えのある外務局長はゼイゼイと息を切らしています。

「外務局長さん。私UNNAのモッティーの妻ですが、覚えておられますか?」
「うん?……誰じゃお前は。」
「あらイヤだ。アッシュ帝国との終戦調印式でお会いしたじゃありませんか。」
「ああ、そういえば……。それで、何の用じゃ。」
「今日、宰相の息子という方が失踪されました。」
「なにぃ、それは真実か?」
「はっ、イジン殿が市中巡回から戻っておりません。」
「これは、国の存続にかかわる重大な動きの一旦です。」
「どういう事だ。」
「ここでは申し上げられません。議会のメンバーを緊急招集してください。そこでご説明させていただきます。」
「いや、そう言われても……。」
「こうしている間にも、イジン小隊長の命は尽きてしまうかもしれません。万一の場合、局長にその責任がとれますか?」
「ともかく、宰相に報告する。どうするかは宰相に委ねる。」

 外務局長と兵士は、小走りに去っていった。

「り、臨時の議会など開いて、何をするつもりなんだ……。」
「この国の膿を一掃してあげます。」
「どうやって?」
「悪者は全員、島へ送ります。」
「全員なのか?」
「はい。一族全てに責任をとってもらいます。」

 その後、宰相の使いがやってきましたが、議会の席上以外では話さないと突っぱねたので、緊急で招集が行われたようです。

 内務局で待っていると、議会の準備ができたと使いがきました。
 
「議会のメンバー2名は領地駐在のため、緊急で招集できるのはこれで全部になる。10名だ。」
「ありがとうございます。では、始めさせていただきます。」

 200年前の議会は、貴族制度をとっていなかったので全員が普通の国民だったハズ。
 でも、ここに集まった10名は、国王をはじめとして着飾った王妃の貴族の議員。
 全員が一目で分かる姿をしています。
 スーザンは従者として同席しています。

「最初に自己紹介をさせていただきます。私の元の名はシャルロット・ジャルディ。信じられないかもしれませんが、初代議長オスカー・ジャルディの娘です。」

 会場がざわつくが、直接発言する人はいませんでした。

「父がタギリアから独立させたこの国ですが、父が退任した後で不思議な事がおこりました。」
「いったい何を言い出すんだね。早く息子イジンのことを話すんだ!」
「これは、この国の存続にかかわる重大な事なんです。黙って利いていてください。」
「ぐっ……、まあいい、先を話せ。」
「突然、父の姉とかいう人物が現れ、元々この国の王だったと主張し、それを副議長のドドンパという男が後ろ盾となりました。」
「な、何を言い出す気だ。」
「父は一人っ子であり、それは祖父にも確認しましたし、姉など存在するはずもないのです。」
「そんな戯言はいい!イジンはどこにいる!」
「元王族と騙った女はイバノールという一族の出身で、ドドンパの妾です。その息子というのもドドンパの息子。」
「衛兵!この者を捕えよ。世への侮辱である!」
「まあ、それでもまともな政治をしてくれるなら何も言わないつもりだったのですが、200年経っても相変わらずの貴族政治。これ以上は見ていられません。」

 その時、会議室のドアがバーンと乱暴に開けられました。
 兵士を引き連れて入ってきた金髪の男は、確か第二皇子のヨセフでしたか。

「会議中のところ申し訳ございません。不審者がいると通報がありましたのでまいりました。」
「ヨセフ、よいところに来た。その者を捕えよ!」
「はっ!」

 ガチャガチャと音を立てて近づいてくる皇子は、趣味の悪い金色の鎧を身にまとっています。

「リズ様、私が!」
「いいのよスーザン。この人を見下した態度が、ニセモノ王族の正体よ。」
「はい。」
「ゴミムシらしく、這いつくばりなさい。」

 近づいてくる皇子と兵士に対して、5倍の重力をかけると、ガチャガチャと崩れていきます。
 
「続けましょう。そういうわけで、ニセモノの王族と国を欺いたドドンパの一族は追放いたします。」
「なにぃ!」
「該当する方は眠ってください。」

 国王と王妃、宰相と財務局長が眠りにつきます。

「スーザン、余計なものを持って行かないように脱がせて。」
「はい。王妃は?」
「下着姿でいいわよ。」

 ゲートを開いて、私も兵士たちの鎧を剥いでいきます。

「クーデター成功よ。課長さん入ってきて手伝ってください。」

 ドアの外で待機していた課長さんにも手伝ってもらいます。
 まあ、成り行き任せですが、ジャルディア王国を制圧しました。


【あとがき】
 ジャルディア開放。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

異世界で黒猫君とマッタリ行きたい

こみあ
ファンタジー
始発電車で運命の恋が始まるかと思ったら、なぜか異世界に飛ばされました。 世界は甘くないし、状況は行き詰ってるし。自分自身も結構酷いことになってるんですけど。 それでも人生、生きてさえいればなんとかなる、らしい。 マッタリ行きたいのに行けない私と黒猫君の、ほぼ底辺からの異世界サバイバル・ライフ。 注)途中から黒猫君視点が増えます。 ----- 不定期更新中。 登場人物等はフッターから行けるブログページに収まっています。 100話程度、きりのいい場所ごとに「*」で始まるまとめ話を追加しました。 それではどうぞよろしくお願いいたします。

田舎の雑貨店~姪っ子とのスローライフ~

なつめ猫
ファンタジー
唯一の血縁者である姪っ子を引き取った月山(つきやま) 五郎(ごろう) 41歳は、住む場所を求めて空き家となっていた田舎の実家に引っ越すことになる。 そこで生活の糧を得るために父親が経営していた雑貨店を再開することになるが、その店はバックヤード側から店を開けると異世界に繋がるという謎多き店舗であった。 少ない資金で仕入れた日本製品を、異世界で販売して得た金貨・銀貨・銅貨を売り資金を増やして設備を購入し雑貨店を成長させていくために奮闘する。 この物語は、日本製品を異世界の冒険者に販売し、引き取った姪っ子と田舎で暮らすほのぼのスローライフである。 小説家になろう 日間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 週間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 月間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 四半期ジャンル別  1位獲得! 小説家になろう 年間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 総合日間 6位獲得! 小説家になろう 総合週間 7位獲得!

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。 女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。 そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。 冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。 ・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。 ・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。

転娘忍法帖

あきらつかさ
歴史・時代
時は江戸、四代将軍家綱の頃。 小国に仕える忍の息子・巽丸(たつみまる)はある時、侵入した曲者を追った先で、老忍者に謎の秘術を受ける。 どうにか生還したものの、目覚めた時には女の体になっていた。 国に渦巻く陰謀と、師となった忍に預けられた書を狙う者との戦いに翻弄される、ひとりの若忍者の運命は――――

処理中です...