神なのか?

モモん

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第一章

第12話 ローズマリーの妄想

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 私、ローズマリーは少々怒りモードに入っています。

 帰りたければ帰っていい……何ですかあの言葉!
 イヌやネコだって、1年も飼っていたらもう家族の一員ですよ。
 それを……それなのに、あんな無慈悲な言葉をいえるなんて、鬼としか思えません!

 飼っていたイヌやネコを放りだしたらどうなりますか?
 野良ですよ。
 あの言葉を聞いた瞬間、私の頭に先日見てしまった光景が浮かびました。
 それは、店先から魚の干物を咥えて逃げていく黒ネコです。

 あの黒ネコがミケちゃんに見えてしまって、思わず泣きそうになってしまいました。
 
 私とお嬢様にも、帰る家などありません。
 ご主人様はお優しい方ですから、私たちはお給料を頂いています。
 ほとんど使わないので、皆金貨30枚くらい持っているハズです。
 ですから、もしリズ様と二人で追い出されたら、家でも借りて二人で生きていく事になるのでしょう。
 そうしたら、仕事もしなくてはいけませんから……そうですね、二人で食堂を開くのもいいかもしれませんね。

 私が厨房に入って、お嬢様にはウエイトレスをお願いしましょう。
 メイド服姿の食堂……、これは行けそうな気がします。
 マジックバッグがあれば作り置きもできますし、食材の買い物も楽で楽しそうです。
 食材が保存できますから、旬の季節に1年分買い込んで、いつでも同じ質のお料理を提供できるじゃありませんか。

 でも、もしマジックバッグをとりあげられてしまったら……どうしましょう。
 いえ、お優しいご主人様ですから、二人でお願いすればそれくらいの我が儘は聞いてくれると思います。
 できれば、ライトの魔道具と、水道の魔道具と、冷蔵庫も欲しいですわね。
 そうそう、コンロは絶対に欲しいです。3口あれば十分です。

 ああ、どうしましょう。
 何だか考えるとワクワクしてきますね。
 そうしたら、ミケちゃんとポチちゃんにも働いてもらいましょう。
 それなら、厨房は私とお嬢様で担当して、フロアは二人に任せられますわ。

 先日ご紹介いただいた商業ギルドの課長さんにお願いして、タマゴや果実もまわしていただきましょう。
 それならデザートも提供できるし、店の一部でクッキーやプリンも売り出しましょう。
 そうすると、パン焼き器と……石焼き芋器も欲しいですわね。

 ……そうですわ。
 こんな魔道具なしでは耐えられない体になってしまった私たち4人。
 その責任をとっていただかなければ……
 お待ちください。大変な事に気付いてしまいました。
 お風呂が無いではありませんか!
 お風呂付の家なんて、それこそ王族の住む城にあるかどうか……

 ダメですわ。
 やっぱり、この家を出るなんてできる訳がありません。
 ジューサーミキサーにドライヤー。掃除機、空調機、身体強化と結界の腕輪……、ああ、本当に魔道具に頼り切っておりますのね。
 ……まさか、これは麻薬に近いのではないでしょうか!
 一度知ってしまったら、引き返すことのできない悪魔の道……

 もしかして、ご主人様は神様ではなくアクマ……

 どうしたら良いのでしょうか。
 私は寿命が尽きるまでお仕えするとして、いずれ嫁に行くであろう子供たちは、他所で暮らしていけるのでしょうか……
 ポチとミケは、冒険者として屋外の活動が多いので大丈夫かもしれません。
 でも……お嬢様はどうなるのでしょうか……
 多分、私と同じくらい毒されてしまっています。

 魔道具だけじゃありません。
 アルミという金属を使った軽い鍋、セラミックという素材で作られた切れ味の良い包丁。
 シャンプーにリンス・ボディーソープ。
 肌触りの良い、シルクのパジャマに胸を盛り上げる下着。

 そういえば、このブラという下着も、サイズがピッタリでした。
 採寸もしていないのに、何故私の胸の大きさまでわかるのでしょうか……
 裸をご覧になったのは、最初の日一度だけのハズです。
 まさか、私の寝ている間に……

 ……それならば、言っていただければいくらでも……
 あっ、また胸がドキドキして……

 そういえば、以前メイド仲間から男性の性癖について聞かされたことがあります。
 ”むっつりスケベ”とか”熟女好き”……これは違いますわね……多分。
 そうそう”胸フェチ”、異様なほど胸に焦がれるとか。
 胸フェチとむっつりスケベの複合と考えれば、ご主人様の行動に説明がつく気がします。

 おっぱいが好きなのに、それを表面に出せなくて苦しんでおられるなら、私が何とかして差し上げなければいけませんわ。
 
 そうとなれば、メイド服の改造からですわ。
 エプロンは腰で結ぶハーフタイプにして、襟元をブラウスのようなボタン式にすればご主人様のおられる時だけ少し広めに開けられます。
 これで、意識的に前かがみになれば、胸元はバッチリですわね。

 あとは……、そう私からもっと積極的に……あっ、またドキドキが……

 そうそう、お嬢様の事でした。
 例えば、買い物に出て町の男性と恋に堕ちるとします。
 やがて彼の家に招かれて、こことの違いに驚いて……あらっ?そういえば、ご主人様を基準とした場合、魅力を感じられる男性など存在するのでしょうか?
 貴族ではないようですが、貴族に匹敵する財産と、おそらく世界最高の魔法師という名声。
 例えば、貴族の屋敷には数十人のメイドがいますが、ここでは私と子供たちでお世話できるだけの魔道具が揃っており、これ以上の人間が必要ないというだけの事。

 商業ギルドや都庁の方の態度を見ても、重要視されているのが分かります。
 帝都の公共罷業でも要職につかれたようですし、それはご主人様の社会的な地位の現れ。
 地位・財産・名声・容姿、そして比較するもののない先進的かつ圧倒的な魔道具の開発。
 これに加えて、完璧な庇護者でもあります。
 軍隊も退け、国家権力にも屈しない強靭な姿勢と実力……

 ご主人様に足りないものがあるとしたら、”野心”でしょうか。
 お金にもそれほど興味を示さないし、人の上に立つ事も望まない。
 名声も望んでない……というか、必要以上に目立つのはお嫌いなようです。

 世の中にはもっとギラギラした男性を好む女性もいるでしょうが、お嬢様は穏やかな暮らしを望まれると思います。
 そうすると……

 お待ちください!
 大変な事に気が付いてしまいました。
 お嬢様は12才でご主人様は16才。
 その差は4才です。
 今は、確かにご主人さまから見て、明らかに幼いお嬢様ですが、4年後には16才と20才ではありませんか!

 迂闊でした。
 パパとか言っている場合ではありません。
 町で恋に堕ちてとか、まったく必要ありません。
 それなら、お嬢様がこの家を出る必要もなく、私も正当な理由でここにいられるじゃありませんか。
 何でしたら、ポチとミケも娶ってしまえばいいのです。

 そうですわ。
 その日が来るまでは、私がこの身を捧げて、悪い虫がつかないようにすればいい。


【あとがき】
 このままだと、マリーさんが変態勘違いメイドに……
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