神なのか?

モモん

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第一章

第10話 蒸気機関を使った陸上輸送

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 彼はドノバン課長との連絡方法について打ち合わせをして家に帰った。

 一度帰った後で帝都へ瞬間移動し、現在の計画と進行状況を調べたところ、そこまで具体的な計画には至っていないことが判明した。
 駆動車についてはモノレールのようなものをイメージしていると分かったのだ。
 今回の構想は、1本のレールを跨ぐような方式を想定しているようだが、これだと安定感に欠けるし高速走行も難しい。

 彼は能力を使ってそのプロジェクトの担当者に接近し、話しをする機会を作った。

「そうですね。現時点では陸上を走らせる蒸気機関の開発という位置づけなので、計画策定のための長さ期間中だと解釈してください。」

「ですが、その高い位置を走らせる方式だと、安定感に欠けるし、燃料や水の捕球が大変ですよ。」

 俺は担当のブロス技師に絵を交えながら鉄道の構想を説明した。

「凄いですね。ここまで具体的に構造を説明できるというのは、見たことがあるとしか思えないんですけど……」

「そうですね。理由は明かせませんが、鉄道もモノレールという単独の路線も実際に運用されているところを見ました。そのうえで、鉄道方式の方が安定した速度を出せるし長期的な運用が可能だと判断しています。」

「それで、一番悩んでいるのは山間部なんですよ。急な傾斜を超えられるかどうかなんですが……」

「多少の勾配ならば、このように必要な区間だけ駆動車を2台連結させる事で対応していました。山間部は山の中腹に穴を掘って線路を敷設しますが、工事が大変なうえに崩落の危険性を伴いますから最低限にした方がいいですね。」

 蒸気機関車の2台編成で客車を引っ張る姿を見たことがあると説明したうえで、最適なルートを地図で提案する。

「こういうコースにすれば、川越えの3か所に橋を作ればいいだけで、トンネルも必要ありません。」

「なるほど。このルートなら山越えが必要ないという事ですね。それで、どれくらいの速度が可能なんですか?」

「技術が進めば時速200km以上も可能ですけど、現在の水準でも時速50kmは可能ですね。」

「南都まで450km程。馬車で15日くらいかかっていた距離を、10時間ほどで移動できる……。分かりました。ここまで具体的な構想があれば、まとめて企画書を作ってみますよ。」

 彼は週に1度顔を出す事を約束してブロス技師と別れた。
 そして翌日、公共事業課のドノバン課長を訪問して状況を説明する。

「帝都への移動方法は聞かないでください。帝都側の担当者であるブロス技師という人から情報を貰ってきました。」

「失礼ながら、ロビーさんの事は商業ギルド等を通じて、色々調べさせていただきました。」

「何か分かりました?」

「毎日のようにタマゴを産むニワトリも驚きですけど、鳥小屋につけられた燃料のいらない明るいランプやマジックバッグ。そこの金属製のドームや柵に使われている錆びない鉄。門に触ることもできない防護壁も確認しています。家の中は想像もできませんね。」

「あははっ。まあ、公開してもいいんですけど、家の者は護りたいのでご理解ください。」

「大丈夫です。我々の理解できない方だという事は分かりましたので。」

「それで、帝都側はまだ具体的な事は決まっていないという事でしたので、少しアドバイスさせてもらって、先日話した東から北上していく既存の道沿いの経路を提案しておきました。」

「となると、ロビーさんの家は障害にならないという事ですね。」

「ええ、これから企画書を作って上申するので、まあ承認されるまで早くて2カ月。原案通り承認されれば、帝都から100km単位で線路を作って運営するでしょうから、1スパンあたり2年として全面開通まで最短で8年くらいかかるでしょうね。」

「まあ、お話を聞く限り、それくらいはかかるでしょうね。」

「それで、100km毎に停車駅を作りますから、今のうちにその停車駅の候補地を想定して、土地を確保しておくと有利に運べますよ。」

「その、停車駅の周辺が小さな町になるという事ですね。」

 俺は地図を出して説明した。
 
「この付近は平地で川の支流もあるので、農業が適しているでしょうね。」

「なるほど。町を作って、将来的には物流も便利になるから、8年後を見据えた産業を育てるという事ですか。」

「帝都側の2駅は帝都で開発してもらい、南都で2駅を開発する。その頃にはニワトリも増えているでしょうから、タマゴを産業の目玉にしてもいいと思いますよ。」

「そうか!その頃には、半分を帝都に出荷できる。」

「もし、本気で事業化してくれるなら、新しい作物も提供しますよ。」

「えっ?」

「主食にできる穀物が2種類。ほかにも芋・野菜・果実。色々と提供できますからね。」

 ドノバン課長が穀物等に興味を示したので、種籾とトウモロコシ、サツマイモにキャベツ・サトウキビ等の種や種芋が麻袋で渡された。
 勿論、担当者を呼んで育成方法の伝授も行われる。

 数日後、担当者数名と課長、商業ギルドからも担当者を家に招いて、マリーの調理した料理で試食会が開かれた。

 釜で1升の米を炊き、それでおにぎりが作られる。
 具材は鮭のような魚を塩焼きにして身をほぐしたものが使われた。
 海苔の代わりに似たような海藻を細かく切って板状にし、干したものを炙って使われている。

 おにぎり、茹でたトウモロコシ、蒸かしたサツマイモ、キャベツとトマトにマヨネーズで、スープに味噌汁が用意された。
 マリーが素材と加工後の状態を説明している。

「このスープはまだ素材の関係で提供できませんが、トウモロコシやサツマイモは育てて収穫するだけですから、すぐに事業化できると思います。」

「このような穀物や野菜は初めて見ました。半年後の収穫が楽しみです。」

「サツマイモの自然な甘味がいいですね。砂糖を使わないでこれだけの甘味があるというのは驚きですよ。」

「じゃあ、これもお出ししましょう。サツマイモをさっと洗って、小石の中で焼いたものです。」

「何でそのような調理方法を?」

「この芋は、70度くらいの低音で時間をかけて焼くと、より甘くなるんですよ。この焼いた石から出る熱がちょうどいいみたいですね。」

「……!これは……」

「一晩欠けてじっくり焼きましたから、ホクホクで美味しいでしょ。」

「た、確かに蒸かしたものより甘味が増しています!」

「この、少し焦げたところが旨い。」

 こうして試食会は無事終わった。
 そして、子供たちからの要望で、石焼き芋専用魔道具が誕生した。
 洗った芋を、小石の中に埋めるだけなので余計な手間もかからない。

 子供たちには甘味も必要なんだと感じた彼は、城壁外のエリアを拡大して果樹園を作った。
 みかん、梨、モモ、パパイヤ・バナナ等を植えられていく。
 当然、実の付いた状態だ。
 リンゴやブドウ類はこの世界にも存在する。

 だが、これも商業ギルドが目をつけて、事業化すると言って持ってく。

 そんあある日の事。騒ぎが起こる。

「ご主人様、門の外に兵士が30人程集まっています。」

「兵士が?まあ、大丈夫ですよ。」

「でも、大砲や小銃を持っていますが……」

「交戦前提って事か。それなら相手をしてやらないと失礼だな。」

 彼はマリーを伴って門まで出向き兵士たちと相対した。
 結界越しでも話しはできる。

「何かご用ですか?」

 かれがそう声をかけると、見覚えのある男が前に出た。

「クックッ、兵士に恐れをなしたか。」

「お前、見た覚えがあるな。」

「新規事業プロジェクト主任のオルドーだ。先日の回答を聞きに来た。」


【あとがき】
役所側の強制執行が始まる
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