神なのか?

モモん

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第一章

第6話 タマゴ料理が食べたいのならニワトリを作ればいい

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朝食はホットミルクと昨日余分に買ってきたチジミだ。
 まだ、十分に暖かく柔らかい。
 食事後には、家の設備を一通り説明し、その日から4人で協力して生活するように頼んだ。

「慣れるまで大変かもしれないけど、よろしくお願いします。」

「それで……、ここはいったい何でしょうか?」

「俺の家だけど。」

「いえ、あまりにも知らない設備ばかりで、これが普通のドルト帝国の家なのでしょうか?」

「いや、俺が特殊な魔法を使えるだけで、普通はこんな色々な道具はないですよ。」

「例えば水の出る道具。魔法とおっしゃいましたが、ご主人様でなくても使えますよね?」

「ああ、実は水晶は魔力を溜める事ができるんですよ。それを魔法陣というものと連動させる事で、誰でも魔法を発動させられるんですよ。」

「昨日使ったシャンプーとかボディーソープは?」

「ああ、俺だけの魔法で作りました。」

「ミソとかショウユという調味料は?」

「えっと、魔法ですね。」

「このマジックバッグは?」

「魔法だよね。」

「魔法小銃も?」

「水晶と魔法陣の組み合わせで作りました。」

「家を囲む結界は?」

「水晶と魔法陣だよ。」

「……承知いたしました。」 

「へえ、受け入れてくれるんだ。」

「大丈夫です。現実的に存在するものは受け入れますから。」

 子供3人はよく分かっていないようだが、文明的とは言えない獣人族の子供二人と公爵家のご令嬢だ。
 少しづつ覚えてもらえばいいだろう。

 その日は城壁の外側を広範囲で切り拓いてステンレスの柵で覆い、建物に近い場所にステンレス製のドームが作られた。
 そこと建物の屋上とを城壁の上を超える形の連絡通路で結び、直接町の外に出られるようになる。
 ドーム内は、魔道具で少し室温を下げ、ジャガイモが植えられる。
 というか、成長中のジャガイモ畑が出現した。 
 この世界に存在しない食材として、どうしてもジャガイモが食べたかったようだ。

 ジャガイモがあるだけで、ポテチとかジャガバタとか食の世界が広がるのは間違いない。

 そして、ニワトリのメスを30羽とオスを2羽が創造された。
 城壁外にも柵に沿って結界が施されているため、外敵に襲われる心配はない。
 自然環境下でも、年に数十個のタマゴを産むため、半分を繁殖用として放し飼いにし、半分を産卵用にして小屋の中で集中飼育する。
 小屋の中は日照時間と室温を均一に保っつ事で、年間300個程度の無精卵を産み続けてくれるのだ。

 この世界にもヤケイと呼ばれる近縁種が存在するが、この多くは食肉用と防寒用の羽毛採取を目的としており、採卵目的の品種改良は行われてこなかった。
 そして食肉目的のヤケイは、肉の柔らかい45日程度で食用に処分されてしまい、ヤケイのタマゴ自体が市場に出回る事はなかった。
 そもそもが、アヒルのタマゴの方が栄養価が高く濃厚な味であるため、ヤケイのタマゴが注目されなかったのだろう。
 そのタマゴの回収は子供たちの仕事になった。

 家事に関してマリーは優秀だった。
 料理・洗濯・掃除全てをそつなくこなし、醤油や味噌、うま味調味料を使った料理の特徴もすぐに把握してアレンジできる。
 手の空いた時間は、子供たちに文字や計算を教えながら、子供たちにできる仕事を割り振っていた。
 そして、パンを焼く釜が欲しいと彼にねだり、魔道具で250度以上に加熱できるオーブンを作ってもらった。
 耐熱ガラスで焼けている状況も確認できるのが便利だった。 
 だが、これはどうなのか。もしかして、おねだり……

「こんなものまで作っていただけるなんて、本当にありがとうございます」

 上目遣いで礼を言うマリー。

「美味しいものが食べられるなら、何でも作りますよ。」

「パン作りは、遊びの要素がいっぱいですから、子供たちも楽しんでくれるはずですわ。」

 マリーにはマジックバッグと一緒に相応の金貨と身体強化の腕輪型魔道具も渡されているが、本心は彼と一緒に買い物にいきたいマリーである。
 神体強化発動と同時に結界も展開できる優れモノで、外出時には必ず作動させるように言われているがあまり使っていない。

「あっ、そういえば洗濯機と乾燥機もあった方がいいですね。」

「洗濯機?」

 彼は魔力で動く洗濯機と乾燥機を創造して設置した。
 給水器も付随しているので、洗濯・すすぎから脱水まで自動でやってくれる。
 そして当然、粉石鹸と柔軟剤だ。
 
 まあ、屋上にも物干し場があるので、乾燥機は使わなくてもいい。

 そして彼は冒険者の活動に戻った。

 CランクからBランクに昇格するには、オーガや地竜系のモンスターを100匹ほど討伐する必要がある。
 依頼の数も少ないため、みんな早朝から依頼掲示板をチェックしているのだ。

 そんな中でお薦めは、キングオーロックスという最大3mという野生牛の捕獲だ。
 彼は城外の柵を拡張して、そこに瞬間移動でオーロックスを送り込む。
 管理者権限で情報を書き替えるのではなく魔法を創造してしまった。
 それも、対象を視界に捕らえれば発動できる仕様だ。
 毎日依頼を受注しては、1頭ずつ眠らせて荷車で運ぶという作業を繰り返した。

 この依頼元は商業ギルドになっていて、5日も続いたら流石に状況を聞かる。
 当然だが彼の窓口はドノバン課長と受付嬢のサリナである。

「もしかして、キングオーロックスをどこかで飼ってたりしませんよね?」

「い、イヤだな。そんな事してないですよ。」

「こちらとしては、まとめて納品していただく方が楽なんですけどね。」

「あっ、まとめて持ち込んでも大丈夫なんですか?」

「ええ。何でしたら使役スキルをもった者を何人か手配して、歩いて連れていく事も可能なんですよね。」

 どうやら、イヌ等と連携してオーロックスをゾロゾロと移動させる方法が存在するらしい。
 彼はその提案にのった。

 そして、そのキングオーロックス放牧の場所に来たギルド職員が、隣の柵の中で走り回るニワトリを見てしまった。

「あれはヤケイですよね。食肉用ですか?」

「ヤケイから派生したニワトリという種類です。」

「ヤケイは飛ばないですけど、食肉用ならギルドでも扱っていますが、味がいいんですか?」

「……うちのはタマゴを採ってるんです。毎日のように産んでくれますからね。」

「毎日って……確かに年に数十個は産むって聞いたことがありますけど。アヒルのタマゴの方が美味しくて人気じゃないですか。」

「ヤケイのタマゴなんて人気がないから市場に出ないんですよね……」

「そういえば、タマゴ料理って……ボイルドエッグと、あれっ?他には……見たことがないかな。」

「スクランブルエッグくらいですね。それでも愛好家が多いので、アヒルの玉子は人気ありますよ。」

「ニワトリだったら、年に300個くらいタマゴを産みますからね。うちでは、色々な方法で食べてますよ。」

「300個……そんなに産むんですか!それだと、1年中食べられるじゃないですか!」

「そうですね。だから、クッキーの生地にいれたり、マヨ……ソースにしたりプリンを作ったりしてますよ。」

「今は数を増やすために半分は抱卵させてますけど、半分はメスだけで飼って無精卵を産ませてますよ。」

「えっ!メスだけでタマゴを産むんですか!」

 この世界では、無精卵でも食べられるという情報が知られておらず、孵化しない玉子は単に廃棄されているのだ。
 だが、それはいくつか産んだ中のひとつであってメスだけで産んだ訳ではない。

「お願いです。どうやってタマゴを食べているのか教えてくれませんか。」

 仕方なく、翌日簡単なタマゴパーティーが開催される事になった。


【あとがき】
 元々のニワトリは8000年くらい前から家禽化されていたようです。
 当初の目的は、観賞用・食肉用・採卵用・時告用・羽利用など多岐にわたっており、やがて品種改良が進んで食肉用と採卵用に適した品種が産まれます。
 採卵に特化した時期も世界で様々な状況が知られていますね。
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