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第7章 地獄の魔王決定戦編

地獄の90丁目 地獄の魔王決定戦・前編

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 しばしの休憩を経て、大会運営からアナウンスが流れた。

『本選はトーナメント方式を予定しており魔したが、我が主が、戦えない奴がいるのは寂しいと駄々をこね始めたので本選もバトルロイヤル形式にさせていただき魔す。後、30分程で始めますので予選突破された選手は闘技場へお集まりください』

 これは正直予想外だった。こちらの戦力が全員残ったのでトーナメント方式だと潰し合う可能性が高かったのだが、バトルロイヤル形式だと共闘が出来るのだ。

 もちろん、魔王を決める体の闘いなので、あからさまに協力してしまっては観客が納得しないだろうし、手段は限られるだろうが。とはいえ、俺達は互いに闘う必要が無いだけで非常に有利だと言える。

 参加者で予選を勝ち抜いたのは九人。Aブロックの覆面選手。この人は直接見てないが、凄腕のようなので注意が必要だ。Bブロックは妖子さん。ここはデボラとの関係性で問題は無いだろう。Cブロックはデボラ。Dブロックの人は予選突破でせいぜいの名も知らぬ人。E、Fは退場。Gは俺……で、Hはムキムキのレンキ、Iはドラメレクに……、J、Kブロックはお空の彼方。Lブロックはキャラウェイさん。以降はOブロックのモリエルとか言うエルフ以外欠場……だな。

 九人中四人は協力的なメンバーか。なんか行けそうな気がする。事前に妖子さんに接触できればなお良いが……。

「デボラさぁまぁ~~~~~!」

 俺の思考が読まれたのかというタイミングで妖子さんが現れ、俺の事は見えないかの如くデボラに突撃していった。

「お、おお。妖子か。まさか魔王を目指していたとは意外だったぞ」
「いーえ! そんな大それたものは! ただデボラ様の為! ただデボラ様の為!」
「そうなのか、そうすると我としては協力を申し出たいのだが」
「協力だなんて水臭い! 私はデボラ様の理想を共に目指すものですから!」
「そうか、では一緒に戦ってくれるか!」
「もちろんですとも!! あのドラメレクを焼却するお手伝い、私にもさせて下さい!」

 なんか、とんとん拍子に話が進んだ。デボラの人望という事にしておこう。後の選手はみんな魔王をガチで狙いに来るのだろうか。心情が測れない以上、うかつに接触しても危険だな。とりあえず現状のメンバーで最善を尽くそう。

『皆様、大変長らくお待たせいたし魔した。第1回 魔王の座争奪、なんでもバトルオリンピア ~あつまれ! 暴力の檻~ 本選にして決勝戦、只今より開始したいと思い魔す。選手は入場をお願いいたします』

「いよいよですね、キーチロー君。周りの選手は私とデボラさんに任せて、あなたはドラメレクを抑えてください。あなたならやれます!」
「ああ、任せたぞ! キーチロー」
「……やってみます!」

 我ながら締まらないセリフだと思うが、仕方ない。こっちは魔法も戦闘も知識だけある素人なのだから。全力を尽くすしかない。

『さあ、お集まりいただき魔した皆様、これより真の地獄の魔王が決定いたし魔す。どうかその目で我が主の雄姿をご観覧ください!』

 会場からはブーイングが漏れ始めている。魔王としては全く期待されていない様だ。

『それではヘルズファイト……レディ……ゴー!!!』

 開始の合図とともにドラメレクを注視していたが、意外なことに彼の矛先はキャラウェイさんに向かっていった。

「バランさん! いや、バラン!! ちょっと遊んでください!!」
「おや、意外なようなそうでもないような」

 いきなり殴りかかってきたドラメレクをどうにか捌くキャラウェイさん。デボラ、デボラは!? 辺りを見回すと、デボラは覆面選手と対峙していた。妖子さんも一緒だ。そうなると俺の仕事は他の選手の排除、後に加勢だ!

 まずはDブロックの代表選手に狙いを定め、闘うことにした。赤い顔に立派な二本の角、黒い蝙蝠のような羽根。手に持っているのは三叉の槍か? 見た目は俺達のよく知る悪魔そのものだ。予選で見た時は苦戦していた様だが果たして……。

「あなた! 闘う意思はありますか!?」
「無ければ棄権している! かかってこい!」
「こっちはあんまりないです!」

 俺はムシ網を取り出すと、名も知らぬ悪魔に飛び掛かった。だが初撃は槍で受け止められてしまう。槍対ムシ網。傍から見ればひどく滑稽な戦いだ。

「その武器、見ていたぞ! そんなものにつかまってたまるか!」
「すいません、まだ見せていない機能が」

 俺に繰り出される槍術を回避し、受け止めしながら隙を伺う。まあ、隙なんて別に要らないんだが。

「ムシ網の巨大化です!」

 そう言うと俺はムシ網の範囲を巨大化し、名も知らぬ悪魔をムシカゴへ送った。

「まず一人!!」

 続いて周囲の様子を探ると、事態はさらに混迷していた。

 ドラメレクはキャラウェイさんを狙っていたが、捌き切られたようだ。今はダークエルフのモリエルと鬼人のレンキに狙われていて、三対一の状況になりつつある。遠距離、近距離のコンビとキャラウェイさんの魔法を駆使した中距離攻撃に苦戦している様だ。レンキの金棒攻撃をどうにか躱すと、そこへ正確に矢が飛んでくる。そこをキャラウェイさんが距離によって肉弾戦や魔法を叩きこんでいる様だ。

 ドラメレクは案外イケる状況なんじゃないか? とすると、デボラの加勢!
またしてもキョロキョロと辺りを探ると覆面選手とデボラは向かい合ったまま動いていない。よく見るとデボラは妖子さんを羽交い絞めにしている様だ。何か話しているのか? ともかく近くに!

「デボラ! こっちはどんな感じ!?」
「キーチロー、動くなよ。手を出すなよ。絶対にだ! 良いな!」
「え?」

 俺が素っ頓狂な声を上げている隙に、覆面選手からデボラの顔面へパンチが繰り出される。正直、デボラなら余裕で躱せるスピードだと思ったが、デボラはまともに喰らう。

「お、お前ぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!! デボラ様のお顔にぃぃぃっ!!」
「なんで避けなかった!?」
「よい、手を出すな」
「良い心がけですが、あなたの罪はそんなことでは償えませんよぉ?」

 この声、女か?

「キーチロー。非常にまずいことになった。アルカディア・ボックスの事は頼む。それと、妖子はムシカゴに保護してくれ」
「何を……!?」
「アルカディア・ボックスぅ……? 名前があるんですか、

 どういうことだ? この選手は箱庭の事を知っているのか?

「ともかく今は手を出すな。話がややこしくなる」
「けど、デボラの顔に……」
「頼む。我はこれでお別れになるかもしれん」

 もうこれ以上にややこしい話は俺にとって無いんだが!!??
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